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関電金品受領問題がコンプライアンス上、最低・最悪である理由 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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 関電については、2014年1月に、公正取引委員会が、同社発注の架空送電工事の工事業者及び地中送電工事の工事業者に対して排除措置命令・課徴金納付命令等を出した際に、以下の事実が指摘され、これらの事実が「独禁法違反行為を誘発し、又は助長したものと認められる」とされた。

・工事発注に当たり、同社の設計担当者の多数が、当該現場説明会の場等において、工事業者の営業担当者の求めに応じて、契約締結の目安となる価格を算出する基となる『予算価格』と称する設計金額又はそのおおむねの金額を、非公表情報であるにもかかわらず教示したり、工事業者の営業担当者に対し、予算価格が記載された発注予定工事件名の一覧表を、非公表情報であるにもかかわらず提供したりしていたこと
・関西電力の購買担当者が、地中送電工事の発注に係る指名競争見積等の参加者の選定に当たり、各工事件名における参加者の組合せについて事前に特定の工事業者に相談していたこと、工事業者間で受注予定者を決定する話合いを行っていた者の中には関西電力の退職者が29名おり、このうち少なくとも14名は、関西電力の設計担当者から予算価格等の教示を受けていたこと
(公正取引委員会の『(平成26年1月31日)関西電力株式会社が発注する架空送電工事の工事業者及び地中送電工事の工事業者に対する排除措置命令、課徴金納付命令等について』における「1 本件審査の過程において認められた事実」をもとに筆者が要約)

 そして、公取委は、「同様の行為が再び行われることがないよう適切な措置を講じるとともに、発注制度の競争性を改善してその効果を検証すること、同社のグループ会社において、今後、独占禁止法に違反する行為が行われないよう適切な措置を講じること」などの「申し入れ」を行った。

 原発部門の高浜原発の関連工事の発注についても、発注者側が業者間の談合等の競争制限行為を「誘発し、又は助長」することがないようにするための措置は行われていたはずである。第三者委員会の調査では、上記の公取委の「申し入れ」を受けて、原発関連発注について、どのような措置がとられたのかを確認し、高浜原発の関連発注で、その措置に反して、競争制限を誘発・助長するような行為が行われていなかったのかを明らかにする必要がある。

 業者間の談合などの競争制限行為以外にも、関電側が意図的に特定の業者に過大利潤を得させる方法はある。それは、入札等の手続きで受注業者が決まった後に、当該受注業者に対して、設計変更や追加工事の発注などで過大な支払いをし、それを原資に「森山氏関連企業」に下請発注することで利益を提供するよう要請するというやり方である。この方法であれば、「談合」ではなく、発注者の関連と受注した業者との関係だけで、「森山氏関連企業」に対して利益供与を行うことができる。

 原発に関連する発注の一つひとつの設計変更、追加工事の発注等について、それらによって「森山氏関連企業」への利益提供につながっていないか、徹底した解明が必要である。

郷原 信郎(ごうはら のぶお)
郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

1955年島根県松江市生まれ。1977年東京大学理学部卒業。1983年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、法務省法務総合研究所研究官、長崎地検次席検事などを経て2003年から桐蔭横浜大学大学院特任教授を兼任。2004年法務省法務総合研究所総括研究官兼教官。2005年桐蔭横浜大学法科大学院教授、コンプライアンス研究センター長。2006年検事退官。2008年郷原総合法律事務所(現郷原総合コンプライアンス法律事務所)開設。2009年総務省顧問・コンプライアンス室長。2012年 関西大学特任教授。2014年関西大学客員教授。現在、公職として、国土交通省公正入札調査会議委員、横浜市コンプライアンス顧問を務めている。
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キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営

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