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GSOMIA失効回避から考える国際ビジネス交渉術 浅羽祐樹・同志社大教授に聞く

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■韓国の司法積極主義、実験国家の面も

 「韓国が1987年に権威主義体制から民主化を実現して、30年以上が経ちました。正義は上書きされるという考えで、さまざまな問題に挑戦する『実験国家』の一面も現代韓国の特徴です。韓国の司法は、かつて選挙で選ばれた政党に解散を命じ、朴槿恵(パク・クネ)前大統領も最終的に罷免しました。今は、いちど国家間で合意して決着のついた問題を、蒸し返すと国際的な信認がどうなるのかという実験を行っているとみることもできます。『合意は拘束する(pacta sunt servanda)』といいますが、企業ならば前社長が結んだ契約を新社長が全てひっくり返すという事態はなかなか起きないでしょうが」

■産業化では日本に遅れたが情報化は先行?

 ――1965年に日韓基本条約、日韓請求権協定を結んだときは大きく国力が離れていたので韓国は遠慮していた。現在は接近したためズバズバ主張するようになったという分析もみられます。

 「一部の分野では日本を追い越したとさえ考えているでしょう。韓国はすでにキャッシュレス社会を発展させ、納税事務などを一括処理できますが、日本はそこまで追いついていません。大統領府への請願はウェブサイトにオンラインで提出でき、30日間で20万人以上の『いいね!』が付くと回答が開示されます。産業化では日本に後れをとったが、情報化では先行しているという意識はあるでしょう。人権意識でも日本社会より優れていると自負しています」

  「一方GDPで世界12位(世界銀行、2018年)の経済国であるにもかかわらず、歴史的に大国に囲まれ翻弄されてきたという『小国』意識からも逃れられていません。今も米中日露を『4大強国』という表現をしています」

 「隣国同士の長い交流がある上、韓国語は語順が似ていて多くの漢字語も共有しています。しかし良く分かっていると思い込むのは危険です。日本も韓国も著しく変化しています」

定めた「閾値」からブレるのはNG

  ――賛否は別にして、韓国側の思考方法は分かりました。次にこちらの意志を伝えるためのポイントはどこでしょうか。

 「これ以上は妥協しない『閾(しきい)値』を定め、ハッキリ伝えることです。日韓対立の1丁目1番地は旧朝鮮半島出身労働者(「元徴用工」)への韓国最高裁の賠償判決(2018年10月)です。慰安婦問題に関して、『最終的かつ不可逆的な解決』を盛り込んだ合意(2015年)でさえ、韓国での政権交代後に反故にされました。その上でこれですから、これまでの友好協力関係の法的土台が崩れることを意味します。しかも、元慰安婦が日本政府を相手取った訴訟すら、主権免除の原則にもかかわらず、韓国の地裁で審理が始まりました。長い時間がかかってもぶれないこと、ボトムラインをはっきりさせることが大事な局面です」

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