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GSOMIA失効回避から考える国際ビジネス交渉術 浅羽祐樹・同志社大教授に聞く

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有効な「相手側の論理」の把握

 「『不合理な分からない国』と韓国をひと括りにすると、こちら側も巧く対応できなくなってしまいます。納得できるかどうかは別として、相手側の論理を理解しておくことは欠かせません」

 ――現在の日韓関係をケーススタディーにして研究すればグローバル展開する企業に役立つノウハウが得られそうです。なぜ韓国は日本に対して「歴史問題」にこだわるのでしょうか。

 「『大韓民国』としてのナショナル・アイデンティティーの不安定さに関係しています。日本の場合、アジアで最初に近代化した国であり、戦後は経済大国、技術立国といったイメージと自負が国民にあります。しかし1910年に韓国は日本に併合され、自力では解放を勝ち取れなかっただけでなく、朝鮮戦争で南北に分断されました。北朝鮮は、まだ金日成主席がパルチザンで活躍したという『神話』がありますが、韓国は『正しい歴史』を持ちえなかった分、『恨(ハン)』も深いのです。その責任は日本にあるというわけです」

 「韓国憲法の前文では、1919年の三・一運動の結果、上海に成立した臨時政府に国家の正統性を求めています。しかし当時、国民や領土に対して実効的な統治を行っていたわけではなく、国際的に承認されていたわけでもありませんでした。文大統領は100周年の今年、盛大に祝おうと企画しましたが、盛り上がりませんでした」

■韓国の論理は「正義は上書きされる

 ――世論に突き動かされると、制度や法解釈がくるくる変わり、韓国は民主国家として未成熟なイメージがあります。

 「日韓ともに、民主主義と自由主義の両方が適度に組み合わさっている自由民主主義体制です。政権交代の回数など民主主義のレベルを測るいくつかの指標でみると、韓国は『民主化・体制定着の優等生』と判定されます。民主主義は異なる利害の対立を不断に調整していくメカニズムですが、韓国では唯一ひとつの正解や正義があって、本来誰もが同意するはずだという理解が強いですね」

 「さらに、正しいことは常に『上書き』されると考えます。更新していくことで、その時々の正義が実現し、歴史は進歩するというわけです。何が正しいかを決める決定的な要素が、『民心(世論プラス正義)』です。民心がすべてに優先し、違っていれば制度や法解釈の方を変えるべきだとするのです。民主主義のレベルで日本が優れ韓国が劣っているとは言い切れません。違うタイプの民主国家なのです」

 「制度上は日本と同じ間接民主制でありながら、週末には対立する陣営同士が大規模な集会を開いて国政に影響を与えるなど、直接民主制の要素も顕著です。毎週支持率が発表され、世論調査共和国ともいわれます」

 ――それでも元徴用工訴訟のように、司法が国際条約の解釈まで変更してしまうのは行きすぎに思えます。

 「日本の司法のように、政治的に中立的な法律プロフェッショナルの集まりというイメージの方が、国際的にはむしろ例外かもしれません。米国の連邦最高裁判事の任命は、常に政治的な関心を集めます。三権分立の中で、司法積極主義の韓国だけが特異とは言えません。司法は国民から直接選ばれていないので、なんらかの形で国民に呼応しようとするのはある意味当然です」

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