デジタル時代の競争政策

デジタル・プラットフォーム企業による市場支配と競争政策(下) 公正取引委員会委員長 杉本和行

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 デジタル・エコノミーにおける競争政策はどうあるべきか。「下」では実際に公正取引委員会をはじめとする世界の競争当局が対応したまたは対応中の事案について、公正取引委員会委員長の杉本和行氏が著した『デジタル時代の競争政策』をもとに解説する。

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データと競争政策

 経済のデジタル化を背景に、データの価値が高まっていることから、データの収集・利用を公正な競争環境で行えることが極めて重要な意味を有している。そこで、データ収集に関して競争が制限され、消費者の利益が損なわれる場合には、独占禁止法による迅速な対応が必要と考えられる。

 こうした問題意識の下に、公正取引委員会競争政策研究センターによる「データと競争政策に関する検討会」が開催され、その報告書が2017年6月に公表された。この報告書においては、データについては、投入財としての価値を有するものであり、検索サービスやSNSサービスのような無料サービスも独占禁止法の適用対象となる場合もあり得るとしている。その上で、不当なデータ収集や不当なデータ囲い込みが独占禁止法上問題となることがあると指摘している

 不当なデータ収集とは、不当な手段でデータ収集が行われたり、データ収集について、競争者間での協調を促進したりする等、競争に悪影響を与えるようなデータ収集が行われる場合であり、不当なデータ囲い込みとは、データが競争者の事業に不可欠であって、代替する情報が入手できない場合に、競争者や顧客によるデータに対するアクセスを正当な理由なく認めないような場合である。

 また、企業結合審査においても、投入財としてのデータ集積が製品・サービス市場へ及ぼす影響やデータ市場への影響といった観点からの審査が必要とされている。

デジタル・プラットフォーム企業に対する競争法の執行

 公正取引委員会は、アマゾンジャパン合同会社に対し、アマゾンマーケットプレイスに商品を出品しようとする者との契約において、価格及び品揃えについて、他のプラットフォームへの出品と比べて最も有利なものとするといった同等性条件の強要を行い、こうした契約条項が競争上の懸念を生じさせることから調査を行った。このアマゾンジャパン合同会社に対して行った調査の過程において、同社から出品関連契約において定められている同等性条件について、独占禁止法違反の疑いを解消する措置を講じるとの申出がなされた。公正取引委員会は、これにより独占禁止法違反の疑いのある行為について是正措置が取られたと判断した上で、事案の審査を終了した(2017年6月)。

 また、アマゾンウェブサイト上で電子書籍の配信事業を行っているアマゾン・サービシズ・インターナショナル・インクから、同ウェブサイト上で配信される電子書籍に関する出版社等との間の契約において定められていた同等性条件について、自発的に是正措置を講じるとの報告を受け、公正取引委員会は、同社が同等性条件の競争への影響に係る懸念を解消する措置を講じたと判断した(2017年8月)。

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