起死回生 ~崖っぷちからの反転攻勢

創業期に大手の買収提案を拒み、働き手の半数以上が去る オウケイウェイヴの兼元謙任 取締役・会長に聞く

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100%が「失敗するからやめておけ」と言った

 Q&Aサイトの事業化は容易ではなかった。最初はこのサイトを開発・運営してくれる会社を探したが、どこでも「失敗するからやめておけ」と言われる。当時はネットで1枚のウェブページを表示する際に10秒かかった。Q&Aサイトができたとしても実用的なものになるのかどうかもわからなかった。

 

 とうとう最後はQ&Aサイトを開発・運営するための起業を決断した。「想いだけで勝算はなかった。今、冷静に考えたら起業はしないでしょう。資金は出さない、絶対失敗すると、尊敬する経営者が言ったらやりますか?」(兼元氏)。

 会社は東京・町田に設立。Q&Aサイトの構築を始めた。サイト構築に使うサーバーを買うお金は妻が提供した。ホームレスのとき、罪滅ぼしに妻へ仕送りしていた仕事の稼ぎが貯金されていた。仲直りしたときにそれを提供してくれたのだ。兼元氏は「感謝するしかない」と振り返る。

 幸いにも、そうして開設したQ&Aサイトは、利用者の支持を得るようになるが、会社は赤字だった。主な収入源は、Q&Aサイトとは別に行っていたウェブデザインの仕事だったが、それでは不十分だ。さらなる収入源として兼元氏が考えたのはQ&Aサイトのシステムを企業へ提供することだった。その実績ができたところで、渋谷へオフィスを移転。従業員やアルバイトを増やした。前述のように大手による買収を拒んで経営危機に陥ったのは、そのころである。

黒字に向け経営者としての覚悟を決めた

 経営危機から脱出するため、兼元氏は経営者としての覚悟を決めた。「取締役会やアドバイザリーボードで、黒字にするから1年間ほしいと告げ、覚悟のほどを明らかにするため、頭を丸刈りにした。実際に1年間で黒字にした」

 兼元氏は、Q&Aサイトの企業へのシステム提供について本格的に取り組んだ。

 「当時、企業のサポートセンターでは質問から回答までをメールでやり取りしており、業務が煩雑だった。それがQ&Aサイトのシステムを使えば、回答を従業員などに投稿してもらい、一番良い答えを質問者に伝える仕組みができる。勝算があった」

 併せて、楽天の三木谷浩史氏やサイバーエージェントの藤田晋氏といったネット業界の先駆者からは有形無形の叱咤激励(しったげきれい)を受けた。

 楽天、サイバーエージェントからは出資を受けた(現在、いずれも資本関係は解消)。楽天からの出資の際は「三木谷会長(当時・社長)が、直接、弊社を見に来てくれた。弊社のオフィスを見て、自分の創業のときと、雰囲気が似ているから頑張れと言ってくれた」と兼元氏は振り返る。

 一方で両経営者からは、赤字の会社に存在意義はないといった主旨の厳しい言葉を浴びせられたとも兼元氏は話す。頭を丸刈りにしたのはそうした背景があった。

 3期目から黒字に転じたオウケイウェイヴはその後、成長を続け、2019年6月期の連結売上高は48億9235万円、従業員数は292人(連結、2019年6月30日現在)を達成した。2006年6月には名古屋証券取引所セントレックスに株式を上場している。Q&Aサイトのシステムは、当初からクラウドサービスの月額課金(サブスクリプション)として提供しており、安定的な事業の柱となっている。

 兼元氏の半生は、逆風に逆らうように全力で走り抜けてきたように感じる。その生まれや闘病、死への恐怖、ホームレスになるほどの失意を全身で受け止め、立ち向かってきた。そうした強い想いさえあれば、未来を変えるチャンスは必ず手にできる。兼元氏はそのことを身を以て示したのではなかろうか。

文:八鍬 悟志(やくわ さとし)
都内の複数の出版社に12年勤めたのち、フリーランスライターへ。得意ジャンルはIT(エンタープライズ)と国内外の紀行文。特にITに関してはテクノロジーはもちろんのこと、人にフォーカスしたルポルタージュを得意とする。最近はハッカソンイベントなどを取材する機会も多い。
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キーワード:経営・経営企画、技術、経営層、管理職、プレーヤー、経営、AI、IoT、ICT、イノベーション

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