デジタル時代の競争政策

デジタル・プラットフォーム企業による市場支配と競争政策(上) 公正取引委員会委員長 杉本和行

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特定のプラットフォームへの利用者の集中

 事実、特定のプラットフォーマーへの利用者の集中が見られることとなっている。2018年での世界の検索市場におけるシェアではグーグルは90%以上を占めている。SNS市場では、フェイスブックのシェアが約70%、これに続くのはピンタレストが約13%、ツイッターが約7%、インスタグラムが約2%となっている。なお、インスタグラムは2012年にフェイスブックに買収されている。eコマース市場においては、アマゾンのシェアが約50%で、約7%のイーベイが続いている(図表5)。

 更にこうしたオンライン(デジタル)・プラットフォーム企業は検索、SNS、メッセージといったデジタルな領域から、実店舗での小売り、IT化した住宅(スマートホーム)、自動運転といったリアルな領域へも事業を拡大している。例えばグーグルは検索ブラウザから始まった企業であるが、メッセージサービス、コンテンツメディア、クラウドサービス、それから電子商取引をカバーし、さらに金融分野である決済、実店舗の小売り、スマートホーム、自動運転のようなリアル分野まで事業を拡大しつつある。デジタル・ハード機器の製造を事業起点とするアップルも電子決済等の分野まで事業を広げつつある。フェイスブック、アマゾンも同様に事業領域を広げている。中国のアリババは事業起点が電子商取引であるが、金融分野を始め、極めて広い分野に既に事業領域を拡大している(図表6)。

オンライン・プラットフォームへの競争政策上の対応

 こうしたプラットフォームは消費者に大きな利益をもたらしている。更に一般の消費者にとって毎日の生活上も検索サービスの利用は不可欠となっている。位置情報の利用なども極めて便宜性を向上させている。メッセージサービスやSNSによる情報交換も日々の生活上不可欠のものとなっている。また、中小企業やベンチャー企業にとっては、資本力や地理的限界を乗り越えて、市場へのアクセスを可能とし、事業拡大の機会を提供している。こうしたことの一方で、特定のプラットフォームに利用者の集中が生じ、寡占・独占が生じ、大手デジタル・プラットフォーマーが市場支配力を有するようになるという現象が起きている

 先行者優位を有するプラットフォーマーは、これに加えて、ネットワーク効果に伴うデータの集積・利活用の進展により更なるサービスの拡充をもたらすことになる。こうしたことから、プラットフォーム利用者には、プラットフォームの変更をするには多大なコストが生じ、困難が伴うというスイッチング・コストが生じ、そのプラットフォームの利用に閉じ込められるという、いわゆるロックイン効果が働きやすい。こうして、寡占・独占が維持されやすいということになっている

 オンライン(デジタル)・プラットフォーマーによる寡占・独占がイノベーションによって確保されるものである限りにおいては、競争当局としても問題とすべきものではないと考えられる。しかし、デジタル・プラットフォーマーが自らの支配的地位を濫用し、消費者や取引先事業者に不当な不利益を課すことにより、公正な競争を歪めたり、自らの競争者となるおそれのある新規参入者を不当に排除するなど自由な競争を妨げる行為が見られる場合には、競争政策上看過できないことになる

 市場支配的な地位を持つオンライン・プラットフォーマーはまた、消費者や取引先事業者に対し、優越的地位を有することになる場合があることから、消費者や取引先事業者は正常な商慣習に照らして不当な不利益を受け入れざるを得ないなど、不公正な取り扱いを受けるおそれがある

 こうした行為を是正し、防止することが競争政策の重要な役目であろうと考えている。

(つづく)

杉本和行 著 『デジタル時代の競争政策』(日本経済新聞出版社、2019年)、「第3章 デジタル時代の競争政策」から
杉本和行(すぎもと・かずゆき) 公正取引委員会委員長
1950年生まれ。74年東京大学法学部卒業後、大蔵省(当時)入省。主計局長を経て2008年財務事務次官。みずほ総合研究所理事長を経て、2013年公正取引委員会委員長に就任、18年再任。
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キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、技術、プレーヤー、イノベーション、ICT

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