経営層のためのグローバル・マーケティング

トヨタウェイ 理念が先導する世界戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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多様な価値観持った人々を束ねる

 グローバル経営が進んだ現代においては、ますます経営理念の重要性が増している。各国・地域の人々は、それぞれ異なった歴史や文化を持ち、異なった価値観や行動規範を有している。それらの人々を束ね、同じ方向を向かせることが、グローバル経営においては必要不可欠になっている。1985年のプラザ合意以降急速な円高が進行し、80年代末にはバブルが崩壊し、国内市場の停滞が明白になる。日本企業も自動車産業や電子電機産業を中心にグローバル化を推進したが、進出した各国・地域の従業員を納得させる経営理念やヴィジョン、基本となる価値観や行動原則を設定し、普及させることが急務となった。2000年代以降、それまで社是や行動指針などで語られていたさまざまなことを「〇〇ウェイ」という形で表明することになる。目的がグローバル経営に対応することであるから、多くは英語で表記されている(日本では当然翻訳あり)。

 経営理念を含む「〇〇ウェイ」は、従業員をはじめとする様々なステークホルダーを結合させるとともに、従業員の離職率を低下させ、マーケティングやブランディングの一貫性をもたらす。トヨタ自動車の場合、「The Toyota Way 2001」の下に生産のトヨタウェイである「Taiichi Ohno: Toyota Production System」や販売のトヨタウェイである「The Toyota Way in Sales and Marketing」などがあり、さらに全世界の顧客に伝えるべき共通の価値としての「Toyota Value」がある。

 自動車産業や電子電機産業にとどまらず、確固たる経営理念は現代のグローバル経営の要となっている。ヤクルト本社や良品計画、公文、会宝産業など、彼らのグローバル経営は経営理念なくして語れない(拙著『実践的グローバル・マーケティング』参照)。今こそ我々は本田宗一郎の言葉「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」を心に刻み、実践すべきであろう。

大石芳裕(おおいし・よしひろ) 明治大学経営学部教授
専門はグローバル・マーケティング。日本流通学会(理事,前会長)など多くの学会で要職を務める。企業などで海外市場開拓を担う実務家らを講師として招く「グローバル・マーケティング研究会」を主宰。同研究会は第一線のマーケッター、研究者ら約3000人の会員が登録する、実務と学術をつなくグローバル・マーケティング研究の拠点になっている。近著に「グローバル・マーケティング零」(白桃書房)、「実践的グローバル・マーケティング」(ミネルヴァ書房)など

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