経営層のためのグローバル・マーケティング

トヨタウェイ 理念が先導する世界戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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 経営者であれば経営理念の重要性は誰しも認識していることであろう。伝統ある企業では「創業者の理念」を脈々と受け継いで、現代の経営に生かしているところも多い。たとえば、パナソニック(旧:松下電器産業)においては松下幸之助が「綱領」と「信条」(1932年)ならびに「松下電器の遵奉すべき精神」(1933年)を著し、現代ではそれを「A Better Life, A Better World」と表現している。また、トヨタ自動車においては豊田佐吉の考え方をまとめた「豊田綱領」(1935年発表)に基づき、「トヨタ基本理念」を1992年に定めている(1997年改定)。

伝統企業にもスタートアップにも重要

 伝統ある企業のみならず、スタートアップにおいても理念は重要である。たとえば、プリファードネットワークスにおいては「現実世界を計算可能にする」というヴィジョンを掲げ、「最先端の技術を最短路で実用化する」ということを目指している。それによって「これまで解決が困難であった現実世界の課題解決を目指して」いるのである。また、グローバルモビリティサービスにおいては「真面目に働く人が正しく評価される仕組みを創造する」というヴィジョンを掲げ、途上国における貧しい人々が「活躍する機会平等を実現し、自らの頑張りにより貧困から脱出する機会を創出」している。

 考えてみれば、パナソニックもトヨタ自動車も創業時はスタートアップであった。創業当初は、おそらく事業を軌道に乗せることに苦慮していたことであろう。事業がある程度うまくいき従業員数も増えた頃、従業員を一つにまとめる経営理念を真剣に考えざるをえなくなったのではないか。実際、松下幸之助が経営理念の重要性に気付いたのは従業員数が100名を超えたくらいからだと言われている。本田技研工業(ホンダ)創業者の本田宗一郎が前身の本田技術研究所を設立(1946年)してから2年後、「従業員が増えてオレには経営できねぇ」と藤沢武夫を招き入れたことも象徴的である。ソニーの創業者・井深大が「東京通信工業株式会社設立趣意書」(1946年)に、会社設立の目的の一つとして「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」を謳い「真面目なる技術者」を集ったのは、彼が日本測定器株式会社などを経営した経験があったからだろう。経営理念は従業員を結束させる要である。

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