日経SDGsフォーラム

SDGs達成 製薬の本領 がん分野にカジ、時代の求めに対応

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 健康はいつも人類の大きな願いだ。国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)でも「すべての人に健康と福祉を」は3番目に掲げられる。製薬企業は本業にまい進することがこの目標達成にそのままつながる。SDGsに取り組むには恵まれた立場だ。それだけに向けられた期待は大きく、背負う責任は重い。

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誰でも手の届く適正価格の薬を

 どのような病気が人々の健康をむしばむかは時代により異なる。先進国ではかつてコレラや赤痢、結核などの感染症が流行した。その後、衛生環境の改善などにより感染症は減り、代わって糖尿病や高血圧症などの生活習慣病が問題となる。そして今、死因の大きな部分を占めるのはがんだ。発展途上国も少し遅れて同じような経路をたどる。

 世界中の研究開発型製薬企業ががんとの戦いに挑んでいる。ここ数年はヒトのからだを守る免疫の仕組みを利用してがんを攻撃する新しいタイプの薬が次々開発され、成果をあげている。このような状況の中、これまでがん治療薬をほとんど扱ってこなかった第一三共が事業の中心をがん分野とする大胆な方向転換を決めた。

 勝算もなくかじを切ったわけではない。同社が研究を続けてきた新たながん治療薬が世界的な注目を集めるようになったのだ。抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれるもので、狙ったがん細胞だけに抗がん剤を送り込み、副作用は抑えることができる。この薬の第1弾は2020年にも上市されるという。

 同社はこれまで、循環器系を中心とした生活習慣病の治療薬などで実績をあげてきた。時代の要請に応じた薬の開発を続けていることはSDGsの観点からも評価されるだろう。ただ目標達成に向けてはもう一つ課題がある。その薬を必要とするすべての人に届けることができるかどうかだ。

 最近開発される治療薬は研究開発費の巨額化に歩調を合わせ、とみに高額化している。1回の投与で3000万円を超える値段がついた治療薬が登場したことは記憶に新しい。価格が高騰し続ければ、世界のごく一部の患者しか使えないということにもなりかねない。

 この点について真鍋淳社長は「ビッグデータを利用して臨床試験のコストを下げることなどで開発費は抑えていきたい」と話す。同社は患者が少ない希少疾病の治療薬開発にも取り組む。患者に届くことまでを見据えた開発は欠かせない。

 健康を守るために大切なのは投薬などの医療行為だけではない。患者の心に寄り添うことや、豊かな自然環境の維持も重要だ。これらはすべてSDGsにつながる。同社は患者の支援活動や工場での再生可能エネルギー導入にも積極的だ。持続可能な世界に向け日本の取り組みを引っ張っていくことを期待したい。(編集委員 山口聡)

「健康で豊かな生活」追い続ける――

 今春、グループの企業行動憲章を改定しました。SDGsをその中にどう取り込むかが課題だったのですが、そもそも私たちの企業理念「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」はSDGsに直結していたので、非常に取り入れやすかったといえます。

 健康で豊かな生活に貢献するため、私たちができることは革新的な医薬品の提供です。ここが真ん中で、そこを支えていくのは、大学などとのパートナーシップであり、そこから生まれるイノベーションでしょう。これらはすべてSDGsに含まれる大切な要素です。

 自信を持ってつくった薬はより多くの患者さんに使ってもらえるよう、世界中の国々の医療制度や生活水準を考慮しながら、適正な価格で届けたいと考えています。例えば米国では医療保険に入れないなどの一定条件の患者さんに無償で薬を提供するプログラムなども実施しています。

 適正使用に向け薬についての情報をわかりやすく、正しく伝えることも重要です。このため人工知能(AI)を活用してお客様からの問い合わせに迅速に対応できるシステムをつくりました。

 災害時でも、きちんと薬を届けることができるような事業継続計画も整備しています。患者さんとそのご家族を演劇に招待するといった支援活動も続けています。

 「健康で豊かな生活に貢献する」というしっかりとした核があることから、そこから持続可能な世界に貢献する取り組みは色々な形で広がっています。

 時代とともに、健康で豊かな生活に貢献する手段は薬をつくることではなくなるかもしれません。そのときには私たちの事業の中身も変わる可能性があります。でもいつの時代も最終的に目指すところは変わりません。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、経営、CSR、CSV、ESG、環境問題、SDGs

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