物流がわかる

ポテトチップスの圧倒的なシェア支える「カルビー」の鮮度重視物流 イー・ロジット 代表取締役社長 兼チーフコンサルタント 角井亮一

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「物流戦略の4C」でカルビーの製品物流を考える

 物流戦略を考えるうえで、私が提案しているものに「物流戦略の4C」があります。このフレームワークに沿って、カルビーの製品物流を考えてみると、次のようになるかと思います。

 まず、利便性、価値提供のconvenienceですが、「味へのこだわり」「商品のバラエティ」になるでしょうか。次に時間のconstraint of timeは「できあがった商品をいち早く届ける」ことでしょう。これを実現する手段であるcombination of methodは「消費立地型の生産拠点を設け、物流拠点を使い分けながら、多頻度小口配送する」ことであり、最後のコスト(cost)については「低コストを優先する」となるでしょう。

 ポテトチップスについては、全国14カ所にある生産拠点(協力工場を含む)のうち、8カ所の工場(北海道工場(北海道千歳市)、新宇都宮工場(栃木県宇都宮市)、ポテトフーズ東松山工場(埼玉県東松山市)、各務原工場(岐阜県各務原市)、湖南工場(滋賀県湖南市)、広島工場西棟(広島県廿日市市)、鹿児島工場(鹿児島県鹿児島市)、R&Dセンター(栃木県宇都宮市))で生産しています。

 物流の拠点はカルビーロジスティクスが全国に14カ所設けていますが、その機能によって3種類(DC、SS、TC)を使い分けています。

 DC(Distribution Center)は工場に隣接した在庫型の物流センター。恵庭DC(北海道恵庭市)、宇都宮DC(栃木県宇都宮市)、古河DC(茨城県古河市)、東松山DC(埼玉県東松山市)、中部DC(愛知県犬山市)、湖南DC(滋賀県湖南市)、広島五日市DC(広島県広島市)、鹿児島DC(鹿児島県鹿児島市)の8カ所にあり、拠点間輸送(DCからDC、SS、TC)と、お客様(菓子問屋など)に配送しています。

 SS(Service Station)は消費地隣接の在庫型配送センターで、SSからお客様(菓子問屋など)に配送します。配送ボリュームの大きい盛岡SS(岩手県紫波町)、神奈川SS(神奈川県相模原市)、福岡SS(福岡県宇美町)、沖縄SS(沖縄県浦添市)の4カ所にあります。

 TC(TransferCenter)は消費立地型の配送センターですが、在庫を持たない積み替え専用の拠点。仙台TC、新潟TCがあり、共同配送の持ち込み拠点にもなっており、お客さん(菓子問屋など)へ配送しています。

 ポテトチップスのようにかさばるものは生産拠点に近い物流拠点から近隣の消費地へと届けますが、フルグラのようにかさばらないものは京都工場(京都府綾部市)、清原工場(栃木県宇都宮市)の2カ所で生産、東西の配送センターそれぞれ1カ所から全国へ配送しています。またDCでは複数の荷物を積み合わせることにより、配送効率を向上させる取り組みも行っています。

年間1億8700万ケースを配送する物流現場の改善

 カルビーロジスティクスでは、年間に1億8700万ケースを配送しています。

 カルビーの物流課からの指示により、1日に500台、1カ月で1万3500台のトラックを動かしていますが、このボリュームは、カルビーを除く5大菓子メーカー(江崎グリコ、ロッテ、森永製菓、明治)の合計に匹敵する出荷量になるそうです。物量として多いということもありますが、すき間なく箱詰めできるチョコレートと、空気を運ぶスナック菓子という違いも影響しているようです。

 最近の食品流通の世界では、業界の努力目標として、賞味期限の6分の1以内に出荷することになっています。カップものの「じゃがりこ」や「jagabee」は賞味期限が90日ですから、工場で生産されてから「15日以内」に出荷する必要があります。賞味期限が120日あるポテトチップスでも「20日以内」に出荷しなければなりません。カルビーの場合、出荷・配送についてはきっちりとダイヤグラムが作成され、トラックごとに配送センターに入る時刻、順番などがしっかり管理されています。

 ドライバーの人手不足、働き方改革の推進による長時間勤務の抑制などもあり、物流コストの上昇は頭の痛い問題になっています。圧倒的な物流量を扱うカルビーでも、生産性の向上が至上命題です。

 同社では、ポテトチップスの10プロセスにおいて、生産の前処理までのプロセス、包装から店頭までのプロセスにおいて、工数の削減や作業の簡素化を図り、コスト削減に取り組んでいますが、これはほんの一例。パッケージ容積の縮小をはじめ、商品や包材の改善など、細かなところでも実行に移しています。

 最近、効果をあげたものに「フルグラ」のケースがあります。

 フルグラは内容量別に、600グラム、700グラム、800グラムのバリエーションがありますが、従前、それぞれ同じサイズの段ボールで梱包していました。それを600グラム、700グラムのフルグラについては、段ボールの高さを20ミリ縮小したところ、当たり前のことですが、同じ箱数でも占有スペースを縮小することができ、倉庫保管効率の改善、物流効率の改善、段ボールコストの削減という効果が生まれ、かなりの規模でコストの削減につなげることができたそうです。

 カルビーでは、このフルグラの事例にとどまらず、あらゆる商品ラインアップで、こうした細かな施策に取り組み、効果をあげています。

角井亮一 著 『物流がわかる<第2版>』(日本経済新聞出版社、2019年)、「第4章先進的な物流の取り組み」から
角井亮一(かくい・りょういち)
1968年10月25日大阪生まれ、奈良育ち。現在、東京秋葉原に在住。上智大学で、ダイレクトマーケティング学会初代会長の田中利見先生のゼミに所属。3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学からマーケティング専攻でMBA 取得。帰国後、船井総合研究所に入社し、小売業へのコンサルティングを行い、1996年にはネット通販参入セミナーを開催。その後、家業の光輝物流に入社し、日本初のゲインシェアリング(コスト削減額の50%を利益とするコンサルティング型アウトソーシング)を東証一部企業で実現。2000年2月14日、株式会社イー・ロジット設立、代表取締役に就任。イー・ロジットは、現在310社以上から通販物流を受託する国内NO1の通販専門物流代行会社であり、200社の会員企業を中心とした物流人材教育研修や物流コンサルティングを行っている。また2015年、再配達問題という社会問題を解決するためのアプリ「ウケトル」を立ち上げ、タイではSHIPPOPという物流IT企業をタイ最大のネット通販会社Tarad.com創業者のPawoot (Pom) Pongvitayapanuと共同で立ち上げた。日本語だけでなく、英語、中国語(簡体、繁体)、韓国語、ベトナム語でも書籍を累計29冊以上出版。最新刊は『物流革命』(監修、日本経済新聞出版社)、『すごい物流戦略』(PHPビジネス新書)。マスメディアでも、わかりやすく物流を解説するコメンテーターとして、「とくダネ!」「めざましテレビ」「ひるおび!」「スッキリ!」など多くのテレビ番組やラジオ番組、「日本経済新聞」「日経ビジネス」「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などの新聞雑誌に登場している。日本物流学会理事。NewsPicks プロピッカー。多摩大学大学院客員教授。FACEBOOK:https://www.facebook.com/riokakui TWITTER:@rkakui

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、製造、プレーヤー、イノベーション、AI、IoT、ICT

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