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ポテトチップスの圧倒的なシェア支える「カルビー」の鮮度重視物流 イー・ロジット 代表取締役社長 兼チーフコンサルタント 角井亮一

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 この連載では、先進的な物流の取り組みをしている企業を紹介。著者ができるだけ現地に足を運び、直接体験・取材してきた情報を、自分なりに解釈して解説します。最終回ではカルビーを扱います。

◇  ◇  ◇

 菓子メーカー大手、カルビーは2019年に創立70周年を迎えました。

 「やめられない、とまらない」の名フレーズで大ヒット商品となった『かっぱえびせん』(1964年発売)、「100円でポテトチップスは買えますが、ポテトチップスで100円は買えません」のCMが印象的だった『ポテトチップス』(1975年発売)、発売から年20以上経って大ブレーク、シリアル市場トップの『フルグラ』(1991年発売、当初は『フルーツグラノーラ』)など、同社にはロングセラーの人気商品が数多くあります。

 売上高は2515億円(2018年3月期、連結)。2008年の売上高が1096億円でしたから、この10年の間に売上げを2倍以上に成長させています。国内のスナック市場でのシェアは53.2%、ポテトチップス市場では72.6%、シリアル市場は40.3%という圧倒的なシェアをもっています。

 ではなぜ、カルビーはロングセラー商品を生み続け、これだけの地位を築くことができたのか。

 商品が「おいしい」ということはもちろん、TVCMなどを巧みに利用し全国に商品名を広げることができたということもあると思いますが、私は、おいしい商品を日本全国に、効率的かつ安定的に供給できる体制を築けたことが大きいと考えています。

 スナック菓子の物流は「空気を運んでいるようなもの」と、よく言われます。商品の見た目(形状)が商品の価値に直結するため、たとえばポテトチップスが割れないように、空気を緩衝剤代わりに封入するので、重量の割にかさばるものになるからです。

 カルビーでは、この悩ましい商品特性をクリアしながら、おいしさとコストをバランスよく両立させるために、製品物流に工夫を加えてきました。

ポテトチップスは多頻度小口配送へ転換

 ポテトチップスについては、店頭での商品の鮮度・おいしさを保つため、一括大量配送から多頻度小口配送へと転換しました。さらに、そのための配送コスト増を吸収するべく、消費地の近くで生産し、配送距離を短くする仕組みをつくりあげました。

 同社で使用するじゃがいもの量は、国内生産量の6分の1(約16%)を占めます。そのため、ポテトチップスの品質確保、および自然災害からの影響を軽減するため、全国約1900名の契約生産者の協力を得て、使用する時期に合わせて、病害虫に強いオリジナル品種「ぽろしり」をはじめ数種類の馬鈴薯の調達、貯蔵管理も行っています。またじゃがいもは中心産地である北海道から鹿児島工場まで、というように長距離海上輸送されることもあります。その場合には、じゃがいもに最適な環境で運べるように、専用のじゃがいも輸送船(カルビーポテト丸)を使用するなど、高品質のじゃがいもの維持・管理にも力を注いでいます。

 現在、ポテトチップスの生産から店頭までの流れは、10のプロセスにより管理されています。原料段階の「(1)種子」⇒ 「(2)圃場」⇒ 「(3)原料流通」、生産段階の「(4)前処理」⇒ 「(5)加工」⇒ 「(6)調味」、物流段階の「(7)包装」⇒ 「(8)在庫」、営業段階の「(9)商品流通」⇒ 「(10)店頭」を経て、お客様の手元に届けるというものです。

 カルビーでは、これらのプロセスをカルビー本体と、子会社のカルビーポテト、カルビーロジスティクスの3社で担っています。

 カルビーポテトは、じゃがいもの栽培管理、品種開発、貯蔵、工場への配送など、調達物流をメインに行う会社です。

 一方、カルビーロジスティクスは、2018年7月に「スナックフードサービス」から社名変更した会社で、カルビー商品の製品物流を一手に引き受けています。同社を設立した1990年当時は、ドライバーの人手不足状態にあり、自分たちで物流をやらないと、コストと物流品質の維持が難しいという時代。物流のイノベーションを図るために立ち上げた会社で、当初、社名にカルビーと入れなかったのは、「空気を運んでいるようなものだから、できるだけ配送密度を高めて、コストを抑えたい」という菓子業界共通の課題を共同配送によって解決したいという、業界大手としての思いがあったからです。現在、9割(カルビー80%、10%が子会社のフリトレー製品)がグループ内の配送ですが、残りの1割は同業他社(お菓子メーカー十数社)の商品配送です。

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