「働き方改革」 先行する中小、挑戦するベンチャー

職場は選べる 自宅でも東京でも大自然でも 日本政策金融公庫総合研究所主席研究員・井上考二

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 情報通信技術の進展で、働く場所の自由度は飛躍的に高まった。モバイル通信の環境が整備されたことや各種のソフトウエアを使用できるクラウドサービスが広まったことで、極端に言えばどこでも仕事ができるようになっている。中小企業の柔軟な取り組みも進化している。

フリーオフィス制で先端技術者を獲得

 電子データを保護するセキュリティー対策ソフト開発のサイファー・テック(吉田基晴社長、徳島県美波町、従業者数20人)は2014年、本社を東京から人口7千人の自然豊かな徳島県美波町へ移転した。取引先の9割が、東京の大企業であるにもかかわらずに、である。

 美波町には2012年にオフィスを設けていた。人材確保を目的にしたものだという。しかし地元の人を採用するためではなかった。吉田社長は「都会暮らしのせいで趣味を楽しめないという人に、自然に囲まれた地方での働き方を提案し人材を確保したかった」と狙いを語る。

 03年に創業した同社は、それまで年間約500万円を投じて求人広告を出したり、ヘッドハンティングを試みたりしていたが、なかなか人材を採用できなかったという。「年間1人の採用もおぼつかなかった」と吉田社長。同社ソフトの特徴は、さまざまな種類のデータに一つのソフトウエアで対応して、データの不正閲覧や複製を防ぐ点だ。成長途上の分野で専門性が高いため、人材獲得の競争は常に過熱気味だという。そこで全く違った切り口での求人アイデアを実行したのだ。

美波町には日本有数のサーフィンスポットとして知られる海岸があり、山登りや釣り、キャンプなどのアウトドアレジャーも盛んだ。農作業を楽しめる田畑も少なくない。「徳島は県内全域で高速通信網が整備されていて、東京オフィスや東京の取引先との会議なども支障はなかった」と吉田社長。

 新聞、テレビ番組などに、早朝にサーフィンを楽しんでから職場に行く従業員の様子などが取り上げられ、オフィスを開設してから3カ月で3人の採用に成功した。

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