「働き方改革」 先行する中小、挑戦するベンチャー

職場は選べる 自宅でも東京でも大自然でも 日本政策金融公庫総合研究所主席研究員・井上考二

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 さらにフリーオフィス制度を取り入れた。勤務地を東京と美波町のどちらにするかを自由に選ぶことができる。子どもの夏休み期間中は美波町で働いたり、定期的に勤務地を変えて都会暮らしと田舎暮らしの両方を楽しんだりすることができるという。

 有給で取得できる地域活動支援休暇や、勤続5年ごとに2週間の休暇と10万円を支給するリフレッシュ休暇も設けた。吉田社長は「季節を問わずに入社を希望する問い合わせが後を絶たない」と手応えを感じている。

引っ越してもOK、離職者ゼロに

 給与計算の代行など人事・労務に関する事務を請け負うアライツ社労士事務所(浅野貴之所長、名古屋市、従業者数8人)は2008年、創業4年目のときにテレワークを開始した。ある女性従業員が配偶者の転勤で関東へ引っ越すことになったのが契機だ。浅野所長は「仕事のノウハウを熟知したキーパーソンに辞められると困るので、自宅利用型テレワークを提案した」と話す。

 健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの手続きといった定型的な業務については、インターネットを利用して年金事務所やハローワークなどに直接申請・届け出ができる。在宅勤務でも、新たに必要な設備はパソコンくらいで済む。しかし実際に運用していくなかで円滑に業務が進まないケースも生じてきた。

 まずテレワーク中の従業員が、浅野所長や同僚に仕事の相談をするタイミングをつかめないことだ。電話で話をしているとか、外出の準備をしているといった、相手の状況が分からない。「なかなか本社に問い合わせできずに、進捗が滞った案件も出てきた」と浅野所長。

 そこで、同社は相手先の様子を写すアプリを入れたスマートフォンを2台用意して解決を図った。1台はテレワーク勤務の従業員が所有し、もう1台は浅野所長の机の横に設置した。所内の様子をいつでも確認できるようにした。

 テレワークの従業員は、進捗状況の確認から、経営の方向性を検討する会議まで所内のミーティングに参加できるようにもなった。従業員全員が議論に加わるので、離れた場所で仕事をしていても一体感を維持できているという。

 取引先の情報管理では、小規模LANを構築して情報を会社のサーバーに保存し共有できるようにした。さまざまな工夫を加えることで、独自のテレワークシステムを構築したわけだ。

 浅野所長は「出産や配偶者の転勤などを理由に離職する従業員がいなくなった」と話す。導入のきっかけとなった女性従業員は、夫の転勤に合わせて3回引っ越しをしたが、現在もテレワークで仕事を続けている。

従業員を引き付ける多様な働き方を

 仕事は社内でしなければならない、就業時間は1日8時間など、企業が従業員に無意識のうちに求める規範は多い。それによって、希望する人材獲得のチャンスを逃しているケースは、表には出ないものの案外多いかもしれない。

 サイファー・テックやアライツ社労士事務所のように柔軟な思考をもって働き方の規範を取り除けば、従業員を引きつける多様な働き方を提供でき、企業が成長を続けるための糧を得ることができるだろう。

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