日本型のイノベーション=「和ノベーション」を実現していくには何が必要か――。ドイツ系戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーの長島聡社長が、圧倒的な熱量を持って未来に挑む担い手たちを紹介していきます。今回のゲストは、ものづくりのイノベーションを支える開発拠点「ガレージスミダ(Garage Sumida)」を運営する浜野製作所の浜野慶一氏(代表取締役CEO)と金岡裕之氏(専務取締役)です。
「何でも直したり作ったりしてくれる」町工場が起点
長島 今までに何回お会いしたでしょうか。最初に御社へ訪問したときの第一印象は「普通の工場だけど、少し赤いな」といったものでしたが、中に入って驚きました。社員が集まる「ガレージスミダ」という場所は、予想以上に広く、お酒がたくさん置いてあります(笑)。
浜野 驚くかどうかは人によります(笑)。
金岡 そうです。お酒がたくさんあります(笑)。
長島 そこでお仕事についてうかがったあと、家庭的な料理が出る飲み会にも参加させていただきました。また、弊社の従業員が家族とともにお邪魔させていただき、工場体験で携帯スタンドなどをつくりました。私も久々に金属を削ったりして、楽しかった。本当に濃密な時間を過ごさせていただきました。
浜野 僕らは、長島さんに、こういう形でお付き合いいただけるとは思っていませんでした。本当に我々もありがたいです。
長島 では、まず会社の成り立ちについて――特に得意技――についてお話しいただけますか。
浜野 弊社は、東京・墨田区にある、金属の加工をメインとする、“ものづくり”の町工場です。創業43年目を迎えたところで、僕が創業者の父に続く、2代目の経営者になります。創業以来、金属の加工を手がけてきましたので、それが得意技です。
長島 金属の加工といってもさまざまな方法があります。どのような加工が多いのでしょうか。
浜野 父は金型の職人でした。鋳物、プラスチックの射出成型、金属プレスなど、いろいろな金型がありますが、父はプレスの金型の職人で、量産品向け部品加工用の金型を製作する工場を立ち上げたのが浜野製作所のスタートです。創業当時は景気が良かったため、お客様の依頼に応じて、量産品向けの部品なども作りました。
しかし、製造業を取り巻く経営環境は時代とともに大きく変わり、2000年ごろには部品加工用の金型をつくる仕事を続けながら、精密板金という金型を使わない加工方法による試作品や小ロット品の製作を始めました。最近は、装置開発や設計開発を手がけ、ロボットも作るようになりました。自社内で設計部隊を持ち、自分たちで部品を加工し、組み立てを行い、完成した装置としてお客様へ提供しています。
長島 金岡専務もお仕事について紹介いただけますか。
金岡 その折々で、お客様が依頼するものを「形」にするのが僕の仕事です。弊社は町工場であり、特殊な技術を豊富に持っているわけではありませんが、金属の加工にかけては“プロ”です。金属の加工には、専用の道具や場所が必要です。それらを活用してつくることができるもの、お客様がほしいと言うものは、できる限り「形」にします。多少、商売抜きのところもあったりしますが...(笑)。
浜野 商売抜きで仕事をするところは、問題かもしれません(笑)。