フィンテック&レグテック・サミット2019特集

対面取引で築いたお客様とのつながりを強みに 金融デジタルプラットフォーム構築に挑む 野村ホールディングス執行役員 池田肇氏に聞く

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 日本経済新聞社と金融庁が主催した「FIN/SUM(フィンサム)2019」に参加した企業・団体のキーパーソンに注目テーマや最新動向などを聞いた。野村ホールディングスが今年4月1日付で発足させた新組織「未来共創カンパニー」は、同社のデジタルイノベーション推進に伴う幅広い施策を展開。カンパニー長の池田肇氏は、「金融や非金融にこだわらない、幅広い業種との連携は、金融サービスの未来を切り開く一助となるだろう」と語る。

 ――ホールディングスは、2019年4月1日付で「未来共創カンパニー」を社内新部門として立ち上げました。発足の背景を教えてください。

 目的は、デジタルを活用し、オンラインサービスの拡充をすすめることで、お客様が望む最良の金融サービスの提供を実現することです。野村グループの中核子会社である野村證券は、およそ100年の歴史を持つ、日本の証券会社の草分け的存在です。対面取引に強みを有し、預かり資産総額は約115兆円で業界首位です。オンライン口座の預かり資産額も約35兆円と業界首位なのですが、お客様のライフスタイルが急速に変化する中で、デジタルで対応しきれていない部分もあり、お客様のニーズに応えきれていない、もしくは当社の強みを活かしきれていないところが顕在化してきました。

 こうした背景から、当社ではオンラインサービスの拡充を経営課題と認識し、永井浩二代表執行役社長 グループCEO直轄の部門横断組織として、「未来共創カンパニー」を立ち上げました。当初4名の役員だけでスタートした組織ですが、組織や専門領域の枠に捉われず、デジタルイノベーション推進に役立つ知見を持つスタッフを、社内外から多数登用しています。

 ――発足当初から積極的にお客様のニーズに耳を傾けてきたそうですね。現状、一番の課題は何でしょうか。

 やはり、対面に強みがあったからこそ、デジタルの分野についてはお客様目線でもっとできることがあったのではないかと思います。

 そこで、当社の既存のサービスをいったん棚卸しして、俯瞰的に捉えた上で、お客様のニーズとすり合わせ、不足しているものや、改善すべきポイントを把握することにしました。その上で、当社のオンラインサービス拡充に意味のある施策にスピード感を持って取り組むことが重要と考えています。

 外部のパートナーとの協業にも積極的に取り組んでいます。今年8月20日には、LINEと共同でLINE証券を立ち上げ、サービス提供を開始しました。出資比率は、LINEの金融子会社が51%、当社が49%です。証券サービスとしての信頼性や安全性は当社が担保しながら、幅広い層になじんだコミュニケーションツールであるLINEを窓口とすることで、投資初心者の心理的なハードルを下げ、投資に興味を持つ方を増やすことなどが狙いです。

 最大の特長は、口座開設から株式売買までのほぼ全てのプロセスをスマートフォンで完結できる手軽さです。また、取引時間は午前9時から午後9時までと、昼間働いている方でも利用しやすい上、国内の主要な上場企業200社の株式を一株単位から売買できます。必要な機能を厳選したので、ユーザーインターフェース(UI)も極めてシンプルで使いやすくなっています。証券会社の発想では「あの機能も、この機能も」となりがちですから、ここまでシンプルなUIは設計できなかったでしょう。

 金融以外のフィールドで活躍するプレーヤーとの協業を通じ、当社のビジネスに新しい風を入れることは、金融の未来を変えるための、大きな一歩となるでしょう。

 ――「未来共創カンパニー」という名前に込めた意味を教えてください。

 お客様と共に、これからの金融サービスを創っていきたいという思いを込めています。私たちには、お客様に求められる金融サービスをつくる原点は、徹底したお客様目線にあるという思いがあるのです。国内外、社内外を問わず、組織やサービスを超えて共創することで、お客様にスピード感を持ってより良いサービスを提供できると考えています。

 その意味で、新規のお客様の獲得と同じくらい重要なのが、既存のお客様へのサービスの拡充です。中長期的なゴールとして、スマートフォン等のデバイスから、24時間365日、いつでも金融サービスを受けられるようなデジタル・ファイナンシャル・アドバイザーの実現を目指しています。これは、新しい金融デジタルプラットフォームの構築につながると考えています。具体的には、誰でも簡単に操作できる資産管理ツールの提供や、相談内容に応じ、人工知能(AI)とファイナンシャルプランナーが対応する、チャットボットを活用した相談窓口の運営等、対面で行なっていたサービスを進化させて実装するイメージです。

 「人生100年時代」や年金の話など、ご自身の資産のプランニングに対する認識が高まっている今、「貯蓄から投資へ」という流れを推し進めるためには、国や金融機関本位のサービスではなく、お客様が「投資をしてみたい」と思えるような情報やサービスの提供が必要です。今、改めて、お客様が何を望んでいるのか、真摯に耳を傾けるべき時と実感しています。こうした背景にあって、当社が対面取引を通じて築いてきたお客様とのつながりは、何物にも代えがたい財産です。デジタルイノベーションを通じて当社が実現したいものは、単なるオンラインサービスの拡充ではなく、お客様それぞれの要望に応じ、対面とデジタルのサービスをシームレスに活用できる環境構築です。

 そこに、長年、金融資本市場に軸足を置き、対面営業の強みに磨きをかけてきた当社だからこそ描ける、金融の未来像があるはずです。資産形成に対してワクワクするような気持ちを抱いていただき、テクノロジーを交えた新しい金融サービスを通じて、お客様のニーズに応え、超えていくことを目指して、今後もデジタルイノベーションの推進に取り組んでいきます。

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