フィンテック&レグテック・サミット2019特集

若年層のお客様との接点獲得を視野に スマホ完結型の少額短期保険販売を開始 第一生命保険の福辺浩嗣氏、第一生命情報システムの石津仁照氏、石井清崇氏に聞く

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 日本経済新聞社と金融庁が開催した「FIN/SUM(フィンサム)」に参加した企業・団体のキーパーソンに注目のテーマや最新動向などを聞いた。第一生命保険株式会社は、保険に先端テクノロジーを活用するインステックをさらに加速させる場として、2018年5月にDai-ichi Life Innovation Labを開設。その成果として、今年8月、スマートフォン完結型の少額短期保険を販売するWebアプリ「Snap Insurance」(以下Snap)の提供を開始した。プロジェクトの中心メンバーである、第一生命保険の福辺浩嗣課長、第一生命情報システムのチーフSE 石津仁照氏、石井清崇氏に、Snap Insuranceのねらいなどを聞いた。

――Snapには、どのような特徴があるのでしょうか。

 Snapは、保険の加入申し込みから、保険金の請求手続きまでを、スマホで完結できるアプリです。指をパチンと鳴らす(Snap)ように、気軽に保険サービスを利用してほしいという思いで開発しました。販売するのは、ゴルフやサーフィン、野外フェスといった様々なレジャーに伴う、ケガや他人への賠償といったリスクに備えるための、少額短期保険です。

 利用のメリットは大きく3つあります。まずは、必要な時だけ利用できること。手続きは保険利用開始の1時間前までに済ませればよく、24時間単位での利用が可能です。加えて、保険料は一番安いプランで1日81円からと低額です。2つめのメリットは、手続きがスマホだけで完結することです。加入申し込み時は、個人情報などをチャット形式で登録し、保険金請求時は、スマホ上でチャット形式の質問に答えていき、必要書類はスマホのカメラでアップロードするだけで手続きが完了します。スマホで加入できる保険商品はいくつかありますが、保険金請求までスマホだけで行える商品を提供しているのは、現状、大手保険会社では当社のみです。3つめは、シェア機能です。SNS等を通じ、自分の加入した保険の情報を友人などに紹介することができるので、仲間同士で情報をシェアすることで、一緒に安心してレジャーを楽しむことができます。

 保険料はクレジットカード払いのみの取り扱いですが、2020年をめどに、みずほ銀行提供の「J-Coin Pay」をはじめとする電子マネー等の様々な決済手段導入を検討しており、今後もユーザーの利便性を高めていきます。

 実際の保険商品は、少額短期保険業のスタートアップであるjustInCaseが提供、当社は保険販売代理店としてSnapを販売する仕組みです。

――開発のねらいを教えてください。

 最大のねらいは、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若年層に、保険に親しむ機会をもってもらうことです。働き方や価値観の変化に伴い、保険へのニーズも多様化してきました。そのような中、とりわけ現在の若年層に保険への関心を持っていただくことは当社の重要な経営戦略の一つとなっております。そのため、これまでの「もしもに備える」ために加入する保険の必要性は残しつつ、Snapでは発想を転換。「若者のアクティビティを応援する」といった、ポジティブなコンセプトで開発を進めました。スマホひとつで手続きが完結するという手軽さにこだわったのも、若者に浸透させるためです。

――現状、課題はどんなところにあると感じますか。

 当社にとって、若者をコアターゲットとするデジタルメディアを中心としたプロモーションに取り組むのはほぼ初めての試みで、非常にチャレンジングな課題です。もちろん将来的には、Snapによって保険の便利さを体感したユーザーが、生命保険にもポジティブなイメージを持ち、当社グループの保障性商品や貯蓄性商品を選んでくれたらという思いがありますが、当面の目標は、レジャーの時に支えてくれる存在として、Snapの利便性を多くの人に体感してもらうことです。現在、若者のアクティブな活動を応援する「ムチャしようぜ」というキャッチコピーを掲げ、SNSやデジタル広告などを交えた多彩なプロモーションを展開しています。

 中長期的な課題としては、Snapで得たユーザーデータをどのように活用し、将来のお客様サービスへつなげるかということがあります。技術面だけを考えるなら、保険業界においても、すでに様々なイノベーションが可能です。しかし保険商品は、極めてセンシティブな個人情報を取り扱う性格上、データの取得から管理、活用に至るまで、一段高い注意が必要です。そうした背景もあり、データの利活用やインステックの推進には、他の分野とは異なるハードルがあることは確かです。

 一方で、最新技術が切り拓く保険ビジネスの将来にも、大きな期待が寄せられており、最新技術を活用して予防や早期発見のためのサービスを充実させることで、国民の皆様のQOL(Quality of Life)向上に貢献できると考えています。すでに当社では、こうした取り組みの一つとして、認知症保険ご加入者さま向けにシリコンバレーのスタートアップの技術を活用し、目の動きを分析することで認知機能をチェックするツールを提供しています。完治可能な治療法がなく、予兆発見・発症回避が重要である認知症について、保険商品に予防サービスを付帯することで新たな価値提供を実現できました。他にも、保険会社とお客様とのコミュニケーションの改善や、お客様の利便性向上・新たなサービスの提供など、保険ビジネスに存在する様々な課題解決に、テクノロジーが貢献する余地は大いにあるはずです。

 時代が移り変わっても、お客様の「一生涯のパートナー」であり続けたいという、当社が創業以来抱き続けてきた思いは変わりません。Snapを通じて得た知見を、インステックの推進や新規顧客開拓といった課題に取り組む足掛かりとすべく、今後も地道な試行錯誤を続けていきます。

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