BizGateリポート/人材

採用に強い組織・人材とは 学術研究が示すヒント ビジネスリサーチラボ代表 伊達洋駆

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 求職者有利の「売り手市場」の状況が続く中、採用に苦しむ企業は少なくありません。経団連がいわゆる採用ルールを廃止したことを受け、採用活動時期の「自由化」や「通年化」といった変化も待ち構えています。こうした変化を前に、企業の人事担当者は「今後どのような採用活動を行っていけば良いのか」と頭を悩ませています。このコラムでは、混沌とした状況だからこそ、過剰に慌てず、流行に振り回されず、採用の原則に立ち返って、学術研究を頼りに本質的な採用を考えるヒントを提供できればと思います。

 採用活動で大切なことは、求職者の「入社後イメージ」を高める方法に関する原則です。「入社後に自分がどのように働くのか」を想像できているほど、企業に対する求職者の志望度が高まります。現在の売り手市場においても、今後の変化の中でも、こうした原則は適用可能性が高く、押さえておくべき重要なポイントと言えます。

 一般的に、人はこの先何が起こるかよく分からない状態、すなわち、「不確実性」の高い状態を避けようとします。不確実性の高い状況は不安ですし、リスクがあるように感じられるからです。この傾向は採用の世界にも当てはまります。

 これまでの研究によると、求職者は、入社後に自分が働く姿をイメージしやすい会社を選ぶことが分かっています。少しでも確実な未来が描ける会社を選ぼうとするのです。「入社後に自分が働く姿のイメージ」のことを、このコラムでは「入社後イメージ」と呼びます。

 求職者の入社後イメージを高める上で有益なのは、「仕事内容」に関する情報です。仕事内容を知れば「この会社に入ったら、こういう仕事をするのか」と、将来の自分の姿を推測しやすくなります。

 皆さんの会社では、求職者が入社後に従事する仕事は定まっているでしょうか。それとも、配属されないと全く分からない状況でしょうか。もし入社後の仕事内容が明確であれば、それをしっかり伝えることに労力を投じましょう。

 しかし、様々な部署を経験しながら幹部を育成する企業や、詳細に職務内容を言語化していない企業など、入社後に提供する仕事内容をそこまで定めていない企業は少なからずあります。そのような会社は、どのように採用を進めれば良いのでしょうか。

 ■新卒、採用担当者で企業をイメージ

 入社後の仕事内容を詳細に伝えられない状況において、入社後イメージを高める突破口になるのは「採用担当者」です。先行研究によれば、仕事内容について情報を持たない求職者は、その会社に所属する「人」に目を向けることが明らかになっています。

 なかでも、求職者が密にやりとりする採用担当者の影響力は大きいでしょう。海外で行われたインタビュー調査では、会社を選んだ理由の3分の1以上が採用担当者でした。筆者が学生に行った調査でも、企業選びの意思決定に影響を与えていたのは採用担当者です。

 何故、求職者は採用担当者に注目するのでしょう。採用担当者の様子から、その会社の社風や社員の人柄を推測したり、採用担当者が求職者に対応する方法をもって、将来、自分が社員から受ける対応を想像したりできるからです。

 人の観察を通じて会社の内実を想像する傾向が強いのは、実務経験の豊かな「中途採用」の求職者よりも、実務経験のない「新卒採用」の求職者の方です。したがって、採用担当者の影響が特に大きいのは新卒採用と言えます。

■カウンセリングで志望度上昇

 では、どのような人を採用担当者に選べばよいのでしょうか。また、採用担当者は求職者とどのように接すれば良いのでしょうか。

 まず、採用担当者の人柄が良いと求職者に認識されれば、求職者は「この会社の仕事をやってみよう」と思うことが分かっています。特に、温かさや熱意を感じる採用担当者は、求職者に良い印象を残します。

 とはいえ、採用担当者の人柄のみが採用活動の成果を高めるわけではありません。採用担当者の特性に魅力を感じたからと言って、会社や仕事に対する魅力づけにつながるとは限らないと指摘する研究者もいるほどです。

 採用担当者の行動もまた重要です。採用担当者の行動の中でも、求職者の動機形成に一役買うのは「カウンセリング行動」です。

 採用担当者が求職者のキャリア相談にのると、採用担当者に対する共感が高まり、会社に対する印象も良くなります。筆者の行った学生対象の調査でも、採用担当者のカウンセリング行動は志望度を上昇させる効果がありました。

 特に新卒採用の場合、学生は実務経験がないため、入社後のキャリアを独力では思い描きにくい状態です。採用プロセスにおいてキャリア相談を行うことは、自社にとって有益であると同時に、学生にとっても有益なのです。

【11月12日(火)18時】特別セミナー「採用力が企業の将来をつくる」
企業の課題解決を支援する日経BizGateは東京・大手町の日経本社で無料セミナーを開催します。伊達洋駆氏のほか、永島寛之氏(ニトリホールディングス)、杉浦二郎氏(モザイクワーク)が講演するとともに、参加者の皆様からの質問に答えます。詳細・申し込みはこちら

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。