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ミャンマー成長軌道へ 消費市場に注目 日経BizGateセミナー「開かれたミャンマービジネスのゲート」

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 ミャンマーに対する外国企業の関心が再び高まっている。2018年に施行した「新会社法」でグローバル企業がより進出しやすくなったことや米中貿易摩擦を背景に人件費が比較的安価なことが評価されているようだ。日経BizGateが10月3日に東京・大手町の日経本社で開催したセミナー「開かれたミャンマービジネスのゲート」には多くのビジネスパーソンが参加した。グローバル・マーケティングが専門の大石芳裕・明治大学教授が行った基調講演「ミャンマービジネスの可能性と注意点」を再録する。

 「新会社法」施行などで投資先としてのミャンマーに関心が高まっている。軍の影響力が残るなどビジネスをするうえではなお制約があるものの、経済成長率の高さは魅力的に映る。

 まずミャンマーの現状をマクロの視点からみてみたい。ミャンマーは農業国といわれているが、国内総生産(GDP)に占める農業の割合は低下し、工業、サービスの割合が増加している。

 主な輸出品目は首位の既製服以外はエビなど1次産品が中心だ。一方、輸入品目は首位が自動車・部品、2位が機械類・部品となっている。輸出相手国としては中国、タイ、シンガポールが多く、日本は4位にとどまる。ミャンマーはもっと日本との関係を強化したいと考えている。

 他の東南アジア諸国連合(ASEAN)同様、ミャンマーも外国からの投資をテコに工業化を進め付加価値の高い製品をつくり輸出したいという意向がある。しかし、これまでのところ外国投資は内需を狙ったものが中心だ。

 外国企業からの直接投資を分野別にみると、オイル・ガス、電力、交通・通信といったエネルギー・インフラ関連が多い。そのほか不動産、ホテル・ツーリズムといった分野も目立つ。製造業も含め足もとでは内需を狙った分野にチャンスがある証左といえるだろう。

 国・地域別でみると、シンガポール、中国・香港が多い。日本企業はティラワ工業団地を中心に投資をしているが、投資額はそれほど大きくはない。中国が「一帯一路」構想で戦略的に投資しているのに比べ、存在感は薄いのが実情だ。

日本企業の戦略類型

 これまでミャンマーに進出した代表的な日本企業を戦略別に分けてみると図のようになる。先行投資型は婦人服製造・小売りのハニーズと自動車のスズキ。ハニーズは生産体制を拡大してきており、多くの雇用をうみだしている。製品も単純なボトムスからより複雑なブラウスなどに幅を広げている。

 スズキは1998年、経済制裁下の中、ミャンマー工業省と共同で事業を始めた。10年間の契約でピックアップトラックやワゴン車、二輪車を生産(完成品に近い車両を持ち込み組み立てるSKD方式や部品ユニットを輸入して組み立てるCKD方式)。累計6000台の四輪車を生産し、人材も育ててきた。2010年に会社は解散したが、社員を現地に残し政府と交渉を継続、2013年に単独での工場操業にこぎつけた。2018年1月にはティラワ工業団地で操業を開始した。現在、月1000台以上を生産している。同年には世界戦略車のスイフトも発売。広告に日本とミャンマーで活躍する俳優・森崎ウィンさんを起用し、現地消費者に人気を博している。

 現地需要隙間対応型は例えば段ボール工場を運営している王子ホールディングスが挙げられる。道路事情が悪い同国では質の良い梱包材が求められている。地元有力企業活用型はキリン。現地ビール最大手のミャンマー・ブルワリーなどを買収。生産設備を日本製に刷新し、主力ビール「一番搾り」の生産・販売も始めた。「一番搾り」と現地ブランドの両方で市場を開拓する総合的な戦略をとっている。

 次に消費市場としてのミャンマーをみてみたい。ミャンマーの市場調査や進出支援を手掛けるMSR(ミャンマーサーベイリサーチ)によると、自動車の新車市場は昨年1.8万台。まだ小さいが、伸び率は高い。右ハンドル車の輸入規制があり、新車市場は今後も伸びていくとみられる。シェア首位のスズキの場合、銀行と提携し日本円ベースで世帯月収5万円以上でローンを組めるようにしている。この世帯はローワーミドルの少し上の層からが対象となり、ヤンゴンに住む人の3~4割に相当する計算になる。ヤンゴンの人口は約750万人なので、300万人の潜在市場があるという見方ができる。

 小売店では外資規制の緩和を背景に、外資系の大規模な商業施設が開業し富裕層や上位中間層の人気を集めている。ただ、こうした大型商業施設の商品の価格は高いという声が多い。ミャンマーに限らず途上国で商品を販売する際にはチャネル戦略がカギを握る。ブランド確立と利益確保のためには、大型商業施設と現地の小売店の両方をうまく活用していく必要がある。

(構成:町田猛)

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