日経SDGsフォーラム

百薬の長 SDGsに通ず 令和を導く次代の「医食同源」

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 肩肘張らずに、自然体に。そんな企業活動を通して社会課題の解決に役立ち、社会的価値と経済的価値を同時に創出することができたら、こんな素晴らしいことはない。そして健康、地域コミュニティー、環境を守って、よりよき方向に社会をいざなう企業こそが新しい時代で生き残れるはずだ。生活者の近いところにいる企業はなおさらだろう。その一挙手一投足に関心が集まるからだ。

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発酵技術生かし健康な社会紡ぐ

 「酒は百薬の長」。漢書にある酒の効能をうたう有名な言葉だ。今でも時折、耳にするが、アルコール飲料への世間の視線は大きく変わった。そこでキリンホールディングスはこの諺(ことわざ)に新しい価値を吹き込もうとしている。長年のビール製造で培った発酵バイオ技術などをもとに健康領域を強化することに舵(かじ)を切る。酒類・飲料事業と医薬・バイオケミカル事業を中核とするユニークな企業体へと姿を変えつつあるのだ。「健康とおいしさ」を提供することで、令和時代の「酒は百薬の長」を目指す。通底するのはSDGsの考え方であり、共通価値の創造(CSV)への取り組みだ。

 「医食同源」。キリン風に読み解けばこうなる。「食から医にわたる領域での価値創造」。この文言は中期経営計画に盛り込まれており、「食領域」(酒類・飲料事業)のさらなる収益力強化と「医領域」(医薬事業)での飛躍的な成長により、盤石な成長の基盤を築く。将来の成長機会・事業領域の拡大に向けて「医と食をつなぐ事業」を立ち上げることが目標だ。その芽は出ている。キリンとグループ企業の小岩井乳業、協和発酵バイオの3社が共同研究しているプラズマ乳酸菌は元気な体を作ることに役立っている。医薬品として販売するのではなくヨーグルト、サプリメント、飲料などに含まれている。

 「品質本位」。キリンの伝統的経営理念の1つで、プラズマ乳酸菌は酵母のビール発酵から乳酸菌、食のライフサイエンスまで幅広い領域を研究対象とし、約30年の研究の歴史から生まれたものだ。

 「堅実経営」。長期的な視点で取り組めるのもやはりこの伝統的経営理念があってこそだ。価値創造のための基盤であり、持続可能な企業としての必要十分条件に違いない。口にするもの、命に関わるものに携わるキリンには未来をもっとより良くする責任がある。

 「お客様本位」。キリングループ社員がよく使うこの言葉はSDGsの理念と自然と向き合っていることになる。(編集委員 田中陽)

全17目標カバー 社会の幸せに貢献――

 酒類、飲料を取り巻く経営環境は楽観できるものではありません。アルコールや糖分の摂取を巡っては必ず健康に関する議論が浮上します。

 そこでキリンホールディングスは酒類メーカーの責任も果たした上で健康、環境、地域社会を重点課題として社会課題に取り組み、お客様の幸せな未来に貢献する長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を今年に入って策定しました。

 社会と価値を共創し持続的に成長するための指針で、酒類メーカーとして「全事業展開国でアルコールの有害摂取の根絶に向けた取り組みを着実に進展させる」ことに注力します。これはSDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)と同17(パートナーシップで目標を達成しよう)にあたります。SDGsが定めた目標年よりも3年早く実現を目指す取り組みです。飲料の容器となるプラスチック容器の削減は喫緊課題として対応していきます。

 経済的価値を創出するものとしては東日本大震災で大きな被害を受けた東北地区で農業法人を作り、ビールの苦みや香りのもとになるホップの栽培農家の支援を始めています。国産ホップの品質向上と安定調達することで生産地域の活性化に貢献。27年までに100トンの調達が成果目標で今、人気のクラフトビールの原材料として使われています。ビール事業成長のためのクラフト戦略につなげることで経済活動に乗せることができました。ワイン事業でも日本でブドウの収穫量を長期的に増やしていきます。

 酒類・飲料と医薬・バイオケミカルなど幅広い領域を持つ私たちの事業をつぶさに見ればSDGsが掲げる全17の目標のほとんどをカバーしていることに気が付きます。経営陣だけでなく、製造、営業、研究、物流などどの分野でも同じ目線でSDGsを意識することを心がけます。それが未来への責任だと考えています。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、経営、CSR、CSV、ESG、環境問題、SDGs

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