「働き方改革」 先行する中小、挑戦するベンチャー

「子育て第1、仕事第2」で成長を維持 日本政策金融公庫総合研究所主席研究員・井上考二

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支え合うフリーランスの女性たち

 エムディーシー(MDC、大澤美帆社長、東京都渋谷区、従業者数3人)は、テレビ番組やCMの映像から商品のプロモーション映像などを制作する映像会社。スタッフはフリーランスを多用しており、ディレクターやカメラマン、映像デザイナー、CGクリエーター、ライターなどさまざまだ。同社ではフリーランスの女性を集めたMDC女子部を設けている。

 同社が得意としているのは、女性顧客向けの映像という。主婦をターゲットとした商品を宣伝する映像や、女性アイドルが女性ファンの獲得を狙った映像などで、売り上げの半分を占める。制作に関わっているのがMDC女子部のメンバーだ。

 こうした映像には「かわいい」「おしゃれ」といった要素が欠かせない。大沢社長は「映像をキラキラと輝かせる加工でも、女性目線で制作する映像では明らかに感性が異なってくる」と話す。MDC女子部は同社の経営に重要な役割を担っているとしている。

 MDC女子部をつくった理由について、大沢社長は「長時間労働が常態化している映像制作の現場にいる女性が、結婚や出産をした後も働き続けられる環境を整えるため」と言う。現在所属しているのはディレクター、映像デザイナー、サウンドデザイナーら8人。4人が既婚者で3人が子育て中だ。

 大沢社長がメンバーのスケジュールを把握している。「子育て優先」で、無理して新規の依頼主の仕事を受けることはせず、継続的に依頼してくれる取引先を優先して仕事量をコントロールしている。

 家庭の事情などで急に仕事ができない状況が生じてもフォローできる体制を整えた。子どもの発熱などで仕事に行けなくなったときは同じスキルをもつほかのメンバーが代わりに現場に行ったり、打ち合わせの予定が急に入ったが子どもを預けられない場合に手の空いているメンバーが面倒をみたりする。

 同社では、子どもを連れて取引先と打ち合わせができるよう事務所を開放している。子どもを誰かに預けられない場合でも、仕事を犠牲にしなくてすむようにとの配慮からだ。普段は1人で活動するフリーランスでも、こうしたサポートがあるおかげで、働きやすくなる。「現在では働き方に悩む同業者から相談を受けることも少なくない」と大沢社長。

 企業にとって、売り上げや利益の拡大は欠かせない。大志建設は手当として利益を従業員に還元しているし、エムディーシーは売上を伸ばすことと同等以上に生活も重要視している。それが新たな顧客層の開拓し成長の維持につながっている。

 中小・ベンチャー企業は、利益や規模の拡大のみにとらわれることなく、経営者が望む働き方や理想を追求できる一面も合わせ持っている。多様な働き方の実践にもよりスピーディーに取り組めるだろう。

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