間違いだらけの新事業プロジェクト

イノベーションの定義は社外に求めてもムダ、自分たちで定義しよう アイディアポイント 代表取締役社長 岩田徹

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 国内市場の成熟化、業界内外の企業を巻き込んだ競争の激化により、多くの企業では現在、新規事業の創出が重要な課題になっています。それに伴い、ここ数年、「イノベーション推進」の名前を冠した部署やプロジェクトが増え、多くの人が配属されるようになりました。専門外である「イノベーションの推進」が仕事になったら、みなさんはどうしますか?本連載では、実際に、イノベーションの推進を仕事にした人が何に困り、それに対してどのように対処すべきなのか解説していきます。

◇  ◇  ◇

 Aさん(大手製機械メーカー勤務、30代)は工学部出身の現場主任。入社以来、主に工場の生産管理を担当してきましたが、ある日、予想もしない辞令が発令されます。経営戦略部に新設されたイノベーション推進室へ配属になったのです。新たな業務は「会社のイノベーション推進」でした。

 Aさんには、生産現場に関する知識はありましたが、管理職の経験はなく「イノベーション推進」という業務についてもイメージがわきません。イノベーション推進室をつくった役員に、想定している業務内容を聞きに行きましたが、「イノベーションを起こすこと」だと言われるばかり。最後には、業務内容を考えるのも仕事のうちだと言われ、何から始めようかと困り果ててしまいました。

 とりあえず、上司や他の同僚とも話し合い、半年間は、社外のイノベーション関連セミナーに参加したり、外部のコンサルタントに話を聞いたりしながら、自分たちで情報をまとめ、見よう見まねで社内啓蒙(けいもう)活動の一環として社員向けセミナーを実施。併せて、新事業をスタートしようとして、社内提案制度を始めたものの、どうも盛り上がりません。

 「考えれば考えるほど、まだ調べること、まだやることがあるような気がする…。本当にこれでよいのか」。Aさんは次第に自分のやってきたことに、自信が持てなくなってきました。時間がたつと社内からは「あの部署は楽しそうだが、本当に成果が上がっているのか」「これで本当に新しい事業は生まれるのか」という声が出てきます。Aさんもサボっているつもりはないものの、そもそも「イノベーション」ってなんだろう、人によって言葉の使い方や意味が違いすぎると感じるようになりました。

「イノベーション難民」にならないために必ず目的(Objective)とゴール(Goal)を確認

 上記は、私たちアイディアポイントのコンサルティング・研修を受けていただく方々の悩みを事例風にまとめたものです。特定の企業の様子を指したものではありませんが、多くの会社が似たような悩みをお持ちです。

 新規事業の立ち上げをはじめとして「新しいことに取り組む」ことは、とても楽しいものです。Aさんのように、比較的、制約が少ない場合、自分が取り組む範囲も広く、可能性も無限にあるように感じ、非常に心躍るものがあると思います。「イノベーション」という言葉には、かっこいい響きがあり、「よし、イノベーションしよう!」と思いついたものからとりかかりたくなる気持ちもよくわかります。

 しかし、実際に「とりあえず」活動をスタートしてしまうと、しばらくしてから、Aさんのように手詰まりの状態に陥ることは珍しくありません。そうなった場合には、いったん、落ち着いて、状況を整理し、進むべき方向を確認してから再スタートする必要があります。

 原因は、「イノベーション」という言葉を定義せずに、闇雲に取り組んだことです。とりあえずのアイディアを出すことはできても、それが正しい/間違っているの判断ができないため、結果として判断ができず、どれだけ取り組んでも終わることができません。そんな状況で、さらに、「仕事としてイノベーションを推進しなくてはいけない」というプレッシャーが強くなるため、すっかり疲れてしまい、自分が進むべき方向を失ってしまって「イノベーション難民」になってしまいます。

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