5Gビジネス

「5G」がもたらす製造業の革新 ボッシュ、デンソー、コマツ... 野村総合研究所 亀井 卓也

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工場を飛び出して5Gを活用するコマツ

 ノキアのCEOであるラジーブ・スリ氏は、MWC2019においてローカル5Gの有効性に言及しました。これからの10年で膨大なローカル5Gの導入事例が創出されるという楽観的な見通しを語るとともに、ローカル5Gの先進的リーダーとしてドイツのBMWと日本のコマツを挙げました。

 BMWはここまでに説明したようなインダストリー4.0の先進企業ということですが、コマツについては工場の生産プロセスではなく、完成した機械を鉱山の採掘現場などで利用する際の5G活用です。これも製造業のデジタルトランスフォーメーションといえるでしょう。

コマツは2017年5月に、NTTドコモと5Gを用いた建設・鉱山機械遠隔制御システムの開発に向けた基本契約を締結しました。同社は1998年時点ですでに自社機械の稼働状況管理システム「KOMTRAX」を開発しており、他にもダンプトラックの無人運転システムや施工現場のデータ見える化といった多様なソリューションを導入していました。

 ここで用いられる通信に5Gを活用することにより、リアルタイム性を高め、見える化だけでなくフィードバック制御を行うことを目指しています。

 2018年1月には建設機械・鉱山機械の遠隔制御システムの実機を公開しています。これは、視野を覆う5枚のディスプレイとコントローラー群に囲まれたコクピットから、遠く離れた建設・鉱山現場にある機械を操縦・制御するというものです。

 機械側に備え付けられた高精細カメラによる動画をストリーミングで伝送することにより、実際に搭乗している場合の体感にできるだけ近づけられています。5Gによる機械の遠隔操縦・制御によって、建設・鉱山現場の人手不足や、現場業務に伴う危険を解消しようとするアプローチです。

 ここではコマツとNTTドコモの例を取り上げましたが、建設機械・鉱山機械の遠隔操縦は5Gの典型的な活用用途と見込まれています。大林組はKDDIと、大成建設はソフトバンクと組んで実証およびソリューション開発を進行中で、各社とも5Gの商用サービスが開始する2020年ごろの現場導入を目指しています。

東芝が進める「予防型」サービス

 2019年4月には、東芝とKDDIがIoT分野での提携を発表しました。5Gの活用も掲げられています。工場運営やインフラ設備のオペレーションを通じて得られた現場のデータを活用してAIを強化し、各工場や各設備に最適化されたモデルを構築。それをエッジコンピューティングで処理することで、処理の効率化と低遅延化を図るというアプローチです。

 また、設備のモニタリングの具体的な事例として、東芝エレベータの保守サービスを挙げています。エレベーターにセンサーを組み込み、故障の予兆を検知して、メンテナンスを「対応型」から「予防型」に転換するというものです。エレベーターは最初に装置を販売して、その後メンテナンスサービスを都度提供するというビジネスモデルですが、予防型サービスを提供することで、製品の販売後も継続的に収益を上げられる「リカーリング型(循環型)」ビジネスモデルを実現することを目指しています。

(終わり)

亀井 卓也 著 『5Gビジネス(日経文庫)』(日本経済新聞出版社、2019年)、「第3章 ビジネスをどう変えるのか」から
亀井 卓也(かめい・たくや)
野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 テレコム・メディアグループマネージャー。東京大学大学院工学系研究科卒業後、2005年野村総合研究所入社。現在は情報通信業界における経営管理、事業戦略・技術戦略の立案、および中央官庁の制度設計支援に従事。
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キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、技術、製造、プレーヤー、イノベーション、AI、IoT、ICT

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