BizGateリポート/経営

イノベーションはどこまで「管理」できるか 清水洋・早稲田大商学学術院教授に聞く(下)

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 ■21世紀によみがえるケインズの「アニマル・スピリット」

 「ゾーリの能力を評価するところがきちんとあり、そこに移っていったのです。マーケット・メカニズムが上手く機能していたと言えます。日本では、個人に蓄積した専門知識が活かされるかどうかは、トップマネジメントに依存します。能力に応じて同じような処遇で同じような仕事ができるようなリエンプロイメントコンディションを良くしていくことが必要でしょう」

 「研究者を短いサイクルで評価すると、新規性の高いチャレンジを回避させてしまいます。企業社会で推奨されているホウレンソウ(報告・連絡・相談)やカクレンボウ(確認・連絡・報告)の励行は、この場合適しません。研究開発のパフォーマンス研究では、短期的に成果を上げるようにプレッシャーをかけていると、社員はリスクの低いものに向かっていく傾向が確認できます」

 ――ただ人材の流動性を高めると、自社の優秀な研究者もどんどん出て行ってしまいます。

 「だからこそ、企業は高い収益性が見込まれる分野にきちんと経営資源を移しておくことが大切です。また、『他の組織にいつでも移れるがここでの仕事が好き』と働く人に思わせる魅力的な組織作りが経営者の重要なミッションになります」

 ――しばしば「イノベーションを起こすには危機感が必要だ」と言われます。 危機意識をテコにして、不確実な新分野に経営資源を投下しやすくなるというわけです。

 「もちろん危機に陥らなくても、将来のイノベーションのタネを準備しておく必要はあります。その点では、不確実性の高い中でも、高い収益性が見込まれるような領域を見出す(創り出す)嗅覚は大切です」

 「かつてケインズが経営者の『アニマル・スピリット』が企業にとって大切なものと指摘したのは、代表作の『雇用・利子・および貨幣の一般理論』(1936年)の中ででした。アニマル・スピリットはその後はあまり注目されてきませんでしたが、最近ではまた光が当てられています」

 「1802年に火薬製造からスタートした米デュポンは、化学事業を経て現在はバイオサイエンス企業です。20世紀におけるコンピュータ―業界の絶対王者だったIBMは、21世紀にはソフト及びサービス産業に転換していきました。伝統ある古くからの看板のもとで、常に若々しい体を保つ判断が、経営トップに求められます」

(聞き手は松本治人)

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