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イノベーションはどこまで「管理」できるか 清水洋・早稲田大商学学術院教授に聞く(下)

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20世紀の「中央研究所」ブームが示した理想と現実

 ――では企業はどのようなスタンスでイノベーションを管理すべきなのでしょうか。

 「19世紀後半から、米企業は研究開発機能を相次ぎ組織化しました。イノベーションのタネを企業内部で管理しようとしたのです。日本でも1961年のソニーを皮切りに、中央研究所ブームが起きました。当初は世界を大きく変革するようなアイデアが期待されました」

 「素晴らしい成果も生み出されましたが、トータルでみるとあまり思ったような成果が出てはきませんでした。自社のビジネスに寄り添ったり、取引先に配慮したものが多かったのです。そのため、中央研究所を縮小、閉鎖するケースが相次ぎました。これは日本に限ったことではありません。世界的な傾向です」

 「イノベーションは未経験のことを進めるため不確実性が付きものですが、研究プロジェクトの管理計画には障害となります。米ジョージア工科大とわれわれの共同研究では、セレンディピティー(予想外の発見)に対して研究とマネジメントの分業が明確になされていると、偶然の発見の深掘りがされにくいことを確認できました」

 ――ベテランの研究開発者らによると、プロジェクトを進めるうちに「偶然の発見」はしばしばある、しかも重要だと言います。ただ目の前に大きなイノベーションのタネがあっても、その重要性をマネジャーに説明し納得してもらうことは、なかなかスムーズにはいかないそうです。

 「組織的に管理すると、イノベーションが野生性を失います。今日では本来の性質を発揮する環境をできるだけ保全して、イノベーションのタネを取り入れる、いわばイノベーションの飼育から放牧へと企業の姿勢はシフトしてきています」

 ――放牧型の対応のひとつが「オープンイノベーション」ですね。

 「米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、今まで繋がりのない外部企業の技術を積極的に取り入れようとしています。大切なのはよい製品となるかどうかで、どのメーカーの技術かは顧客に関係ないという姿勢です。スポーツウェアの米アンダーアーマーは毎年イノベーションコンベンションと呼ぶコンペを催しています」

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