ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

人気商品生み出すUSJマーケターのリーダーシップ USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

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 私たちは、ハロウィーンの主要消費者である若い女性に調査を実施しました。そこで彼女たちの主要なニーズは、仮装することによって普段は出せない自分を解き放つことだと再認識しました。このニーズは、前述した「パレード・デ・カーニバル」ですでに満たしていました。同時に、私たちは彼女たちも気づいていない深層心理に隠された課題が存在していることを発掘しました。それは、「本当の自分を出せなくて、実はとても窮屈」に感じているという課題です。これは、友人や恋人と一緒にハロウィーン・レジャーを体験しても、同伴者と同じように楽しまなくてはいけないと気をつかって、自分自身は本当に楽しみきれていないという心理です。この本質的な課題を解決するために、「周囲を忘れて大絶叫してしまうホラー体験」が強力な解決策になると考えました。そして、この仮説を検証するために定量的な需要調査を実施しました。また、イベントを無料で実施した場合、来場者数はどの程度増加するのか、その増加と付随した入場料収入などによって、イベントの無料化を補えるのかも併せて測定できるように調査しました。


 調査終了後、改めて社長や関係部門に私たちの考えを説明しました。ハロウィーンを通じて私たちがなりたい姿、それを実現するために、いま私たちが解決すべきターゲット層が抱えている本質的な課題は何か、イベントを無料化にした場合の収支はどうなるのか、戦略を変更せずにこのままの状態を続けていたらビジョンが達成できないことなどを説明しました。そして、社内関係者が抱えている健全な懸念が実際に発生するリスクは極めて少ないことも、調査結果を基にした論理と自信と情熱を持って説明しました。

 集中的な議論の末、最終的には関係者全員が納得してくれました。全員が私たちマーケターを信頼し、「この戦略で挑戦しよう!」と共にビジョンを目指してくれる状態になったのです。その後の関係部門はとても頼もしかったです。夜のイベントを無料にした際の自部門の課題を自ら設定して、その解決策をクリエイティブに考えてくれました。大幅にゲストが増加した際の混雑コントロール、イベントが持つべき収容能力、さまざまなアトラクションを確実に完成させるためのタイムライン管理、イベントをさらに盛り上げるための物販や飲食の商品開発などです。こうして「ありえないワクワクとドキドキ」をゲストに提供するために、各部門がそれぞれの領域で躍動し全社一丸となり挑戦していくことになりました。

 結果、ハロウィーン・イベントの純増集客は約5倍となり、驚異的なゲスト満足度を達成しました。私たちのビジョンに大きく近づいた結果が生まれたのです。

リーダーシップは習慣にすることが最も重要

  リーダーがすべき3つの行動(ビジョンを描く、課題を解決する、フォロワーを獲得する)は、習慣にすることが大切です。一義的には、市場により大きな価値を提供するためには、より大きなビジョンが必要だからです。そして、それを達成するための課題解決とチームメンバーも必要だからです。

 私たちユニバーサル・スタジオ・ジャパンのマーケターは、2011年以降も私たちのハロウィーンを「確固たるメッカ」にするために、リーダーシップを発揮し続けより大きな価値の創造を続けています。結果としてこの8年の間、さまざまなアトラクションを導入してきました。ゾンビとモンスターにまみれて熱狂しながら踊れる「ゾンビ・デ・ダンス」、バイオ・ハザードをテーマに迫り来るゾンビやリッカーなどから生還に挑む「バイオハザード・ザ・エクストリーム」、ファッショナブルで美しすぎるホラー体験「大人ハロウィーン」などです。そして、11月4日まで展開している今年の「ユニバーサル・サプライズ・ハロウィーン」は、大人から子どもまで1日中楽しめるように、「絶叫ハロウィーン」「大人ハロウィーン」「“こわかわ”ハロウィーン」の3つのテーマの下に、ハロウィーン史上最多となる13の期間限定アトラクションを展開しています。

 実を言うと、これらのイベントは20代のマーケターが中心となりリーダーシップを発揮してきている結果でもあります。私たちは一定のトレーニングをした後に、新卒社員でも間もなくして商品開発のリーダーにします。これは、マーケターに欠かせないリーダーシップを早い段階から習慣にするという意図があるからです。彼らは、経験豊富な上司に相談しながらリーダーとしての行動を習慣にしていきリーダーシップを身につけ、こうしたより大きな価値のあるイベントやアトラクションを開発しているのです。

 私が個人で兼業している投資家としても、マネジメントや社員がリーダーシップを発揮している企業は有力な投資対象になります。それぞれの立場でリーダーシップを発揮している企業は、企業が生きいきしていて結果的に生産性が大きくなる傾向が顕著にあるからです。

  次回は、マーケターにとって大切な「情熱」ついてお話しします。

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秋山 哲(あきやま さとし)
1973年群馬県生まれ。マーケター、個人投資家。中学校卒業後に大工として働き、19歳の時に大学入学資格検定を取得。21歳で渡米しニューヨーク大学商学部卒業。25歳の1999年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン開業のために現在の合同会社ユー・エス・ジェイに入社。数々のプロジェクトをけん引し成功をおさめる。現在は同社のマーケティング・ディレクター。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。現在は株式の長期集中戦略を展開し、10年間で元本60倍の実績を残す。著書に『お金からの解放宣言~秘刀の投資法とお金の在りかた~』(かんよう出版)

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