ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

人気商品生み出すUSJマーケターのリーダーシップ USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

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 前回は、市場に価値を創造・伝達するマーケターになるために大切な「考える力」について説明しました。今回は、マーケターに大切な3つの力であるT (Thinking<考える力>)、L (Leadership<リーダーシップ>)、P (Passion<情熱>)の2つめの「リーダーシップ」について説明していきます。

マーケターにリーダーシップが欠かせない理由

 マーケターの役割は、消費者や顧客が商品を購入する理由をつくることであり、商品が売れやすくなる環境をつくることであるのは前回お伝えしました。また、マーケターが価値を創造・伝達するのは困難な状況にあることもお伝えしました。それは、各部門の統括機能としてのマーケティングの概念が十分に浸透していないこと、日本はすでに必要なモノが世帯に行き渡っている中、人口減少などの将来不安から積極的な消費が見込みにくいことの2つが理由です。こうした状況において価値を創造することが現在のマーケターに必要とされていますが、価値を創造するためには関係部門の協力が欠かせません。価値の創造は、マーケティング部門も含め社内の関係部門がそれぞれの役割を果たすことによってのみ実現するからです。

 そもそもリーダーシップとは何でしょうか。私たちは、「自らが起点となってチームとしての結果を出す行動」と捉えています。そして、リーダーが取るべき行動は3つに集約されます。ビジョンを描くこと、自らが動くこと、そしてフォロワーを獲得していくことです。ビジョンとは、自分たちがなりたい姿であり、その達成を想像するとワクワクするものです。自ら動くということは、ビジョンを達成するための課題を解決する行動です。そして、フォロワーを獲得するということは、関係者にビジョンを共感してもらい、最終的にはビジョン達成のために自らの領域でリーダーになってもらうことです。

 私たちユニバーサル・スタジオ・ジャパンが現在展開しているシーズナル・イベント「ユニバーサル・サプライズ・ハロウィーン」を例に、私たちマーケターがどうリーダーシップを発揮しているのかを説明していきます。

ビジョンを描いて、課題を解決して、仲間をつくる

 現在の国内ハロウィーン・レジャー市場は、バレンタインに匹敵する規模にまで拡大し、レジャー文化として根付きました。この文化形成に私たちは大きく貢献していると自負しています。

 まだハロウィーンが現在の5分の1以下の市場規模だった2011年当時、私たちはハロウィーン・イベントの大幅な拡大にチャレンジしました。それまでは、仮装したゲストと一緒に陽気に盛り上がれるカーニバルをテーマにしたパレード(「パレード・デ・カーニバル」)がハロウィーン・イベントの中心でした。夜の一部には、怖いゾンビが本当に襲いかかってくる恐怖体験の有料イベントを実施していました。私たちは、この夜の体験を無料イベントにして、100体以上のゾンビをパーク中に放ち、恐怖体験をパーク全体で提供することを試みました。クオリティーが極めて高いとても巨大なお化け屋敷のイメージです。この構想を社内に提案したところ、社長をはじめとした全ての関係者が難色を示しました。そもそも、ハロウィーンは仮装して楽しむものというイメージがとても強く、恐怖体験はごく限られた層にしか受けないと認識していたからです。ゆえに、夜に提供していた恐怖体験も週に数回のみ、一部の限られたエリアのみで展開していたのです。

 私たちマーケターは、こうした懸念を真摯に受け止めました。これまで一定の成功を収めているイベントをあえて大幅に変更することに対する懸念は自然の受け止め方だと理解したからです。ただ、私たちには危機感がありました。この危機感は、私たちが掲げたハロウィーンのビジョン達成に対する危機感です。私たちは、ハロウィーンのビジョンとして、「ゲストにありえないワクワクとドキドキを提供することによって、ハロウィーンのメッカになる」を掲げていました。当時のハロウィーン市場はブレーク寸前の状態でしたが、市場が急拡大する前にUSJのハロウィーンを浸透させ、ビジョンの状態に近づけることが重要と考えたのです。こうした危機感を抱えた私たちの当時の課題は、私たちの戦略を完遂すれば私たちのありたい姿に近づけるということを社長や関係部門に納得してもらうことでした。

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