5Gビジネス

「5G」を支える技術革新 3つの利用シナリオをバス輸送にたとえる 野村総合研究所 亀井 卓也

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 「5G(ファイブジー、第5世代移動通信システム)」がもたらす変化を知るには、そもそも5Gとは何かを理解する必要があります。4Gから5Gへの進化は、技術的な意味での進化ですので、5Gを理解するにはその技術を理解する必要があります。詳細には触れませんが、その一端をご説明しましょう。

 前回にて移動通信システムの歴史において、標準化という作業が行われてきたことに触れました。各国の通信業界関係者で国際標準を策定するためには、まず「5Gとはどういうことを実現するものか」というビジョンを合意する必要があります。

 通信に関する国際標準化団体である国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)の無線通信部門であるITU-R(ITU Radiocommunication Sector)は、標準化に先立って5Gのビジョンを検討し、2015年9月にビジョン(ITU-RM.2083)を発行しました。その中で、5Gの3つの利用シナリオが示されています。

 「(1)高速大容量通信(eMBB:enhanced Mobile BroadBand)」「(2)超信頼・低遅延通信(URLLC:Ultra Reliable and Low Latency Communications)」「(3)多数同時接続(mMTC:massive Machine Type Communications)」の3つです。

 これは、5Gがこれまでの「通信が速くなる」という進化だけでなく、「信頼性が高く遅延の少ない通信」「大規模に存在する端末が同時に接続できる通信」という非連続な進化となることを意味しています。

 ビジョン勧告後の標準化の進捗としては、3GPP(3G Partnership Project:5Gの技術仕様を策定する標準化プロジェクト)が2018年6月にリリース15という初期の標準仕様を策定し、商用化の準備が整いました。2019年末にはリリース16として、上記の3つの利用シナリオの要求要件を満たす詳細仕様の策定が完了する予定です。

高速大容量通信を実現する技術

 次に、この3つの利用シナリオを実現する技術について見ていきましょう。まずは、「(1)高速大容量通信」を取り上げます。

 多様な技術を組み合わせることで実現されるわけですが、4Gとの最も大きな違いとして、これまで移動通信システムとして活用することが難しかった、高い周波数の電波を制御する技術が成熟してきたことが挙げられます。

 5Gに割り当てられた電波は、「サブ6帯」と呼ばれる3.7GHz帯、4.5GHz帯、そして「ミリ波帯」の28GHz帯となっています。4Gまでに利用されている電波のうち、最も高い周波数は2014年12月に割り当てられた3.5GHz帯であり、5Gの電波がいかに高い周波数かがわかります。

 基地局のアンテナを集積する「Massive-MIMO(Multiple Input Multiple Output)」という技術や、そのアンテナから一定方向に高い指向性を持つ電波を発信して端末に送る「ビームフォーミング」という技術によって、減衰しやすい(長い距離を飛ばない)高周波の電波を、基地局間の干渉を抑えながら遠くまで飛ばすことができるようになりました。

 また、データを運ぶための電波のカタマリを「サブキャリア」といいますが、5Gは高い周波数で連続した電波帯域を確保することができますので、これまでよりもサブキャリア幅を長くすることができるようになりました。つまり、より大きな電波のカタマリでデータを送信できるということです。

 具体的にイメージしていただくために、電波によるデータの伝送を、バスによる人の輸送にたとえてみましょう。5Gとは幅の広い道路を新たに敷設し、その上をこれまでにないような大型のバスを走らせるようなものです。多くの人を運べることが想像できることと思います。

 このような要素技術を組み合わせることによって、4G時代の10倍以上、通信速度が速くなるとされています。

 具体的には、4Gでは下り(基地局から端末方向の通信)が最大1ギガbps(bit per second:1秒間に伝送されるデータ通信量)超程度、上り(端末から基地局方向の通信)が最大数百メガbps 程度であった通信速度が、5Gでは下り最大20ギガbps、上り最大10ギガbps程度という水準を目指しています。これは規格上の性能要件であって、実際の通信速度は端末の仕様や通信事業者のネットワーク設計に依存しますが、ケタ違いの高速化、特に上りの強化は注目すべきポイントです。

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