長島聡の「和ノベーションで行こう!」

エコ運転支援で蓄積した「人の気持ちに寄り添う」チカラの可能性 第29回 アスア 間地 寛・代表取締役社長

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間地 そうなんですよ!私たちは、その製品をトラックの燃料タンクへ入れた後、効果を検証するために、ドライバーさんに毎月燃費を記入してもらっていました。また、その燃費をシステムに入力して解析し、ドライバーさんにフィードバックしていました。その際、「わあ、○○さん、こんなに燃費が変わりましたね」と励ましながら、「せっかく燃費が改善する製品を導入したのだから、空ぶかしをしたり、急発進したりすると逆効果ですよ。そういうことだけはしないでくださいね」という説明をしていました。

 つまり、燃費が改善した本当の理由は、燃費の可視化と、コミュニケーションに基づくドライバーさんの意識改革でした。そして、そこから物流会社向けのエコドライブコンサルティングへ事業を変えて再スタートしたのが今から約18年前です。以来、物流事業者に特化したコンサルティングが主力の事業になっています。

 エコドライブコンサルティングには、交通事故が減る効果があることもわかりました。燃費向上製品で失敗した経験を生かし、早稲田大学という第三者的な組織との共同研究によって、エコドライブコンサルティングの効果を検証しています。燃費が約9%向上し、交通事故は半減するという結果を得ています。

長島 燃費が9%も改善し、交通事故が半減するというのは驚くべきことです。無駄な加速などを、日常の運転で自然に防ぐように、コミュニケーションを通じて働き掛けすることで得られたのですよね。交通事故が減るのは、周りをよく見て運転することが理由の一つなのでしょう。

間地 交通事故が一番起きる場所は交差点で、トラックの場合、前の車へ後ろから追突する事故が一番多いんです。この場合、一番重要なのは交差点での車の速度です。

 私たちがエコドライブコンサルティングを行うと、ドライバーの運転が変化します。発進をゆっくり行うようになり、停止するときには車の流れの先読みをして、早めにアクセルを離して惰性で走るようになります。この運転の変化によって、燃費が改善するとともに、追突事故が起きなくなります。

長島 コストが下がり、事故も減る――いずれも物流会社の経営者としてはすごくうれしいことです。とりわけ、事故が発生したときのコストは桁違いに大きく、お金だけでは済まない事態もあり得ます。そうした問題が大きく減るわけです。

間地 さらに、そうした目に見える効果に加えて、ドライバーの意識に大きな変化が生まれます。物流会社の社内に一体感が出るのです。

長島 一体感とは?

間地 会社の目標に向かう際の一体感です。弊社のコンサルティングでは、ある時点を境に、一気にその会社の雰囲気が変わるケースがあります。会社でキーパーソンとなる社員の方が、「よしやろう」という気持ちになり、それをきっかけに他の社員の意識が変わっていくケースです。

 人のやる気は伝染します。特にキーパーソンクラスの人がやる気を持つと、一気に現場の後押しをする。このコンサルティングサービスを「トライエスプログラム(みんながYESと賛同し、一緒にTRYできるプログラム)」と呼び、全国の物流会社に広げていきました。

コンサルティングの勘所を徹底的に研修する

長島 やる気の伝染については仰る通りでしょう。でも、現場のキーパーソンを見極めるのはまだできるかもしれませんが、キーパーソンの方にやる気になってもらうのは、そう簡単に、誰でもできることではありません。いわんやドライバーの方々は、自分の運転について一家言あると思います。どのようにコンサルティングを進めていますか?

間地 私たちが、今どこの会社へコンサルティングにうかがっても同じような成果を出せるのは、支援の勘所を徹底的に研修しているためです。ポイントは「逃げずに相手の懐へ入り込む」ということでしょうか。もちろん、かなり大変なことですが、まずは「徹底的に明るく元気」である必要があり、さらに「本当にその会社の交通事故を減らしたいという強い思い」がないといけません。

 あとはドライバーの方々のプライドを傷つけないことです。これはすごく大事で、私たちは、燃費を改善するための運転技術そのものはドライバーさんに教えないようにしてます。

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