泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

「サブスク」事業、米IT大手とネットフリックスの違いとは(下) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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オリジナルコンテンツがオスカーとエミー賞を受賞

 さて、話を戻そう。ネットフリックスは米国内のサービス拡充とともに米国外における展開を加速させていった。ネットフリックスにとって未だに米国市場が最重要であるのは間違いないが、米国外の市場が同社の成長を、より加速し始めるのである。サブスク方式に積極的な米IT大手企業は、同方式を始める前に米国外にも現地法人を設立するなどグローバルに事業を展開していた。それに比べると、ネットフリックスはゼロからグローバル展開を行っている。

 ネットフリックスは米国外で、まず2010年に隣国カナダでビジネスを始めた。意外かもしれないが、米国での創業から13年が経過していた。続いて2011年、米国に近い南米とカリブでサービスを立ち上げた。

 それからの拡大は急速だった。2012年には、英国、アイルランド、北欧、2013年にはオランダ、2014年にはオーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、スイスなど6カ国で新たにサービスを提供した。2015年にはオーストラリア、ニュージーランド、日本、そして欧州ではイタリア、スペイン、ポルトガルでサービスを開始。2016年には合計190カ国でネットフリックスのサービスが利用可能となった。

 また、ネットフリックスは、サービス対象地域の拡大とともに、オリジナル番組の制作・配信を始めた。2013年には「ハウス・オブ・カード 野望の階段(原題はHouse of Cards)」「ヘムロック・グローブ(Hemlock Grove)」「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(Orange is the New Black)」などを制作・配信。2014年には、「ハウス・オブ・カード」が、世界的に権威のある、プライムタイム・エミー賞(いわゆるエミー賞)をネットテレビ番組として初めて受賞する。そして2017年には映画「ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊」がアカデミー賞(オスカー)を受賞(短編ドキュメンタリー賞)した。配信ネットワークの規模に加えて、オリジナルコンテンツの内容も評価されるようになっている。

米国外の会員増が右肩上がりの成長を実現

 ここからは、ネットフリックスの株式市場における評価や有料会員数や業績などを見ながらさらに詳しく見ていこう。

 まずネットフリックスの時価総額だが、2019年8月20日時点の株価をもとに計算すると、1315億ドル(1ドル108円換算で14兆2000億円)にも達する。ちなみに業種は同一ではないが、映画や音楽を事業ポートフォリオに持つソニーの時価総額は約7.6兆円で、ネットフリックスの時価総額はソニーの倍近いことになる。もっともネットフリックスの場合、利益に対しての時価総額が大きい点には留意したい。それだけ株式市場では、同社の成長性を織り込んだ評価がされている。

 では、なぜそのようにネットフリックスは株式市場で評価が高いのだろう。その理由の一つが、先に見たような米国外での有料会員数の増大、すなわちグローバル展開にある。

 2019年第2四半期(Q2)時点で、ネットフリックスの有料会員数は1億5156万だが、その内訳は米国内が6010万、米国外が9146万と、米国外の方が1.5倍ある。

 図表1に示すように、欧州で本格的にサービス対象地域を拡大していった2014年ごろは米国内の有料会員数がはるかに多かった。たとえば、2014年Q4には、グローバル(米国内+米国外)で5448万の有料会員がいたが、内訳は米国内が3770万、米国外が1678万であった。

 しかし、やがて米国外の有料会員数は米国内の同会員数を上回る伸びを見せるようになる。米国外の有料会員数が米国内の規模を抜いたのが、2017年第3四半期(Q3)で、米国外の有料会員数が5267万、米国内の同会員数は5135万だった。

 その後も、米国外の有料会員数は伸び続け、2019年Q2には9146万にまで拡大している。それに比べると、同四半期における米国内の有料会員数は6010万に達したものの、2019年Q1の6023万と比べると減少した。

 2019年Q2の決算発表時、グローバルの有料会員数の伸び幅が低下したとして、株式市場でネットフリックスの株価が下落したのは記憶に新しいが、内訳を見ると上記のような変化が起きていたわけだ。

 同社が開示しているデータをもとに、2015年Q1以降の対前年同期比でグローバルの有料会員数の増加幅が前四半期を下回ったのは、2019年Q2が初めてとなる。2019年Q1に対前年同期比でのグローバル有料会員数の増加は2996万であったが、2019年Q2には2721万となった。

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