泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

「サブスク」事業、米IT大手とネットフリックスの違いとは(下) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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 前回は、サブスクリプション(サブスク)方式がインターネットのビジネスモデルとして注目を集める背景と、米IT大手企業の取り組みについて解説した。ここからは、サブスクで成功していると言われる米動画配信最大手のネットフリックス(Netflix)についてその取り組みを見ていこう。

 ネットフリックスは、2015年9月から日本でも動画配信サービスを展開しており、利用したことがある方も多いのではないだろうか。毎月一定額を支払うことにより、ネットを通じて、映画やドラマなどをいくらでも視聴することができるサービスだ。

サブスク方式のビジネスを20年前から実践

 まずは、ネットフリックスの歴史をおさらいしておこう[1]。

 1997年に現・会長兼CEO(最高経営責任者)のリード・ハスティングス氏と初代CEOのマルク・ランドルフ氏がオンラインで受け付ける映画のレンタル事業を始めた。翌年には、DVDをレンタルで提供するサイト「netflix.com」を立ち上げる。

 事業立ち上げは、DVDの規格がちょうど統一され、DVDプレーヤーが本格的に売り出されたタイミングであり、まさにDVDの普及期に合わせて、そのレンタル事業をネットサービスとしてスタートしたわけである。機を見るに敏とはまさにこのことだ[2]。

 1999年には、一定の月額利用料でDVDを無制限にレンタルできるサブスク方式のサービスを始めた。「サブスク」というキーワードは今でこそもてはやされているが、当時のDVDレンタルは1枚いくらの料金体系が主流だった。ネットフリックスは、対象こそ違え、サブスク方式のビジネスへ20年前に行きついている点で注目に値する。前回説明したように米IT大手企業の中にはサブスク方式のビジネスに舵を切ったところもあるが、それに比べてもネットフリックスは早い。

 同社はそのビジネスモデルとともに、2002年に株式公開を果たす。このとき、米国におけるネットフリックスの会員数は60万。同社には2019年6月末時点で、世界に1.5億超の会員がいる。株式公開当時の60万という会員数も少なくはないが、それから200倍以上もの成長をするとは誰が想像したであろうか。

 そして2007年、インターネット通信インフラやパソコン(PC)の性能向上などを背景に、ネットフリックスは個人のPCでテレビ番組や映画を視聴できる動画配信サービスを始める。さらに2008年にはマイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox 360」、2009年にはネット接続可能なテレビやソニーの家庭用ゲーム機「PlayStation 3(PS3)」、2010年にはアップルのiPhoneやニンテンドーの家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」でそれぞれ動画を視聴できるようにするなど利便性を高めた。

 インターネット通信インフラやPCの進化が、ネットフリックスの成長にとって大きな推進力になったのは確かだろう。余談であるが、アップルのiPhoneも、第2世代の移動通信インフラ(2G)に対応した第1世代機(2007年に発売)の売れ行きは芳しくなく、株式市場における同社の評価も高くはなかった。しかし、第3世代の移動通信インフラ(3G)に対応したiPhoneの第2世代機であるiPhone 3Gが2008年に発売されると、市場は急拡大していく。これも、優れた製品・サービスが、インフラの進化を追い風にした例といえる。

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