官民連携と地域連携で実現する地方創生

産官学民連携とデジタルガバメントで加速するスマートシティ ほか セッション3/セッション4

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■セッション3 産官学民連携とデジタルガバメントで加速するスマートシティ
自治体講演 ICTを活用した地方創生への挑戦 ~「スマートシティ会津若松」の取り組みとビジョン~

デジタルで地域課題解決

会津若松市副市長 齋藤 勝 氏

 会津若松市には半導体産業が立地し、市内にある会津大学は県立のICT(情報通信技術)単科大学だ。これらの強みを活かして当市では、2013年から様々な分野でICTを活用する「スマートシティ会津若松」の推進に取り組んできた。

 その一つがデジタル情報プラットフォーム「会津若松+(プラス)」の構築だ。日本郵便のゆうびんIDやマイナンバーカードと連携し、本人であることを認証。年齢や家族構成といった個人の属性に応じて除雪車や学校情報の配信、母子手帳の電子化を実施するほか、様々なサービスやアプリを提供することが可能になった。

 例えばLINEを活用した人工知能(AI)による自動応答サービスでは、休日・夜間診療やごみ出し、担当窓口の案内などを実施。年間2万~3万件の問い合わせに対応し、市職員の負担を削減した。パソコンやスマートフォンを持っていない市民に対しては、まだ実証ベースだがテレビを使って情報配信を行う中山間地域生活支援システムも構築した。

 農業・酒造りの分野でもICTや5Gを活用し、生産物の均一化や品質アップにつなげている。サテライトオフィス誘致事業も行い、この4月には産業集積と定住人口の拡大を目的としてICTオフィス「スマートシティAiCT(アイクト)」を開設した。

 今後は栽培支援ドローン(小型無人機)の導入など既存事業の深化・高度化を行うとともに、今年から始まったオンライン診療をさらに進めて地域課題に取り組む。

自治体講演 ~持続可能な都市経営を目指して~ 「SDGs未来都市かまくら」の挑戦

産官学民の連携・共創に力

鎌倉市長 松尾 崇 氏

 鎌倉市には戦前から続く市民運動の歴史があり、市民がまちを守る意識が醸成されていった。現在では郊外住宅団地の課題をコミュニティーで解決する取り組み「鎌倉リビングラボ」を産官学民の共創で実施。また、「Fab City宣言」を行い、ものづくりで地域課題を解決し、世界のFab Labと共有するなど、様々な取り組みを実施している。

 こうした活動の蓄積により、当市は「SDGs未来都市」に選定された。具体的な取り組みとしては、まず古民家の活用。当市に寄贈された昭和初期の歴史的建造物である旧村上邸をシェアオフィスや企業研修の場として活用するとともに地域住民との交流により地域課題の解決に取り組むなど、環境と社会、経済の3側面をつないでいる。18年10月には「かまくらプラごみゼロ宣言」を行い、リユース食器利用費補助金交付制度の制トル販売の廃止とマイカップの利用促進など、まち全体でプラスチックごみの削減にこれまで以上に注力している。

 産官学民連携では、一般社団法人コード・フォー・ジャパンが実施する「地域フィールドラボ」に参加し、企業から研修生を受け入れて民間のノウハウを行政に導入。ほかにもLINEを活用した行政手続きの電子化や、スマートスピーカーを使った高齢者サービスの実証実験も実施している。テレワーク推進にも力を入れてきた。さらに鎌倉・大船・深沢の3拠点のまちづくりを進め、住み続けたいまち・災害に強いまちの実現を目指す。

パネルディスカッション

●パネリスト

齋藤 勝 氏

松尾 崇 氏

●コーディネーター

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 常務執行役員 企画管理部門副部門長 調査本部副本部長 南雲 岳彦 氏

 南雲 両市は人口減少や少子高齢化、経済の低成長など、地域課題の解決にいち早く取り組んできた。新しい物事に取り組む際、住民との対話をどのように進めてきたのか。

 齋藤 ICTやあらゆるモノがネットにつながる「IoT」、AIの話題は住民の拒否反応が起こりやすい。そこで市長が各地でタウンミーティングを重ねるほか、広報を通じ情報発信して理解を求めた。さらにスマートアグリで水田管理や養液土耕栽培の実利を見せるなどして、実績を積み上げ理解を得ていった。

展望を示すことが大事 齋藤 氏

 松尾 鎌倉リビングラボは、大学の先生も交えて自治会と話し合い、少しずつ理解を深めていった。学校でSDGsを学んだ子供たちが多くの人にSDGsに取り組んでもらえるよう、駅前でチラシを配ったり自治会長に説明に行くなど積極的に働きかけをしてくれた。子供と一緒に取り組むのも大事だと感じた。

 南雲 産官学民で変革を起こすのは容易ではないが、どう連携すればいいか実践の中で気付いたことはあるか。

 齋藤 民との連携で一番重要なのは、役所が何をやりたいのかを軸として持ち続けることだ。将来の展望を示さなければ民間企業に流されてしまう。また、一企業と連携したことで同業種の企業との連携が難しくならないよう、プラットフォーム的なものが必要ではないかと感じている。

成果指標の可視化は必須 松尾 氏

 松尾 市長に就任した当初は、行政が考えるニーズと民間企業や大学の提案にすれ違いがあり、連携がうまくいかなかった。そこで第三者に市のアドバイザーとして入っていただき、提案を整理・選別した上で話を進めるようにしてからは連携がスムーズになった。一方、住民主導で行われる取り組みについてはバックアップに徹している。

 南雲 日本は規制大国といわれるが、産官学民で新たな物事を進める上で規制について何か感じたことはあるか。

 齋藤 税と医療福祉に関するデータが規制のため連携できていない。これらを取り払うとより良いサービス施策が取れるのではないか。地域包括ケアシステムの一環としてオンライン診療を4月から始めた。国の規制により特定疾患でないと診療報酬が点数化できないが、将来的にコンソーシアムを組んで高齢者の顔認証による運転支援、服薬指導などに広げていければと思う。それには民間企業の協働と支援が非常に重要だ。

海外都市の動向を参考に 南雲 氏

 松尾 鎌倉でロードプライシング導入の検討をしているが、国内では前例がないため難航している。また、高齢化率が45%を超える地域は坂が多く、住民の足を確保するにはテクノロジーとともに規制緩和を進める必要があると感じる。民間やNPOと連携しデータに基づいた成果指標を可視化し、住民に納得してもらうことが大事だ。行政でしかできない部分を実行する持続可能な自治体を目指したい。

 南雲 海外都市には様々な参考事例がある。われわれは近日、一般社団法人スマートシティ・インスティテュートという団体を立ち上げる。日本の自治体が同じビジョンを共有する海外都市と連携するケースも増えているが、様々な情報を集約するハブの機能を果たせればと考えている。

◆スマートシティ・インスティテュート、9月設立

 先端技術で都市の課題を解決するスマートシティの実現は地方創生に欠かせない要素だ。日本経済新聞社は9月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)と、日本のスマートシティの拡大・高度化に貢献する一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(代表理事・柳川範之東京大学教授)を設立する。全国の企業、スタートアップ、地方自治体、大学、研究機関、一般社団法人等を会員として募集。企業と自治体や企業間などのネットワーキングの場を提供し、各会員の活動を支援する。

 世界の先進スマートシティの最新情報や推進ノウハウを収集・分析・共有するほか、セミナー・シンポジウム、海外ツアー、優秀事例表彰、学生向けコンテストなども展開する。入会申し込み・問い合わせは準備事務局(digital-society@murc.jp)へ。

■セッション4 TICAD7に向けて~地方から世界へ 中堅・中小企業のアフリカ進出支援~

●パネリスト

外務省 アフリカ部・国際協力局参事官、TICAD担当大使 紀谷 昌彦 氏

日本貿易振興機構 理事 平野 克己 氏

国際協力機構 理事 山田 順一 氏

神戸市 企画調整局 新産業部長 垣内 正雄 氏

TMT. Japan 代表取締役 横山 朋樹 氏

●コーディネーター

国連開発計画(UNDP) 駐日代表 近藤 哲生 氏

企業のアフリカ進出 国を挙げバックアップ

 近藤 8月28~30日に横浜で行われる第7回アフリカ開発会議(TICAD7)について、概要や焦点を伺いたい。

 紀谷 TICADは1993年に日本が立ち上げたアフリカ開発に関する首脳級の国際会議だ。アフリカの自主性を国際社会が支援するというオーナーシップとパートナーシップを理念にしている。

 今回のTICAD7は官民連携のアフリカビジネスを焦点にしており、全国津々浦々の中小・中堅企業、スタートアップ企業がアフリカのビジネス機会を発掘する場となる。アフリカに進出している日系企業はまだ少ないため、政府としても全面的に後押ししていきたい。今年6月には、アフリカとのビジネス関係のさらなる発展を目指して民間企業の代表者を「TICAD官民連携推進特使」に委嘱しており、42社が特使の委嘱を受けている。開催当日は全体会合の「官民ビジネス対話」で日本・アフリカの首脳や民間企業による率直な議論が交わされるほか、ビジネスに関するサイドイベントも多数開催予定だ。直接の顔合わせの場が多々あるため、この好機を最大限に生かしてほしい。

 平野 2014年以降、原油を中心とした資源価格の停滞の中でアフリカは停滞期に入ったが、実は各国の企業が進出して高い収益を上げていることはなかなか日本では知られていない。

 いまや対アフリカ貿易は輸出入ともに中国が圧倒的首位にある。他の先進国をみても、例えばヨーロッパ諸国や米国は機械、石油製品、ガソリン、医薬品、食品などを輸出の柱にしているが、日本はどれも非常に微々たる輸出量しかない。再生可能エネルギーや金融、通信、建設業なども同様だ。逆に言えばこれらに日本の成長率を引き上げる余地が残っているといえる。アフリカへの政府開発援助(ODA)と海外直接投資(FDI)も、日本はトップ10にも入っていない。日本企業が真の意味でグローバル化するにはプレゼンスが弱いところを攻めていく必要があり、アフリカはその典型だ。今回のTICAD7で日本がより活力ある国際化を図ることが重要だ。

アフリカ視察を通じビジネスチャンス発見

 山田 地方創生のために日本企業の海外進出をサポートすることが、国際協力機構(JICA)の大きな役割の一つだ。海外拠点96カ所のうち30カ所がアフリカにあるため、アフリカに根を張る機関として「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を実施し、具体的なビジネス展開に結びつけている。JICAでは全国47都道府県で中小企業を支援した実績があり、実際にアフリカでビジネス展開して販売実績を上げている成功事例も数多くある。

 アフリカでは保健や衛生、農業、食料、教育、都市課題や電力など、様々な課題に対するビジネスチャンスがあると考えられる。JICAではアフリカ地域への進出を企図している企業を対象に、現地課題理解促進のためのスタディツアーを今年1月から2月にかけて実施した。われわれが旅費や滞在費を負担し、現地視察と公官庁との話し合いができる。また、9月に課題発信セミナーを開催するので、ぜひ参加してほしい。

 垣内 神戸市では、神戸経済の新たな成長機会の創出を目指し、成長著しいアフリカとの経済交流を進めている。きっかけは16年、久元喜造市長がルワンダのICTセクターを訪問したことだ。ICT立国を目指すルワンダでイノベーションと革新的なビジネスが生まれる現場を目の当たりにし、ビジネスパートナーとして共に課題解決に取り組むことになった。

 民間の経済交流を促進する上で、自治体が果たす役割は大きい。神戸市では行政間の協力枠組みを作るべく、ルワンダの首都キガリ市やICT省との間で、連携を深めるための覚書を締結した。他にもビジネスセミナーの実施や留学生と企業のマッチング、企業の現地ミッションの派遣、若手IT人材のルワンダ派遣など、様々な取り組みを実施してきた。また、神戸情報大学院大学ではルワンダをはじめ各国から優秀な留学生が学んでおり、神戸の企業や母国で活躍する修了生も多く、様々なビジネスがそこから生まれている。

地方中小企業支援のプラットフォーム確立

 横山 当社は大分の中小企業3社が集まり設立した企業だ。私は鉄工所の3代目だが、下請け企業からの脱却を図るべく、直接国とつながろうと考えてODA事業を検討し、カメルーンへの進出を決めた。その後バイオトイレ事業でJICA中小企業海外展開支援事業を活用し、案件化調査、普及・実証事業を実施。18年9月に現地法人を設立し、カメルーン製のバイオトイレの製造体制を構築した。 日本の経営者は社員との家族的なつながりを大切にするため、現地の人材を仲間に迎え入れ、技術供与を行い、持続可能な開発体制を実現しやすいメリットがある。一方で、アフリカは「支援をしてもらう」という意識が強いため、いかに協業の意識を高めていくかが課題だ。一企業だけでは難しいので、政府の力を借りることが大切だ。当社もその一環で「大分―カメルーン共和国友好協会」を設立し、民間交流を経済交流へと発展させるべく活動している。

 近藤 TICAD7を契機にアフリカ進出を目指す企業を支える具体的な取り組みはあるか。

 平野 TICAD7の開催にあたり、日本貿易振興機構(JETRO)とJICA、国連開発計画(UNDP)によるアフリカビジネスを支援するプラットフォームを立ち上げる。JETROは全国に事務所があり、各地の商工会議所とのつながりが深い。そこでアフリカ展開の可能性がある中小企業がいればJICAにつなぎ、UNDPに支援を依頼する。アフリカとのビジネスにおける各段階で、中小企業のアフリカ進出支援、スタートアップ支援、イノベーション支援などを検討中で、TICAD7では関連イベントを開催予定だ。

 先進国では中小企業の海外展開率は約20%だが、日本ではまだ5%未満。この割合を増やすことが確実に地方創生や地方経済の活性化につながる。

主催:日本経済新聞社  後援:内閣府

協賛:三井住友ファイナンス&リース、スマートウエルネスコミュニティ協議会、清水建設、マイナビ、九州フィナンシャルグループ、日本政策投資銀行

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