官民連携と地域連携で実現する地方創生

第2期の地方創生に向けて ほか 基調講演/セッション1/セッション2

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 高齢化や人口減少など、地方の抱える課題は深刻さを増している。その解決には何が必要か。7月18日、東京・大手町の日経ホールに政府や自治体、金融機関などの関係者が一堂に会し「地方金融」「持続可能な開発目標(SDGs)と環境・社会・企業統治(ESG)投資」「多機能リース」「デジタルガバメント」「アフリカ進出支援」などをキーワードに議論を交わした。

■基調講演 第2期の地方創生に向けて

「継続を力に」息の長い取り組みを

前 内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 地方創生総括官 稲山 博司 氏

 まち・ひと・しごと創生総合戦略は5年目を迎え、来年度から第2期に入る。その目的は人口減少に歯止めをかけ、東京圏への人口集中を是正することだ。

 引き続き人口減少、少子高齢化は進み、65歳以上の老年人口は2040年ごろにピークを迎える。深刻なのは1都3県への一極集中だ。

 高度経済成長期やバブル期と異なり、東京圏だけが転入超過であり、大阪や名古屋などの政令市や中核市などからの流入が中心となっている。周辺から集めた人口を東京へ送り出しており、その多くが女性だ。女性に魅力を感じてもらうまちづくりが重要だ。

 地方創生は息の長い政策で、第2期も基本的な枠組みは維持し、新たな視点を加味しながら、一層の充実・強化を図る。

 特に重点を置く視点として、(1)地方への人・資金の流れの強化(2)新しい時代の流れを力にする(3)人材を育て活かす(4)民間との協働(5)誰もが活躍できる地域社会を作る(6)地域経営の視点での取り組みの6つを掲げた。

 地域のファンづくりや仕事づくりなど「関係人口」の創出・拡大、人材マッチングの支援を拡充する「地域人材支援戦略パッケージ」の推進、未来技術の活用などに、20年度は具体的に取り組む。

 地方創生は、必ずやり遂げなければいけない重要テーマであり、今後とも官民連携・地域連携が進むことを期待する。

■セッション1 地方金融が支える地方創生 ~ESG投資と自治体のSDGsへの取り組み~
基調講演 地方創生に向けたSDGs金融の推進

資金の環流と再投資促せ

東京大学名誉教授/建築環境・省エネルギー機構 理事長 村上 周三 氏

 人口減少の影響は、小規模自治体でより深刻だ。コミュニティーが失われ、インフラやサービス維持の財源や担い手が減少、投資意欲が低下している。

 仕事があれば人が集まり、まちは活性化する。一方で、まちに魅力がなければ人も企業も去ってしまう。そこで、地元企業のSDGsへの取り組みに自治体や大手企業が連携し、それを地域金融機関や大手銀行・証券などが連携して金融支援する。そこで生まれた利益は、再び地方創生のためのSDGsの原資とする。この資金の環流と再投資という自律的好循環の構築を目指すのが「地方創生SDGs金融」だ。

 環境・社会・企業統治を意識したESG投資など地域企業のSDGsへの取り組みは、事業の成長と地域課題の解決を同時にもたらすメリットがある。地域金融機関は、SDGsに取り組む企業を発掘・育成し、金融面からバックアップする。政府や自治体は、認証や表彰などを通じて地方創生SDGsに積極的に取り組む企業や地域金融機関を支援する。ここに大手金融機関も連携すれば、投融資はいっそう高度化・効率化される。

 利益を生むことで、企業のSDGsへの取り組みはさらに加速する。国際的にも、特に長期投資を目的とする機関投資家などがESGや非財務情報などに注目するようになっている。

 今後、具体的な枠組みとしてのフレームワークを構築し、3段階にわたって実効性を確保することで、地方創生SDGs金融を推進していくことになる。

パネルディスカッション

●パネリスト

日本政策投資銀行 執行役員 産業調査本部 副本部長兼 経営企画部サステナビリティ経営室長 竹ケ原 啓介 氏

内閣府 地方創生推進事務局 参事官 遠藤 健太郎 氏

長野県副知事 小岩 正貴 氏

九州フィナンシャルグループ 代表取締役社長/肥後銀行 代表取締役頭取 笠原 慶久 氏

●コーディネーター

村上 周三 氏

 村上 SDGsアクションプラン2019の主な取り組みについてそれぞれの立場からお話を。

 遠藤 政府は、SDGsを原動力に地方創生を推進したい。そのカギを握るのが地方創生SDGs金融で、実現のための方法論は3つのフェーズに分かれる。登録・認定制度で地域企業のSDGsへの取り組みを見える化。次にそれをサポートする金融機関の表彰制度で、企業との連携を促す。そこに大手金融機関も連携し、さらに地域経済の活性化が進む。

一緒に汗をかく金融を 竹ケ原 氏

 小岩 長野県では、SDGs推進企業の登録制度を始めた。中小企業はSDGsの認知度が低く、実際に取り組んでいてもそれを認識できていない例もある。県ではPRとともに、成功事例の共有も進める。今後は、ビジネスマッチング、人材確保、資金支援も視野に入れる。地域金融機関とどう手を組むかが課題で、地方創生SDGs金融は、人口減や地域経済の活力減少など、地域金融機関自身の課題解決につながるはずだ。

 笠原 九州フィナンシャルグループでは、昨年10月に専門部署を創設、自律的好循環サイクルの確立を目指している。熊本地震に関する地元企業アンケートでは、働き手や環境、社会などへ配慮した企業ほど復興スピードが速い結果が出た。短期的な利益より大義がビジネスにもつながる。ファンドを活用した地域産業振興事業や社会貢献活動にも取り組んでいる。

課題を見える化し整理を 遠藤 氏

 竹ケ原 ESG投資が企業に求めるのは、大前提の稼ぐ力を支えるビジネスモデルが外部環境の変化に対応でき、持続可能なこと。まさにSDGsだ。これは、事業性を見極めて与信してきた地域金融の役割と何ら変わらない。SDGsに着目した融資を地域に根ざして展開できれば、ファンドによるリスクマネー供給など様々な形で大手金融機関がサポートできる。

 村上 SDGsは、ビジネスとして継続できることが重要だ。

 竹ケ原 社会課題を解決しながら事業をすることの整理が必要。

 笠原 SDGsは企業の社会的責任(CSR)と捉えられる印象があるが、復興のアンケートが示したように、実は顧客や社員の信頼が本業、稼ぐ力につながる。

 村上 企業は地方創生SDGsの主役だ。企業の活性化が持続可能な地球の基盤になる。

地域の資源や強みを発掘 小岩 氏

 小岩 持続可能という意味では、後継者問題もある。いくら収益を上げても、自分の世代で終わらせては組織は継続できない。

 遠藤 地域の課題に、地元企業が取り組み、それを地域金融機関がサポートすることが重要。稼ぐ力を高める考え方を全国で取り入れてほしい。

 村上 地方創生SDGs金融はどのように進めるべきか。

 竹ケ原 長野県では、企業の認知度が低いとあったが、金融機関も同様。仕事の一つひとつに意義づけしていけばSDGsになる。担保に頼らず事業を重視するように、非財務情報に着目して融資する。そうした視点が重要だ。

 笠原 地域金融機関も同じだ。本業を通じた地方創生への取り組みそのものがSDGsであり、好循環を生む。

 小岩 議論を重ねた結果、地方創生=SDGsに行き着いた。 遠藤 全国の自治体で広く取り組んでもらいたい。SDGsをコミュニケーションツールとして、地域の課題の見える化を。

大義が企業復興を下支え 笠原 氏

 村上 地方創生SDGs金融のフレームワークを構築するには、誰が何をすべきか。

 竹ケ原 各地域の金融機関が行政とも連携して重点項目を決め、事業をサポートする。問題は、その重点項目をどう決めるか、その共通の「文法」が必要になる。

 村上 確かに計測ツールが必要になる。

 笠原 キーワードは徹底的な連携だ。企業と金融機関、行政がベクトルを合わせ連携しながらそれぞれの役割を果たすべきだ。

 小岩 長野県では、総合5カ年計画で、SDGsのゴールを明確化した。自治体の立場では、場づくりができるだけでも有意義だ。

 遠藤 取り組みの「見える化」が重要で、課題が整理されれば、企業に手を差し伸べやすくなる。網羅的な取り組みは困難。だからこそメリハリが必要になる。

 村上 現状とのギャップが大きな課題から、優先的に取り組むべきだ。

SDGsで地域活性化を 村上 氏

 村上 最後にひと言ずつ。

 竹ケ原 稼ぐ力を強調したが、決して稼げない企業には貸せないというのではない。一緒に汗をかくことがSDGs金融だ。

 笠原 長野県の事例は本当に参考になる。手を携えてやっていけば、必ず地方は活性化していく。

 小岩 自らの地域の資源や強みの発掘が、地域の持続可能性のヒントになる。SDGsはその大きなきっかけになる。

 遠藤 他の自治体でも、ぜひ先進事例を参考にしながら取り組みを。大手金融機関は、地方にも着目してほしい。

 村上 SDGsは、社会を変革する世直し運動。日本の活性化のカギにしてほしい。

■セッション2 地域連携と官民連携で実現する地方創生
企業講演

地方創生に貢献する多機能リース会社との連携

三井住友ファイナンス&リース 専務執行役員 西河 哲也 氏

 三井住友ファイナンス&リースは、地方創生実現に向けた地域資源の活用を多面的に支援するため、モノに関する専門性、適切なビジネスモデル、足りない機能を補う担い手のマッチング、さらに出資や事業参画などの機能も組み合わせ、事業を推進している。地域と連携して取り組む様々な事例を紹介したい。

 観光分野では福岡県の太宰府天満宮門前町の古民家再生事業がある。地元企業、銀行とともに事業運営会社に出資し、複数の古民家をあたかも一つのホテルのように運用することで、滞在型まちづくりに貢献している。当社は事業計画の策定や事業リスクの検証などに携わった。宿泊者限定の観光サービスを通じて、さらに集客を強化する。

 農業分野では北海道仁木町のワイナリー、NIKI Hillsヴィレッジが挙げられる。当社も資本参加し、ワイナリー事業の6次産業化を支援している。当社の幅広い顧客網を活用し、ホテルや豪華客船などへの販路拡大や固定資産管理合理化によるコスト削減に貢献。ワインツーリズムを通じ、地域活性化にさらに注力したい。

 環境・エネルギー分野では鳥取県の小水力発電設備の更新事業だ。稼働後50年以上が経過し老朽化が進み、地域の高齢化もあり維持メンテナンスが困難になっていた。そこで発電事業者、農協、地元金融機関と当社が連携し、リースによる水車発電機を中心とした発電設備の更新と約2キロメートルに及ぶ導水路の改修工事を実施。安全かつ安定した発電事業を可能にした。

主催:日本経済新聞社  後援:内閣府

協賛:三井住友ファイナンス&リース、スマートウエルネスコミュニティ協議会、清水建設、マイナビ、九州フィナンシャルグループ、日本政策投資銀行

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