誤解だらけの健康管理術

ビールのおいしい季節 尿酸値・痛風への備えは? 健康企業代表・医師 亀田 高志

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痛風に悩む人、身近にいませんか?

 「痛風で足が痛い」「健診の尿酸値が気になる」とこぼす人は少なくありません。一方で血液検査による尿酸値が一般定期健康診断の法定項目に含まれていないことを知っている人は少数派かもしれません。ただし、6ヶ月以上の海外派遣前後の健診に限り、産業医等の医師が必要と判断した場合には、血清中の尿酸値の測定を行うことになっています。

 健康診断の委託を受ける健診機関や病院は、一般定期健康診断と同時に尿酸値の血液検査を普通に提供し、発注元の企業等の担当者の方も意識せずに実施していることが少なくありません。多くは腎機能を反映する血液検査である血中クレアチニンと共に測定されることになります。健診の結果説明や保健指導を通じて、お酒を飲むことや特定のおつまみを取ることで尿酸値が上がりやすく、夏場に特に好まれるビールが良くないと聞かされて、尿酸値を意識するようになるのではないかと思います。

 血清中の尿酸値は性別や年齢を問わずに7.0mg/dlを超える場合に、医学的に高尿酸血症とされています。高尿酸血症は成人男性で4~5人に1人の割合と高い頻度であり、近年増加傾向にあると考えられています。男性は30代から40代に多く、女性は50歳未満で1.3%、50歳以上で3.7%と少数ですが、閉経後に尿酸値が上昇するケースもあると言われています。

痛風や高尿酸血症では何が問題か?

 尿酸値が高い場合には、血液中の溶解度を超えてしまった尿酸塩の結晶が析出し、体内の臓器に沈着してしまうことで、次のような健康問題を起こします。

・痛風関節炎

 ▼風が吹いて当たるだけでも痛いので「痛風」と呼ぶと言う説があります

・腎障害

・尿路結石

 ▼メタボリック症候群との合併(併存すること)が多い

・高血圧、心臓病、がん

 このうち、特に問題なのが、足の親指の付け根、足首や膝の関節炎によって痛み、腫れ、赤くなり、歩く際にも支障を生じる痛風発作です。ちなみに痛風の医学的な診断では、関節液を採取し、そこに含まれる尿酸塩の結晶を顕微鏡で確認します。

 痛風発作、急性の痛風関節炎は通常は1週間から10日くらいで改善し、その後は症状がない時期が続きます(これを医学的には間欠期と呼びます)。しかし、高尿酸血症から痛風発作、急性の痛風関節炎を放置していると、関節炎が慢性的になってしまいます。

 さらに尿酸塩を囲むような肉芽(にくげ)と呼ばれる小さな粒やこぶができるようになります。これを痛風結節と呼びますが、この痛風結節は足指の付け根以外に耳たぶや肘にもできることがあります。

 高尿酸血症が続くと並行して、腎臓の組織が障害され間質性腎炎を起こし、それが進行すると痛風腎と呼ばれる腎機能が障害された状態になってしまいます。かつては痛風腎から腎不全となり尿毒症から命を落とす患者さんも少なくなかったようです。

 また、痛風や高尿酸血症は典型的な生活習慣病であり、いわゆるメタボ、メタボリック症候群がある場合、例えば高血圧や脂質異常を持っている人は動脈硬化による脳卒中や心臓発作によりなりやすいと考えられます。必要な治療を受け、後述する生活習慣を改善する等して、きちんと対処したほうが良いと思います。

尿酸値が高いと言われたら

 初めての痛風発作で強い痛みが出た場合には放置したままで1週間以上過ごすのは困難であろうと思います。痛風発作は足指や足首の痛みですから、骨や筋肉等の病気やけがを治療する整形外科にかかる可能性があると思います。関節炎の治療は整形外科の専門分野でもあり、他の足指や関節との区別、医学的には鑑別診断にも適切です。

 一方、高尿酸血症があると健診後に指摘されたことがあり、基礎知識がある方が痛みに襲われたら、内科にかかろうと考えるかもしれません。一般内科でも対応に問題はありませんし、内科分野の専門としては内分泌代謝科となります。

 痛風発作に対してはとにかく痛みが酷いのでそれを止める治療が行われます。例えばコルヒチンというお薬や非ステロイド系の消炎鎮痛剤の内服を行い、あるいは症状に応じて副腎皮質ステロイドも選択されます。また、痛風発作を何度か繰り返している場合には前兆が分かることがありますから、その場合にはコルヒチンを服用し、痛風発作が起きて痛みが酷い期間は消炎鎮痛剤を用いて症状を和らげます。

 ところで尿酸値は日々、そして季節ごとに変動し、全く一定ではありません。健常な人では明け方が高く、夕方に低下しますが、日々の変動は0.5 mg/dl以内となります。健診の際に高尿酸血症があると指摘された場合ですが、1年に1回の健診だけのフォローアップではその改善が不確かであり、将来的に痛風発作等の心配が出てきます。従って、高尿酸血症で特に8.0 mg/dl以上の場合には、一旦内科にかかり、精密検査を受け、経過観察や治療の要否を判断してもらうことをお勧めします。

 血液中の尿酸は肉や魚に含まれる(人体にもあります)細胞中にある遺伝情報を構成している核酸という物質を分解し、これを利用する際に生成され、尿中に排せつされます。これが作られすぎるのか、排せつされない問題があるのかでタイプ分けがなされます。(尿酸産生過剰型、尿酸排せつ低下型と混合型)これらは医療機関で30分おきに血液検査と尿検査を繰り返すことで判定することができます。

 医師による標準的な対応としては痛風発作や痛風結節の有無を確認し、腎障害、尿路結石、高血圧、心臓病(虚血性心疾患)、糖尿病等といった合併症も検討の上、生活習慣指導を行ない、並行して、あるいは血清中の尿酸値の改善がなければ内服治療を始めることになります。ちなみに糖尿病のコントロールが悪い場合には尿酸の排せつが進むため、見かけ上は尿酸値がよい場合があります。その場合には血糖値を安定させてから、尿酸値を改めて評価する必要があります。

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