泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

「サブスク」事業、米IT大手とネットフリックスの違いとは(上) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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アドビは9割近くがサブスクリプションモデルでの売り上げ

 「フォトショップ(Photoshop)」「イラストレーター(Illustrator)」などのデザインソフトウエア、並びにアクロバット(Acrobat)などのドキュメントソフトウエアの大手として知られるアドビもサブスクリプションモデルへの移行をうまく進めた例としてよく取り上げられる。

 アドビは「フォトショップ」や「イラストレーター」といったソフトウエアを、「アドビ・クリエイティブ・クラウド」というサブスクリプションモデルの課金サービスで提供している。2019年度の売上高90.3億ドルのうち、その「アドビ・クリエイティブ・クラウド(Adobe Creative Cloud)」が含まれる「デジタルメディア(Digital Media)」セグメントの売上高が63.3億ドルに達する[7]。

 また、アドビでは、そうしたサブスクリプションモデルに基づくビジネスの比率が高まり、全社の売上高の88%を占めるという。同比率は2016年度には78%、2017年度には84%であった。売上高を拡大しながら比率が拡大していることも併せて考えれば、同社のソフトウエアビジネスはサブスクリプションモデルへの転換がうまく進んでいると言える[8]。

 マイクロソフトとアドビに共通するのは、もともと実績があった、ややもすれば一つひとつは高価なパッケージ製品の売り方を、デジタルな分割払いへ変えたと言えなくもないところだ。もちろん、マイクロソフトのアジュールでは、それまでパッケージで提供していなかったような新サービスをサブスクリプションモデルで提供するといったビジネスを行っているが、それらだけではここまで急速な転換はできなかっただろう。

 そして、さらにややうがった見方をすれば、インターネットという社会インフラのアップグレードが続くという外部環境の変化と、高価なパッケージ製品に対する利用者の価格引き下げ圧力が、デジタルな分割払いへの転換を余儀なくしたとも言える。つまり、サブスクリプションモデルへの転換が、どこまで企業による主導的な動きであったか、どこまで利用者の利便性を高めたのかどうか判然としないところがある。

 それに比べると、ネットフリックスはインフラ環境のアップグレードと利用者のニーズをさらに上手に組み合わせ、市場を米国内から世界にフォーカスを拡大して成長していると感じる。次回は同社について見てみよう。

(つづく)

参考情報)

[1] 『Alphabet Announces Second Quarter 2019 Results』(Alphabet)

[2] 『Facebook Q2 2019 Results』(Facebook)

[3] 『Amazon Q2 2019 Financial Results Conference Call Slides』(Amazon.com)p.8

[4] 『マイクロソフトが再び輝くための成長のカギとは?』(日経BizGate)

[5] 『First Quarter Fiscal Year 2020 Outlook』(Microsoft)

[6] 『Fourth Quarter Fiscal Year 2019 Result』(Microsoft)

[7] 『Adobe Investor Relations Data Sheet』(Adobe)

[8] 『Adobe Inc.』(UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION)p.40

泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)
 テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)LIMO(リーモ)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネジャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『銀行はこれからどうなるのか』『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』。東京工業大学大学院非常勤講師。産業技術大学院大学講師。

キーワード:経営、企画、技術、製造、経営層、営業、管理職、プレーヤー、経営、イノベーション、国際情勢

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