泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

「サブスク」事業、米IT大手とネットフリックスの違いとは(上) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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米IT大手はサブスクモデルへの取り組みに大きな温度差

 次に、このサブスクリプションモデルのビジネスへの転換がどれくらい進んでいるのか、米国IT大手の動向を見てみよう。

 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムは「GAFA」という言葉でひとくくりにされるものの、ビジネスモデルはそれぞれ異なる。先ほど見たように、グーグルとフェイスブックは広告収入を主にしているが、アップルとアマゾンはどうであろうか。

 アップルはiPhoneをはじめとしたハードウエア商品の販売が主軸であるものの最近は落ち込むこともある状態だ。それを補うべく成長を続けているのが、音楽や映画をネット経由で販売する「アイチューン(iTunes)」のようなサービス事業だ。さらにそのサービス事業の中でも音楽が聞き放題になる「アップルミュージック(Apple Music)」のようなサブスクリプションモデルによる収入の増加が目覚ましい。音楽ビジネス業界では、スポティファイをはじめとするサブスクリプションモデルの事業が拡大傾向にあるため、アップルもビジネスモデルの見直しを進めているともいえよう。

 アマゾンは電子商取引(Eコマース)による書籍や家電などのハードウエア商品の販売が売上高の主軸となっている。そうしたなか、企業向けの広い意味のサブスクリプションビジネスとして、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のようなクラウドサービスの売上高のシェアを伸ばしている点が注目できる。2019年第2四半期時点での過去12か月の売上高に占めるAWSの比率は約12%となっている[3]。

 以上のように、GAFAは全般に、サブスクリプションモデルを既にビジネスに取り込んでいるものの売上高に占める比率がそれほど大きいわけではない。フェイスブックについては、サブスクリプションビジネスへ一部のサービスで部分的に試験的に取り組んでいるという報道はあるものの、一般に提供されるものにはなっていないのが現状だ。

サブスクリプションモデルの波に上手に乗ったマイクロソフト

 GAFAには含まれていないが、世界を代表するIT大手でサブスクリプションモデルの波へ上手に乗った企業がある。それがマイクロソフトとアドビだ。

 マイクロソフトについては、この連載でも「マイクロソフトが再び輝くための成長のカギとは?」で取り上げた[4]。これまで、「マイクロソフトオフィス(Microsoft Office)」などのビジネスソフトウエア製品は箱詰めして売り切り販売していたが、「オフィス365(Office 365)」という新たなブランドを立ち上げ、マイクロソフトオフィスなどをサブスクリプションモデルで法人・個人向けに提供する形態へ変革した。売り切りで購入することもまだできるが、今ではオフィスソフトを月・年当たりの課金で利用する場合が多いだろう。

 同社のオフィス製品を含む「プロダクティビティーとビジネスプロセス(Productivity and Business Processes)」セグメントは2020年度第1四半期の会社による業績予想で、売上高が107億~109億ドルになるとされており、全社の約3分の1を占める[5]。それほどの大きな規模のビジネスで同社は「売り切り」から「サブスク」への切り替えを進めているといえる。

 併せて、マイクロソフトは「アジュール(Azure)」と総称するクラウドサービスを急速に拡充している。「マイクロソフトといえばパソコン用のオフィスソフトが売上高の主力なのだろう」とお考えの方も多いかもしれないが、実はアジュールを含む企業の情報システム基盤製品・サービスをまとめた「インテリジェントクラウド(Intelligent Cloud)」セグメントの売上高は、2020年度第1四半期の売上高の業績予想では103億~105億ドルになり、やはり全社の約3分の1を占める。

 同セグメントの中で、アジュールの2019年度第4四半期の売上高成長率は対前年同期比で64%増と非常に大きな伸びを続けており、先ほど見たオフィス365のようなサブスクリプションモデルのビジネスの売上高が大きく伸びている様子がうかがえる[6]。

 マイクロソフトの主力製品であるソフトウエアはインターネットの進化にともなって、ネットワーク経由で提供できるようになった。同社はその波に乗り、これまでの自社製品の販売方法を抜本的に切り替えたといえる。

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