SDGs入門

SDGsの読み方はなぜ「エスディージー"ズ"」なのか 日本総合研究所 村上芽、渡辺珠子

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途上国・新興国にとっての持続可能な開発

 途上国(developing countries)は、「開発途上国」「発展途上国」などとも言われるように、これから成長していこうという国々です。その中でも特に成長の著しい国を新興国と呼びます。

 SDGsの達成できない世界になってしまうことを避けたい以上、これからの成長に、「持続可能性」が非常に重要な条件になることは言うまでもありません。

 すなわち、これから成長する途上国は、先進国における公害や環境破壊、健康問題、労働問題といった経済成長の負の歴史をそのままたどりたいはずはなく、後発なりのメリットを活かしてジャンプアップしたいはずです。ちなみに固定電話を経験せずにいきなりスマホを手にするとか、電気代の高い白熱電球の時代を経ずにいきなりLEDが普及するようなことを、「蛙飛び」の開発と言います。

 アメリカ人の生活は、地球3.9個分の資源を必要とする(※14)、などというたとえをされるように、みなが「今まで通り」に経済成長しては、地球がもたなくなり、結局総倒れになってしまうことが危惧されます。

※14 Global Footprint Network "Living Planet Report 2014 Summary" P13 出所:https://www.footprintnetwork.org/content/images/article_uploads/LPR2014_summary_low_res.pdf

 と、先進国から見れば考えたいところですが、途上国からすればそうはいかない、納得できないところもあったのです。

 地球温暖化にせよ生物多様性の喪失にせよ、先進国がこれまで主導してきた世界経済の結果として起こった環境問題であり、「我々は早く発展したい。だから、安く発電できる発電技術を使って電気を通し、井戸を掘ったり灌漑技術を導入したりして水の使える量を増やし、高速道路を整備して個人所有の自動車でどんどん移動できるようにしたい」、といったことが、環境問題に対する途上国の最初の反応でした。

 このため、パリ協定の前の地球温暖化防止に対する国際的な約束だった「京都議定書」(1997年採択)では、先進国にのみ、温室効果ガスの排出削減について定量目標が課されたのです。こうした開発を巡る考え方のギャップは、「南北問題」とも言います。北=先進国、南=途上国という構図です。

 しかし、経済大国となった中国やインドが積極的に動かなくては、環境問題が解決されるはずはなく、環境問題が深刻化すればその悪影響をひどく被るのは途上国であるという予測も出てきました。そこで、「途上国も途上国なりに、できることをやるべき」という流れが強くなり、パリ協定では途上国も含めた参加国がそれぞれ、自主的な国別目標を設定することになりました。

 SDGsでも、ゴール達成のための資金源は、先進国や国際金融機関から途上国への援助だけではありません。後で取り上げるように企業の役割が大きいですが、加えて、途上国自身による資金拠出も、期待されています。

(つづく)

村上 芽、渡辺 珠子 著 『SDGs入門(日経文庫)』(日本経済新聞出版社、2019年)、「第1章 まずはSDGsを理解しよう」から
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー。京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て2003 年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援や気候変動リスクと金融などが専門。
渡辺 珠子(わたなべ・たまこ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト。名古屋大学大学院 国際開発研究科修了。メーカー系シンクタンクを経て2008 年日本総合研究所入社。国内外の社会的企業、インパクト投資、スタートアップ支援が専門。

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キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、経営、ESG、SDGs

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