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郵政グループ3社の不適切な金融商品販売、問題の本質とは? 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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 最近、日本郵政グループ3社における不適切な金融商品(投資信託と生命保険)販売の問題による波紋が大きく広がっている。

 事の発端は、6月14日、傘下のゆうちょ銀行が、不適切な契約手続きで高齢者に投資信託を販売していた、と明らかにしたことから始まる。70歳以上の顧客を勧誘する際に健康状態等を確認する内部規定を履行せず、申込時になって確認を行っていた、とのことであった。今年2月に社内で明らかになった同様の事案をもとに社内調査を行ったところ、件数にして1万5000件以上、233ある直営店の約9割が社内ルールに抵触しており、全社的な問題であることが明らかになった。

 他行の銀行窓口でも投資信託の販売に関して過去に同様の問題が発生したことはあるが、最近では、多くの銀行が、コンプライアンスの徹底によって再発防止を図っている。今回、膨大な数の不適切販売が明らかになったゆうちょ銀行は「周回遅れ」と言われて致し方ないほど、コンプライアンスの杜撰(ずさん)さを露呈したものと言える。

 次は、傘下のかんぽ生命保険と日本郵便で、最大9万3000件に上る生命保険の不適切販売が明らかになった。かんぽ生命の植平光彦社長と、保険商品の販売委託先である日本郵便の横山邦男社長は7月10日に記者会見を開き、今後の対応や第三者委員会設置などの方針を発表している。この問題は日本郵便の一部局員が保険契約に関する手当金や営業実績を上げるため、「乗り換え潜脱(せんだつ)」を行っていたというもの。大きく分けて「二重払い」と「無保険」に関するものがある。

 「二重払い」では、新・旧保険の乗り換えに際して、故意に長い期間、新・旧の両保険料を顧客に支払わせていた。6カ月以上にわたり二重払いをさせていた事例が、2016年4月から2018年12月までの契約分で、約2万2000件あったという。日本郵便では、内部規定で、新しい保険を契約した後、6カ月以内に旧保険を解約したケースを「乗り換え」と定義し、契約した局員に支払われる手当金や営業実績は「新規契約の半分」と規定していた。通常、顧客にとって保険料を二重払いすることの合理性はない。二重払いのケースの多くは、郵便局員が、「新規契約」に相当する満額のインセンティブを得るために、強引な営業で、旧保険の解約時期を意図的に遅らせたことによるものとしか考えられない。

 「無保険」では、新・旧保険の乗り換えに際して、故意に早い時期から、顧客に旧保険を解約させていた。まとまった金銭を一時的に必要とするような例外をのぞき、旧契約の解約は、新契約と同時にするのが通常であるが、新規契約の4カ月以上前に旧保険を解約させ、その間、無保険状態にしていた。新規契約前の4~6カ月間に無保険だったケースが2016年4月~2018年12月の契約分で約4万7000件(2016年度約1万7100件、2017年度約1万6600件、2018年4~12月約1万3000件)もあった。

 日本郵便の内部規定では、顧客が旧保険の解約から3カ月以内に新しい保険を契約した場合も乗り換えと定義され、局員の手当金や営業実績が下がる。満額のインセンティブを得るには、新規契約の4カ月以上前に旧保険を解約させる必要があった。

 もちろん、乗り換えの際には、新旧契約の比較表を用いて顧客に契約内容を丁寧に説明するといったルールはあったが、乗り換え潜脱による契約は、内部規定上、乗り換えに当たらないため、そのルールも適用されていなかったとされる。結果として、顧客が不利益となる事実を理解せずに、事実上の乗り換えをさせられていたという重大な問題が発生していた可能性が高い。多数の郵便局員が、「新規契約」に相当する満額のインセンティブ欲しさに顧客へ不当な説明を行い、顧客に大きな不利益を与えていたのだとすると、保険業法に違反する、重大なコンプライアンス違反である。

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