長島聡の「和ノベーションで行こう!」

機械制御用の独自AIで生産性向上と品質担保を両立させたい 第28回 エイシング 出澤 純一・代表取締役CEO

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エイシングを創業する前に卸売業を始めたワケ

長島 ところで、先ほどちょっと話が出ましたが、エイシングを創業する前に、卸売りの会社を始めました。普通は、企業に就職しますよね。しかもAIを研究するのに、なぜ日用雑貨品の卸売り会社を立ち上げて経営されたのでしょうか?並みの覚悟ではなかったような気がします。

出澤 一応、就活はしました(笑)。卸売りを起業したころ、実は某大手金融系企業から内定をいただいていましたがそれでも起業を選んでいます。最近、社長になる人の大事な要素は「100%バカになれること」という記事をどこかで見たのですが、妙に納得しました(笑)。正直に言うと卸売りでは一時、苦い思いもしています。今振り返ると、よくぞ自己破産しないでこられたと思うことが多々あります。

 当時は、AIの研究をしたいというと相手にしてもらえない時代で、それなら受託ソフトウエア開発で起業しようとしたのですが、受託開発は当時、インドや中国のほうへ仕事が流れていました。次に、AIの研究開発費が捻出できるほど収益が出るビジネスは何かという発想をもとに、これまでの研究範囲を無視して始めたのが結果として日用雑貨品の卸売りです。

長島 会社勤めより起業を選んだのですね。

出澤 当時は、学生ながら、「ビジネスをやりたい」「起業したい」という願望のほうが強く、「AIは起業する選択肢の一つだ」ぐらいに割り切っていました。実は学生のとき早稲田大学で初めて開催された起業家コンテストに参加しまして、傘のシェアリングサービスのアイデアで、なぜか初代の優勝者になっています。

長島 傘のシェアリングサービスは、それはそれでAIとまったく関係ありませんね(笑)。

出澤 そんなこともあって、食えないと分かったAIやITでの起業は諦めたものの、「何とかしなきゃいけない」と思いながら、起業したいので内定は辞退し――起業するあての事業はなかったんですが――どうしよう、みたいなところからのスタートです。

 まずは大手家電量販店で、年齢としてぎりぎりのところ、アルバイトを申し込み、それで1年半ぐらい店舗の販売員として働きました。このとき、アルバイトなのに商品を売りに売ったのです。社員の人からは「好きなときに1時間でも来てくれればいい」ぐらいのことを言われるほどでした。

 そこで家電を売るのが楽しくなったことが、後に卸売りでの起業につながりました。その頃、大手家電量販店での私の働きぶりを聞いた、大手ディスカウントストアの役員さんが連絡してきまして「業態変換で家電売り場を作る」ので、新しく作った売り場をコンサルティングしてくれと言います。

 私はそれを引き受け、その売り場のある地方都市へ毎週末、交通費は自腹かつ無給でうかがいました。その結果、売り上げが何割か上がったという実績が出まして、お礼に私から商品を仕入れたいという話になったのです。小売りへ卸せるほど商品をそろえることも、その大手ディスカウントストアの後ろ盾で実現し、卸売りを始めることができました。

 そうして最初は家電商品を卸していましたが、それから化粧品、タオルなどディスカウントストアで扱うような他の日用雑貨品に取り扱いが広がり、他のドラッグストアにも卸し始めるなどを経て、日用雑貨品の卸としてやっていけるようになりました。

「IoT」「5G」「AI」でエイシングが描く未来

長島 最後に、今後の展開や抱負についてうかがえますか?

出澤 やはり、次世代通信規格の「5G」、すべてのものがインターネットにつながる「IoT」、それに「AI」――これら先端技術が複雑に絡み合った状態で、今後、10年ぐらいは、大きな技術革新が続くでしょう。それが産業界にも波及して、本当のインダストリー4.0的なビジネス変革が起こると私も確信しています。もちろん、その中で、私たちが開発したDBTをはじめとするAI技術は、時代がどう変わろうと、求められるものだと自負しています。

 ただし、先端技術を一個ずつ、単体で見ていると将来を見誤るだろうと、個人的には感じます。IoTは概念的なものですが、5GとAIは相当密接に絡み合って技術革新を起こしていくでしょう。

 気になるのは、多くの日本企業は、5Gが通信技術の変革であることは理解しているものの、それをビジネスに適用する際のユースケースまで具体的に描き切れてないのではないかということです。

 先般、ドイツのハノーバーへビジネスで行ったのですが、海外の企業はすでにユースケースを描き、その先のビジョンや仮説も何個か持っており、大きなショックを受けました。日本も的中するかどうかは別に、ビジョンや仮説まで複数作り、それに向かって研究開発を進めるスタイルにしないと、これからは技術で世界と競争することができなくなると危ぶんでいます。

 日本企業はまだ、製造系の技術、機械製品の品質に関して、世界で群を抜いており、ドイツと肩を並べるレベルは維持していると思っています。私たちの技術に、日本の製造機械の技術などを組み合わせて、日本から世界へ発信していく形にすることが必要なのだろうと今、強く感じています。

長島 今日は、どうもありがとうございました。

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キーワード:AI、IoT、ICT、経営、人事、人材、働き方改革、イノベーション、ものづくり、技術、製造、経営層

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