誤解だらけの健康管理術

お腹凹ませる 産業医推奨「ほどほど」ダイエット 健康企業代表・医師 亀田 高志

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 本格的な夏到来を目前にして、ビジネスパーソンの間ではダイエットへの関心が高まっています。お腹まわりを気にする人が多いようで、ジョギングや食事制限の検討を始める人も少なくありません。こうしたダイエットは本当に効果があるのでしょうか?ビジネスパーソンを身近でみている産業医の立場から考えてみます。

夏場は痩せたい人が増える?

 身長をメートル換算して、2乗した値で、体重(キログラム)を割った数字を体格指数(Body Mass Index)、略してBMIと呼びます。日本人の場合は25以上が肥満との扱いになりますが、アメリカでは30以上の場合とされています。BMIは22くらいが健康管理上はベストと考えられていますが、若い女性の場合には「22じゃ、太りすぎじゃないの?」と感じるかもしれません。けれども、中高年男性では「結構、スリムな値だな」というように、その印象は様々でしょう。

 いわゆるメタボ対策の関係で一般定期健康診断でも腹囲と呼ばれるウエストサイズのような測定をします。ご存じのように男性は85センチ以上、女性は90センチ以上が要注意となりますが、男性より平均的には小柄な女性の基準値が大きいかというと、相当する内臓脂肪面積がおのおの100平方cmに基づいているから、と説明されています。

 このように健康管理の面でも体重やウエストサイズに注目が集まりやすいのですが、見栄えの点でも特に夏場は体形が気になる人が少なくないようです。そのため、割れた腹筋を強調するダイエット食品や健康器具、スポーツクラブの宣伝が氾濫しているわけです。

 人類はずっと飢えにさいなまれてきました。ですから、飽食の時代に暮らす我々は幸福であるはずです。しかし、食欲は必要最小限ではなく、明日は食べることができないかもしれない前提で最大限で働き、自然と余分な栄養は脂肪組織等に蓄えられることになります。運動や食事に気をつけないままだと、自然と年齢と共にウエストサイズが増えていくものです。

 生物学や心理学の分野では、男性は女性の細いウエストに魅力を感じやすいという、女性から見れば“けしからん”と感じそうな説も提唱されています。はやり廃りもありますが、男性紳士服は、だんだんスリムなものになってきているようにも感じます。このように、ウエストサイズは健康にまつわる話題としても特に関心の高い事柄かもしれません。

効果的な7つのダイエット習慣

 では、どのようにダイエットして、見栄えのよい体形にするのがよいのでしょうか。単純に考えれば、カロリーの摂取と消費、つまりインとアウトを調整すれば良いわけですが、それすら、なかなか簡単ではありません。また、体重の増減にそれだけが関係しているわけでもないのです。以下に健康管理を担う立場で推奨できるダイエットのポイントをご紹介したいと思います。

(1) 定期的な運動

 ウオーキングやジョギング等の運動を行うことは当然ながらダイエットに効果があります。腹筋や背筋等の筋力をアップする運動もウエストサイズを小さくするのに有効です。この際に考えたいことは、継続できることです。いきなり負荷をかけるのではなく、できる限りなだらかに増やしていくことが継続のために有効です。ケガをしないように、準備体操や整理体操を行い、柔軟体操やストレッチを組み合わせると効果的です。後に触れる睡眠と関連して、深夜に運動すると脳が覚醒してしまい睡眠の質が低下します。できれば、運動は早朝ないし、夕方に行うのがよいと思います。運動は直接的にカロリーを消費するだけでなく、日々の代謝を亢進(こうしん)させることで、ダイエットに効果をもたらします。

(2) 適切な食習慣

 ダイエットと言うと、飲まず食わずの状態を耐え忍ぶことを想像する人がいるかもしれません。スタイルの良いタレント、モデル、俳優といった人たちがテレビ画面や雑誌等に出て、8頭身や小顔等が持てはやされるために、無理なダイエットを繰り返す人が少なくないかもしれません。そのような人が高齢になった時に様々な健康リスクが懸念されます。特に女性の場合には骨がもろくなる骨粗しょう症に陥る可能性があります。骨の量は20歳前後がピークであるため、中高年期以降に食事を見直しても顕著な効果は期待できません。若い時期から、しっかりとカルシウムとビタミンDを摂取し、運動負荷で骨を育て、強くしておかなければならないのです。無理なダイエットが良くないことは自明です。また男女とも中高年以降、筋力の低下が避けられませんが、その防止は運動と共に十分なたんぱく質の摂取です。通称ロカボ、“低炭水化物ダイエット”のやり過ぎで、ご飯やパンを一切断っては健康を害してしまいます。健康的でウエストを細くするのに有効でとっつきやすいやり方は、ご飯やパンをこれまでの半分にしてみることです。ややもったいない気もしますが、おかずはしっかり食べて、出てきた炭水化物だけ半分残すようにするのです。さらにビタミンやカルシウム、食物繊維等を十分に摂って、バランスを保つことが大切です。それから、食べる順番を工夫し、最後に炭水化物を食べるようにすることもお勧めです。

(3) 早寝早起きで良質な睡眠習慣

 深夜まで起きていて寝不足になると、いわゆるメタボを助長することが分かっています。運動によって睡眠の質は改善しますが、十分な睡眠をとらないでいると、せっかくの運動の効果が得られにくくなります。最近はスマホのアプリを使って、睡眠の質をモニタリングできるようですが、それ以前にスマホやタブレット、モバイルPC等を夜にはできるだけ遠ざける方が重要です。よく知られるようになりましたが、画面からは青い波長のブルーライトが発散していて、眼球から脳を刺激し、特に深夜に見ると睡眠に向かおうとする脳を覚醒させてしまいます。晩ご飯の後には、ブルーライトを遠ざけ、部屋の明かりを暗めに落としておくと、寝つきもよく睡眠の質が保たれやすくなります。仕事の都合がつくようなら早く就寝し、最近は「朝活」という言葉もあるくらいですから、集中力の高い早朝から運動したり、仕事に取り組むと良いでしょう。もちろん、寝室の温度や湿度、寝具を整えて、物理的に眠りやすい環境を整えることも大切です。

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