ニッポンの新しい働き方

夏休みの旅先で仕事OK 日本航空がワーケーションを拡充する理由

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 多様な働き方をどう実現させるかが企業にとって大きな課題になっている。社員のモチベーション向上や新卒採用など通じて企業の競争力を左右するからだ。この連載では多様な働き方を追求する企業の取り組みを紹介し、その実現になにが必要かを探る。第1回は休暇と仕事を両立させる「ワーケーション」を他社に先駆けて導入した日本航空。もともとは有給休暇の取得増が狙いだったが、社員のアウトプットを通じた生産性の向上にもつながっているという。人財戦略部で同制度の普及に取り組む東原祥匡さんに聞いた。

社員3分の1退職 危機感が導入後押し

――ワークスタイルの変革のきっかけは。

 当社は2010年の経営破綻をきっかけに従業員の3分の1が退職する事態に直面し、間接部門の労働生産性向上と人材流出の食い止めが急務となりました。2014年にトライアル運用を開始した在宅勤務制度は、ライフイベントを抱えた社員の支援と生産性向上のために導入した施策です。2015年にオフィスのフリーアドレス化、スマートフォン・ノートパソコンの貸与が始まり、2016年から、理由を問わず自宅外での作業を認める現行のテレワーク制度に移行。2018年度からは、週2回までの取得を認めました。2017年度に日本航空グループ全体で約1万3000件だった利用は、2018年度には2万件を超えるまでになっています。

――ワーケーションについて教えてください。

 ワーケーションとは、Work(仕事)とVacation(休暇)を掛け合わせた造語です。定義はさまざまですが、当社では、休暇中の労働時間を会社が公式に認めることにより、長期休暇取得のハードルを下げる試みとして運用しています。

 テレワーク解禁後、多くの社員から「帰省先でもテレワークを行いたい」という声が寄せられたことなどがヒントになり、ワーケーション導入の検討を始めました。ワーケーションを制度化すれば、もし休暇期間中に会議などの用件が入ったとしても、休暇の取得自体を諦めたり、計画の大幅な変更をしたりしなくてもよくなります。懸案だった有休取得率向上と生産性向上にもつながると判断し、2017年夏にトライアル導入、2018年に本格導入に踏み切りました。

 対象となるのは日本航空グループ3万3000人のうち、間接部門に所属する約4000人です。パイロットや客室乗務員、整備部門など、シフト勤務が前提となっている現業部門から不満の声が出ないよう、丁寧に企画意図を説明し理解を求めるだけでなく、現場業務のIT化やサポートスタッフの拡充などを実施し、現業部門の効率化も図りました。

 2017年に実施したトライアルは7月と8月の期間限定で11人日(人日とは申請数から算出した稼働日数)、2018年は7月から9月までの期間で78人日、2018年通期では174人日という結果が出ました。今期もさらなる増加を見込んでいます。

――ワーケーションを「休暇中に労働を強いる制度」と見る人もいます。導入にあたって注意を払った点は?

 ワーケーションはあくまでも年次有給休暇の取得を増やすための制度だということを正しく伝えるため、ワークショップを開催したり、社内報やイントラネットを通じてワーケーションを紹介したりするなど、啓発活動に力を注ぎました。勤怠システムの時間選択項目にワーケーションを追加して、従業員の目に触れる機会を増やしたり、2017年と2018年には、北海道斜里町や福岡市など、テレワーク、ワーケーション先に滞在中の役員をテレビ会議でつないで、役員会を実施したりもしました。いずれも認知度の向上に役だったと思います。

有給得率90%、時間外・休日労働は7.9時間に

――導入後の効果は。

 業務の廃止や改善、ソフトウェアを活用した事務作業の自動化などにも取り組んでいますので、すべてがテレワーク、ワーケーションの成果とはいえませんが、2017年実績で年次有給休暇取得率90%、時間外・休日労働時間の月次平均は7.9時間を達成することができました。有給休暇の取得率100%、残業時間0時間の達成にはもう少し時間がかかりそうですが、すでに半数の職場が総実労働時間1,850時間(※)を達成している状況ですので、これからも改善を進めていければと思っています。

(※)所定労働時間が8時間の場合、年次有給休暇を20日取得し、月間の時間外休日労働時間が4時間程度にあたる。

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