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キングダムに見る中国との付き合い方 渡辺義浩・早稲田大文学学術院教授に聞く(上)

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 6月末の20カ国・地域首脳会議(大阪G20サミット)における米中首脳会談で、貿易協議の再開が確認されたが、抜本的解決は遠く、第4弾の対中関税の発動リスクはなおくすぶる。キーワードは5月のワシントン交渉で中国の劉鶴副首相が持ち出した「譲れない点」という言葉だ。イデオロギーやメンツの問題ではない。古典中国の第一人者、渡辺義浩・早稲田大文学学術院教授は「中国の歴史的なDNAを知らないとビジネス面でも中国との付き合い方は会得できない」と説く。

秦・漢時代から変わらない中国の統治システム

 ――ビジネスシーンでも、融通むげなムードだった中国側が、突然態度を一変させることがあります。「中国は分からない」と嘆いた経験を持つ読者は少なくないでしょう。

 「中国共産党のイデオロギーや大国の誇りとった抽象的な問題ではありません。春秋戦国時代から脱却して中華世界を統一した秦・漢の古代中国時代から2000年以上受け継がれてきた国家、民衆のあり方が現在も具体的に息づいています。この一線を越えると中国人は『譲れない点』と態度を硬化させるのです」

 ――劇画「キングダム」(集英社)の描く時代ですね。若者だけでなくスタートアップ経営者らビジネスパーソンの間でも読まれ、関連したビジネス書も発行されています。

 「中国ほど繰り返し帝国を再統一した国家は世界史上ありません。日本は隣国だからかえって見えにくいのですが、中国の歴史は実にまれなケースなのです。ローマ帝国の場合、崩壊後は2度と再興しませんでした。インド大陸もマウリヤ朝以降は統一王朝は現れませんでした」

 「広大な領域と多様な民族を持つ中国大陸を一元的に支配する統治システムを秦が開発し、前漢・後漢でアレンジして完成させました。現代の習近平政権に至るまで、中国史は『古典中国』モデルの遺産と伝統を引き継いでいるのです。新しい国が興って支配者が代わっても統治システムは変わりません。何度壊しても、繰り返し同じ体制の国家が生まれるのです」

 ――近代国家への脱皮も共産主義による統治も、時代ごとに表面だけを差し替えて儒教国家的な基層部分は変わらないというのですね。

 「日本人が一般に仁や孝という言葉で理解している儒教ではありません。孔子は独創的な哲学者というより、古来からの習わしや善悪の感覚、宗教的なつながりなど中国人の肌感覚を体系化した理論家でしょう。さらに本来は対立する思想であった法家のエッセンスをも取り込んだものが中国の儒教です」

 「秦の始皇帝が採用したのは法家で、理想は中華の統一です。単一の強大な権力者が、中国全土を統治する中央集権型が望ましいのです。この思想を徹底させることで統一しました歴史の歯車をを数百年早め統一しました」

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