愛されシニアを目指すスキルアップ道場

「イマドキの若いヤツらは大丈夫か」と嘆くシニアこそ大丈夫? トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

ベテランだから良いことと、ベテランだからこそ困ったことの両方がある

 この連載では50歳以上を「シニア」と呼んでいるのだが、50年以上生きて、30年以上仕事してきた人には、良くも悪くも自分の考えや自分のやり方、自分の判断基準があり、蓄積した知識があるだろう。ベテランならではの勘が働くこともあれば、ベテランだからこそ持つ広い人脈を活用して課題解決に一役買うこともできる。

 シニア同士が居酒屋で、「イマドキの若いヤツらは大丈夫なのかね?やる気あるんだかわからないし、打たれ弱いし、貪欲さもないし、何か言うと、すぐすねる」などと嘆きながらビールを飲んでいたりすることもあると聴く。そうしたセリフが出てくるのはこれまでの経験に裏打ちされた自信があるからだろう。

 一方、ベテランだから困ったこともある。「これが正しい」「これはこうするものだ」といった思い込みが強すぎることだ。知らず知らずのうちに、自分の考えややり方、判断基準に固執してしまい、「他のやり方がある」「他の考え方がある」ということに思いが至らないことがある。とりわけ、自分より年若い人の意見に耳を傾けなくなる。自分より経験が浅いからたいした考えはないだろうと決めつけてしまうのである。

 ある日突然「聴く耳を持たず」状態になるわけではなく、徐々に徐々に変化していくから、自覚ができない。自分がかつてなりたくなかった「頑固でメンドクサイ年長者」にいつの間にかなってしまうのだ。それを誰かが指摘してくれればよいのだが、上司も同僚も腫れ物に触らないように放置していることが多い。ましてや後輩はそれを指摘してくれない。

 結果としてシニアは気づかないうち、自分だけご機嫌になって歳を重ねてしまう。

 そうしたシニアを見て、若手はこう思っているに違いない。「イマドキのシニアって大丈夫か?」。

 あるとき、こんな話を聴いた。

 「うちのシニアは、かなり“昭和”なんですよ。“書類作成で終電まで頑張った!”と自慢してみたり、“お客様とは対面で話さないといい打ち合わせはできないよね”と言ったり――。頑張るのはいいし、対面での打ち合わせもいいけど、ITやネットを活用して、効率よい書類の作成方法を考えるとか、オンラインでミーティングするとか、時代に合った新しいやり方を取り入れればいいのに、そういう可能性を考えもしないんです」

 この愚痴をこぼしていたのは、30代後半くらいの人だったが、私が思わず、「提案してみたらいかがですか?」と言うと、目の前で手をひらひらさせて答えた。「ダメダメ。無理です。まず僕たち後輩にアイデアがあると思っていないし、若い後輩の意見に耳を傾けようとも思わない。仮に勇気を出して提案しても、“終電まで頑張ったのはオレだけだし、迷惑かけてない”“それは分かるけど、お客様は対面を望んでいる”などと反論されるのがおち。以前、本当に言ったこともあるんですが、全否定。自分に自信があり過ぎるのから、若い僕たちの意見などまともに聞いちゃいない」。

 確かに、“終電まで頑張る”“お客様と対面で打ち合わせる”というのは、そのシニアにとって、今日までの自分を作った成功体験だろう。しかし、そのほかにも、仕事で成果を上げることができ、より時代に合った方法がほかにあるかもしれない。その可能性に思い至らない、あるいは自分より年下の人たちの考えや意見に耳を傾けることができないというのは相当、頭が固くなっている証拠だ。

 そういえば、別の若いマネジャーにはこんな不満を言われたことがある。「シニアの人たちに、もっと謙虚さや客観性を持ってほしいのだけど、なかなか言えないですよ。もし指摘しても、それで機嫌を損ねられれば仕事がやりづらくなるだけ。相手が元上司だったりすると一層言いにくい」。

 「謙虚であれ」「自分を客観視せよ」などは、よく新人研修で「社会人になったからには、謙虚に学び、自らを客観視し、成長し続けてください」などと社長や人事部長から訓示されるような内容なわけだが、シニアにも同じことが言えるのだなぁと思ったものだ。

 では、シニアはどうしたらよいのか。

 50代になってから、私は「後輩たちは思っている文句を自分には直接伝えない。よほどのことがなければ、誰も諭してくれない」と以前より意識するようになり、自分の言動をできるだけメタ認知(自分の言動をもう一人の自分が客観的に捉えること)しようと心掛けている。それでも、後輩たちからは、「田中さん、大丈夫?」と思われている可能性はあり、ときどき不安にもなる。

 「謙虚である」「自分を客観視する」というのは、シニアの方が自ら進んで身に付けるほかないのである。周囲が注意してくれないシニアこそ、自分の言動をメタ認知するもう一人の自分を常に脳内に持っていたいものだ。たとえば、シニアに不満や不安を感じていた若いころの自分をもう一度思い出して脳内でしゃべってもらうとよい。もし「イマドキの若いヤツらは大丈夫か」と言いそうになったら、自分で自分にこう言って欲しい。「イマドキのシニアって大丈夫か?」。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ
 あなたの年上部下が、独りよがりで頑固で若い人に耳を傾けず、“昭和な”やり方や考え方に固執しているとしよう。そんなとき、上司であるあなたはフィードバックをするだろうか。

 年長者に何かいうというのは思いのほか難しいもので、私もかつてシニアな先輩たちには何も言えなかった。

 しかし、管理職というのは、チームをうまく機能させる責任を持つわけだし、そのために必要なことはしなければならない。相手が年上であろうと遠慮なく、管理職は「役割」として、シニアにフィードバックしたほうがよい。

 「○○さん、若い人の意見も最後まで聴いてもらえますか?」

 「○○さん、若い人に相談してみると、おもしろいアイデアを持っているものですよ。彼らのアイデアと○○さんの経験を融合させたら、よりよいものができそうなんだけど」などと言ってみる。上司が言わずに誰が言うのだろう。嫌な役割かもしれないが、若い人のためだけではなく、これからもまだまだ働き続けるであろうシニアのためにもぜひ指摘してほしい。
田中淳子(たなか・じゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。
※日経BizGateの記事を無料で定期的にお届けする会員登録をおすすめします。メルマガ、印刷ページ表示、記事クリッピングなどが利用できます。登録はこちらから

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。