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「リーダーが尊敬するリーダー」チャーチルの指導力 冨田浩司・G20サミット担当大使に聞く(4)

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 リーダーが尊敬するリーダーとして、第2次世界大戦のチャーチル英首相(1874~1965)の名前は外せない。21世紀に入っても米ホワイトハウスの執務室に胸像が飾られたチャーチルは、米中ロの大国トップら集結している20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも、アンケート調査すれば上位入賞は確実だろう。トップ同士の緊密な人間関係の基礎に国際政治をリードしていくのは、チャーチルの首脳外交が原型だ。国際企業のCEO(最高経営責任者)らにも人気が高い。この20世紀を代表するリーダーから、2019年に学ぶべき点は何か。現役外交官のかたわらチャーチル、サッチャーの評伝も著している冨田浩司・G20サミット担当大使に聞いた。

平時では「上の下」、危機の際には非凡なリーダー

 現在もチャーチルに関する著作は絶えず、次の英首相として現在最有力のジョンソン前外相もチャーチルの評伝を出版している。冨田大使は人気の理由として「大戦時に苦境にあったあらわ英国を勝利に導く一方、挫折も味わったドラマ性」を指摘する。2つの大戦時にともに閣僚のポストにあった指導者はチャーチルだけだ。ドイツ敗北後に予想外の退陣を余儀なくされたが、6年後の1951年に再び政権を奪回した粘り強さも、リーダーらが模範とするところだろう。

 しかし完全無欠な指導者では決してなかった。数々の挫折も本人のオウンゴールの面が否めない。半世紀以上の議員生活の中でたびたび党派を変え、落選も経験している。海相、内相、蔵相などを歴任しながら第2次大戦直前には「時流に遅れた、終わった政治家」とみられていたという。英保守党の中では異端の存在だった。

 チャーチルびいきのジョンソン前外相ですら、「歴史的失敗」として第1次大戦のガリポリ作戦の敗北、金本位制復帰の混乱、対インド政策、ジョージ5世退位問題など7項目を著作の中で列挙している。個人生活でも葉巻に代表されるぜいたくな生活を好み、朝のハイボールから夜のブランデーまで過度にアルコール摂取していたことも有名だ。時には持病の鬱病にも悩まされた。

 2019年の現時点ならば首相はもちろん、議員として当選し続けられるかも、かなり怪しい。冨田大使は「平時の指導者に求められる最も重要な資質は資源配分の技術だ。この面でチャーチルの技量は上の下か、中の下」と採点する。しかし危機の政治では疑いなく超一級品だったという。

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