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G20サミット、「ケミストリー」が交渉の成否決める 冨田浩司・G20サミット担当大使に聞く(3)

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 国際社会の注目が集まった大阪市での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)。トランプ米大統領を始め中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領ら、世界を動かす強力な大国トップが一同に集結した。ここで軽視できないのがトップ同士の「ケミストリー」(相性)との兼ね合い。企業同士でも、一見非合理に映るウマが合う、合わないの関係は合併・提携・買収といった重要な経営判断の場面で大きく影響する。G20サミットを担当する冨田浩司大使に聞いた。

首脳同士の人間関係が極めて重要だった1980年代

 トランプ大統領を初めとする大国トップの個性が国際政治を決める現在と、多くの共通点を持つのは1980年代だという。レーガン米大統領(1981~89年)、ゴルバチョフ旧ソ連書記長(ロシア大統領85~91年)、サッチャー英首相(79~91年)、コール独首相(82~98年)、ミッテラン仏大統領(81~95)ら際だった個性を持つリーダーがそろって長期政権を担当し、冨田大使は「巨人の時代」と位置づける。冷戦崩壊という大転換期に「一握りの指導者が国際社会の方向付けに決定的な役割を担い、首脳間の人間関係が他の時代と比べられないほど重要な意味合いを持った」と冨田大使。

 

とりわけ女性リーダーのサッチャーは、対人関係において直感的な性格で、ケミストリーの問題は大きかった。女性を政治の中枢に登用することには全く関心を示さず、内外で一緒に仕事をしたのは9割がた男性だったという。年上で包容力の男性へ傾斜する傾向があり、逆に疎んじたのは風采が上がらず口べたなタイプだったという。滞英経験が長い冨田大使は「サッチャーは、自分と比べて知的に劣るというみなした男性は相手にしないのが常で優柔不断な相手は論外だった」としている。

 最も相性が良かったのは連携して冷戦終結を導いたレーガン大統領。「政治的な結婚」とまで例えられた。最初に会ったのはサッチャーが野党党首として訪米し、レーガンがカリフォルニア知事を辞任していた浪人時代の70年代後半で、いきなり意気投合して予定していた会談示談が倍に延長されたという。

 個人の自由を追究するという価値観を共有していたことに加え、「ともに政治的アウトサイダーだったことも、友情に似た関係を維持した原因のひとつ」と冨田大使は推測している。レーガンはハリウッドのB級俳優の出身。サッチャーは地方の食糧店の子女から女性初の英首相となり、偶然の指導者と呼ばれた。

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