コンサルタントが毎日やっている会計センスの磨き方

東急電鉄、日本郵政、ソニー...セグメント情報で知る真の姿 長谷川 正人

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■ソニーはゲーム・音楽・映画の会社、エレクトロニクス事業は利益最下位

 3番目に、本業とは関係の薄い事業が利益の稼ぎ頭になっているパターンを見ていきます。ソニーの名前を聞けばテレビ、ウォークマンに代表されるオーディオ・ビジュアルなどのエレクトロニクス、最近ではゲーム(プレイステーション)やスマホのエクスペリアを思い浮かべる人が多いかと思います。

 ソニーは1998年3月期に当時の最高営業利益を更新してから、長年、業績低迷に苦しんできましたが、2018年3月期には実に20年ぶりに最高益を更新し、さらに2019年3月期には2年連続で最高益を更新する見込みで業績は完全に復調しました。

 では、ソニー復活の原動力となった事業はどの事業なのでしょうか?

 ソニーは事業セグメントを下の表のように8つに分けていますが、ここではこれを5つの大区分にグルーピングして3年間の利益額の変化を上にグラフで示しました。

 多くの人がソニーの本業と考えるエレクトロニクス事業は最近2年間では主要5事業グループの中で利益額は最下位になっています。

 ソニー復活の主役はエレクトロニクスではなかったのです。

意外な分野が業績回復の立役者

 この3年間で利益を大きく伸ばしているのはゲーム事業(プレイステーション)と音楽・映画事業であることは明らかです。また金融事業(ソニー生命など)と画像センサー事業はそれぞれ毎年千数百億円程度の利益をコンスタントに稼いでいます(ソニーの長い業績低迷期では金融事業が利益の稼ぎ頭でした)。

 ソニーのエレクトロニクス事業でかつてのウォークマン、テレビのようなヒット商品が生まれているわけではないのに、同社の業績が完全に復活したのは、業績回復の立役者の事業がゲーム、音楽・映画、金融、画像センサーなど一般の人が「ソニー」と感じにくい分野のものが多いからなのです。 セグメント情報の分析からはこうしたこともわかります。

 ソニーのように、一般に本業と思われている事業とは別の事業(不動産、金融以外)のほうが利益を多く(あるいは本業とほぼ同等に)出している企業は他にも多く見られます。以下いくつか例をあげます。

・アマゾン・ドット・コム……一般にはネット通販(Eコマース)の会社と認識されていますが、セグメント情報を見ると毎年、Eコマース事業の利益水準は低く、利益の大半を稼ぎ出しているのはAWS(Amazon Web Services)というクラウドサービス事業です。クラウドサービスというのは、インターネットを通じてデータセンターの設備や機能などの情報システムを顧客企業に提供するサービスで、世界のクラウド市場ではアマゾン・ドット・コムのAWSがトップシェアを持っています。Eコマース事業が一般消費者を対象とするのに対して、AWS事業は企業を対象としたビジネスなので、AWSの名前は必ずしも一般に広く認識されていないのですが、AWSを抜きにしてアマゾン・ドット・コムの業績は語れません。

・ベネッセHD……ベネッセの名前を聞くと多くの人は通信教育の「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」をイメージすることと思います。しかし最近では介護事業すなわち老人ホーム事業が通信教育事業と並ぶ利益の稼ぎ頭になりつつあることはあまり知られていません。介護(老人ホーム)施設名にはベネッセの名前を冠していないこともあり、同社が介護事業を展開していることもあまり広くは知られていません。ベネッセの利益稼ぎ頭事業の変化の直接的な理由は、通信教育事業での顧客情報流出という突発的な事件にありましたが、中長期的に見れば子供の数は減少する一方、高齢者の数は増えていくので、時代の流れに合ったものととらえることもできます。

長谷川正人 著 『コンサルタントが毎日やっている会計センスの磨き方』(日本経済新聞出版社、2019年)、「習慣7 イメージだけで判断するのをやめよう」から
長谷川正人 (はせがわ・まさと)
大手コンサルティング会社勤務。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。滋賀大学大学院経済学研究科客員教授。日経CNBC「けいざい豆知識!『イチマメ』」にて会計・財務分野の解説者(2014年~2016年)1958年東京生まれ。1981年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業し、同年、大手コンサルティング会社に入社。これまで市場調査業務、証券アナリスト業務、経営コンサルティング業務、財務研修講師業務等に従事。会計・財務に関わる研修・講演を勤務先の若手コンサルタント、大手企業ビジネスマン、大学院生など多数に展開するほか、テレビ番組で解説者もつとめる。単著に『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』『ヤバい決算書』(以上、日本経済新聞出版社)、『「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい』(KADOKAWA)、『なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?』(東洋経済新報社)。共著に『経営用語の基礎知識』(ダイヤモンド社)、『未来萌芽』『新世代企業』『閉塞突破の経営戦略』(以上、野村総合研究所)。趣味はビール缶コレクション

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、経営

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