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東急電鉄、日本郵政、ソニー...セグメント情報で知る真の姿 長谷川 正人

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■素顔は巨大な金融機関だった日本郵政

 パターン2は、金融事業が利益の稼ぎ頭になっているケースです。日本郵政の会社名は日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険と比べて聞く機会が少ないと思います。日本郵政という社名にはそれほどなじみがなくても郵便(局)の会社という印象を持つ人が多いようです。日本郵政とはいったい、何を事業としている会社なのでしょうか?

 まず4社の関係を説明しておきます。

 日本郵政(Japan Post Holdings)は郵政3事業の持株会社です。同社の傘下にある主な事業子会社は3つあり、郵便・物流事業を担うのが日本郵便(Japan Post)、銀行事業を担うのがゆうちょ銀行(Japan Post Bank)、生命保険事業を担うのがかんぽ生命保険(Japan Post Insurance)です。

 2015年、日本郵政は、子会社であるゆうちょ銀行、かんぽ生命とともに3社同時に親子上場を果たしました。

 4社の関係がわかったところで、改めて日本郵政のセグメント情報から、この企業グループはどの事業で利益を出しているかを見ていきます。

注) 日本郵政グループが公開しているセグメント利益は、営業利益ではなく経常利益

低収益の郵便事業

 上のグラフから明らかなように、日本郵政の利益を支えているのは圧倒的に銀行(ゆうちょ銀行)、生命保険(かんぽ生命)であり、誰にもなじみ深い郵便・物流事業は毎年、利益が3事業中、最も低い水準にあることがわかります。

 3事業子会社のうち、日本郵便だけが上場していない理由もこのグラフを見れば明らかです。日本郵便は利益があまり出ないので上場できるような会社ではないのです。日本郵便が展開する郵便・物流事業は、メールやSNSの広まりなどにより年賀状など葉書や切手の需要は年々減少し、また荷物の配送(ゆうパック)もヤマト運輸や佐川急便などとの激しい競争にさらされていることがその背景にあげられます。

 このように日本郵政は利益を稼ぐという点からは、郵便・物流事業の会社というより、銀行(ゆうちょ銀行)と生命保険(かんぽ生命)を兼営する巨大な金融機関であると認識するのが正しいのです。

 日本郵政のように、一般に本業と思われている事業よりも金融事業のほうが利益を多く(あるいは本業とほぼ同等に)出している企業は他にも多く見られます。以下いくつか例をあげます。

・ソフトバンクグループ……携帯電話会社としてのイメージが強いですが、相次ぐ海外企業の大型買収、さらには「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(いわゆる10兆円ファンド)」の開始によって利益を稼ぐ構造は大きく変わってきています。2019年3月期にはファンドからあがる投資利益が、国内携帯事業の利益を上回る見込みになっており、ソフトバンクグループはもはや単に携帯会社という認識ではとらえられなくなりつつあり、投資会社と見るほうが適切になっています。

・楽天……アマゾン・ドット・コムと同様にネット通販(Eコマース)が本業と思われがちですが、利益面では楽天カードをはじめとする金融事業がEコマース事業に迫る利益を稼ぐようになってきており、楽天は利益構造では半分がEコマース、半分が金融事業の会社に近づいています。

・イオン……一般には総合スーパーの会社と思われがちですが、総合スーパー事業の稼ぐ利益水準は低く、イオンカードやイオン銀行などの金融事業が最大の利益を稼ぐ事業になっています。金融事業に次いで利益を稼いでいるのはイオンモールの不動産事業(テナントからの賃借料が収入源)です。

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