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シニアよ 外に出て学ぼう!費用は意外に安く交流も広がる トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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全く業界違いの様々な方と知り合えた

 そして、もう一つよかったのが、全く業界違いの様々な方と知り合えたことだ。授業後に時々開かれる飲み会や、春季と秋季の間に自主的に行う「大人の遠足」(授業で学んだテーマに関連した史跡や資料館などを訪ねる)――こういうものを通じて「自社や自分の常識と世間の常識の違い」を味わうこととなった。いかに世間が狭かったかを感じ、大学に行く楽しみは、そういう交流も含めてのものとなった。

 私が仕事の後に大学へ通うのを知った同僚が「私も心理学を勉強してみたい」といって都内の大学を探し始め、「早稲田大学 エクステンションセンター」で心理学を学んだということもあった。私もその後、日本女子大学で単発の心理学の講座をとったり、上智大学傘下のグリーフケア研究所が主催する「グリーフケア講座」に2年ほど通ったりした。シニアは自身の健康や家族の介護・死など、グリーフ(悲嘆)が身近になりつつある年齢である。上記講座でグリーフケアを学べたことで、人生とは何か、悲嘆とは何かを少しは理解できたように感じた。

 調べてみれば分かるが、全国の大学の多くが、社会人向けに学びの場を提供している。「公開講座」「エクステンションカレッジ」「オープンカレッジ」などのキーワードで、ネットを検索する出てくる。その大学の教員が担当する講座もあれば、民間企業などとタイアップし様々な実務家が担当する講座もある。実に多彩だ。1回単発の講座から、3カ月から半年といった長いものもある。また、同じ3カ月でも一人の先生の場合もあれば、様々な先生が担当される輪講スタイルもある。ポータルサイトもあるので、そこを見てみるのもよい。例えば、セカンドアカデミーがある。

 先日、「週1回、大学に通っているんです」と30代の方に話したら、「勉強はしたいけど、会社が派遣してくれる研修は種類が限定されているし、かといって大学院はハードルが高い。でも自腹で研修を受けるには高いし、どうやって勉強したらいいのかと思ったけれど、大学の公開講座は選択肢になかった。そもそも知らなかった!いいことを教えていただいた」と目を輝かせていた。案外、大学で社会人が学ぶという選択肢は知られていないようだ。

 一般の学生と同じ授業を大学で受けることも場合によって可能だ。学生が受ける通常の授業を社会人にも門戸を広げ、科目単体での履修を認めているケースがある。

 そのほか、数年前にちょっとしたブームになったのが、「MOOC(大規模公開オンライン講義)」である。Massive Open Online Coursesの略で「ムーク」と読む。大学の授業をオンラインで受けられるプラットフォームであり、日本にもJMOOCというポータルサイトがあるのでのぞいてみてはどうだろう?

 私は、「gacco(がっこ)」というサービスで、いくつかの授業を取ってみたことがある。パソコンやタブレット、スマホなどで授業が受けられる。これまた様々な分野の講座があり、メニューを見ているだけでもワクワクする。

 課題やテストなどをクリアしていくと、最後には修了証がもらえる。昼休み、帰宅後、土日にちょこちょこと勉強していたこともあった。様々な科目があるので、教養を高めるによし、自分の専門に関連づけた学びをするによし、何かしたい人には手軽でよいだろう。授業によっては、スクーリング(実際に登校して学ぶ授業)もあるようだ。

 ここまで、大学、MOOCと紹介してきたが、他にも民間の団体で学んだり、学びのコミュニティーに入ったりするという方法もある。

 人材開発の仕事に従事している私は、人材開発やメンタルヘルス、キャリア開発などを学んだり、研修運営やワークショップ設計そのものについて学んだりもしている。

 例えば、産業カウンセラーの資格を持っているため、「日本産業カウンセラー協会」で産業カウンセリング分野やキャリアコンサルティングに関する研修に参加し、新しいことを少しずつ学んでいる。ここで学んだことが、企業の人事や人材開発の担当者と会話する際に非常に役に立つ。産業カウンセリングやキャリアコンサルティングの勉強会に行くと、本当にシニアが多い。60代になってから資格を取得し、セカンドキャリアに生かしているという方にも大勢会った。そのことで、自らのセカンドキャリア自体を考えるきっかけも得た。

 最近の私が担当する研修も、講義と演習といったスタイルだけではなく、ワークショップという形態が注目されつつあり、これもきちんと学びたいと思って、ワークショップ設計について専門に学べる「WDA(Workshop Design Academia)」という学びのコミュニティーのメンバーにもなった。リアルに集まる研究会や勉強会、ネットで配信される動画などを使って学べる。WDAで時々参加するリアルな勉強会・研究会では、実に様々な仕事(自治体の街づくり、自社の商品開発、組織開発など実に多岐にわたる)に従事する方にも出会い、尖った会話に刺激を受け、また知らなかった書籍情報を得て、読むべき本の情報も入手できる。ここで学んだことを同僚に伝え、自分も仕事に十分役立てている。

 ここまで説明したように、今は、学ぼうと思えば、意外と簡単に学べる時代だ。学びたい人には、色々なところに学ぶ場所があり、それもさほどお金をかけずに学ぶ機会もある。

 「時間がない」という人もいるが、「この日は勉強会だから定時に帰る」と朝、決意して仕事をすれば、なんとかなることが多い。私は周囲に「●曜日は大学へ行く」と伝えているため、周囲がかなり協力してくれる。

 「お金がない」という人ももちろんいるだろうが、同僚は1回2000円の勉強会(2時間くらいでちょっとしたスキルを学ぶもの)に何度か行って仕事にすぐ役立てている。ある時は、「簡単にイラストが描ける」という講座に行ったらしく、翌日、会議でイラスト使いながらホワイトボードに議論をまとめてくれ、感心したことがある。数千円なら、飲み会1回分を学びに回すというイメージだ。

 若い人たちは最新の知識や技術を若い柔軟な頭で学び、シニアはその若い人たちを脅威に感じることもあると思う。長く活躍するためには、シニアもまた学び続ける必要がある。それが自分のサバイバル力を上げる方法の一つだろう。学びに興味があったら、まずは地元の大学名と「公開講座」などのキーワードでネットを検索してみてほしい。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 シニアについて「やる気がない」「古いことにこだわって学ばない」といった声はよく聴くものの、「うちのシニアはとても勉強熱心なんですよ」「シニアな部下がいるんですけど、それはまぁ、新しいことにどんどん挑戦して、すごいんです」といった前向きな評価はあまり聞かない。

 もし、シニアな部下が何かを学びたいといったら、応援してほしい。「えー、今さら勉強してどうしようっていうんですか?」「あと数年で終わりじゃないですか」などと白けたコメントをせず、「へぇ、何を学ぶんですか?」「どんな内容だったかぜひ後で教えてください」などと関心を示し、話も聴いてみてほしい

 部門の定例会などで、シニアが学んでいることの発表タイムを設ければ、多くの人にもその内容は共有される。それだけではない。シニアが学ぶ姿勢を上司が応援する態度というのは、若手にも少なからずよい影響を及ぼすはずだ。
田中淳子(たなか・じゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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