「令和」の国際企業戦略を分析する

中国・テンセントはフェイスブックを超えるか 田中道昭・立教大学ビジネススクール教授に聞く(4)

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フェイスブックへの逆風「プライバシー重視」

 「AI技術を社会実装している点で、ハイテク小売りの分野では米国より中国の方が先を行っている」と田中教授は判定する。テンセントはAIを利用した医療サービスや次世代自動車産業にも出資しているという。「同社が持つユーザーの広範囲で大量のビッグデータが、SNSを超えた事業拡大を可能にしている」と結論する。

 他方、SNS本家のフェイスブックが24日発表した2019年1~3月期の決算では、純利益が前年同期比51%減の大幅減益となった。同社は18年3月に発覚した個人情報の流出問題に関し、米連邦取引委員会(FTC)から調査を受けており、制裁金などを見込み30億ドルを未払い費用として計上したことが減益につながった。

 同社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、決算発表の電話会見でプライバシーを重視したプラットフォームの構築に注力すると述べた。フェイスブックは人と人がつながるオープン型プラットフォームを提供してより多くの人々のデータを収集。最適化した広告で急拡大してきた。田中教授は「これまでのビジネスモデルの転換を宣言したに等しい強烈な内容だ」と読む。

 巨大なプラットフォームも利用者の信頼を失えば運営する企業も存亡の危機に追い込まれる。「国際経済の現場でプライバシー重視の潮流は、米中貿易戦争に匹敵するくらい大きな影響力を持ってきている」と田中教授。2019年はビッグデータの無制限のビジネス利用に歯止めがかかった年として記憶されるかもしれない。

 田中教授が孫子の兵法をアレンジした「5ファクターメソッド」では、かつての主客が逆転してテンセントに高い評価が集まった。「テンセントの強みは総合力の高さだ。ポニー・マーCEOの『誰よりも冒険を嫌う』『常識人中の常識人』と言われる性格が、チームワークの良さにつながっている」と田中教授はみる。

 他方フェイスブックのザッカーバーグは、破壊的と評されることもしばしばの天才タイプの創業者。「短期的には収益で影響を受けても、フェイスブックは生き残りをかけて企業ミッションから変革するだろう」(田中教授)。

(松本治人)


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