泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

PayPayが火を付けたキャッシュレス決済戦争が向かう未来(下) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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スマホコード決済のユーザー体験は改善の余地あり

 話は長くなったが、最後に現在の「○○ペイ」によるキャッシュレス決済戦争の未来について考えてみたい。PayPayをはじめとする多様なキャッシュレス決済サービスの将来性をどのような観点から考えたらよいだろう。

 第一に注目したいのは、各キャッシュレス決済サービスのユーザー体験である。

 特に、スマホコード決済はAliPay(アリペイ)をはじめとするサービスが、14億もの人口がある中国において主流となった。その流れで日本国内でも注目され、スマホコード決済を採用するプレーヤーが増えているが、本当に前向きな進化なのだろうか。

 利用者によって様々な意見があることは承知だが、非接触型ICチップのテクノロジーをベースとするSuicaのように、カードを読み取り機にタッチさせるだけで決済ができる電子マネーを体験した身としては、スマホでアプリを立ち上げてQRコードなどを表示させて決済するユーザー体験はあまり良好なものではない。クレジットカードでもQUICPayやiD(アイディー)というテクノロジーに対応していれば、同様にタッチさせるだけで決済され、署名は不要である。

 一方、これからは日本人以外にも快適なキャッシュレス決済サービスが普及すべきなのは確かだ。人口減少時代にあっては、インバウンド消費のさらなる活性化が課題であり、外国人旅行者が「当たり前」に使える決済手段とそのために必要なインフラを準備する必要がある。

 それがスマホコード決済の場合、例えばAliPayと連携することによって中国からの来日客が普及型のスマホを日本での決済に利用できるようになる。加えて、現在のように日本でスマホが広く普及した状況をみれば、日本でもスマホコード決済が主流になるべきという意見には一定の説得力があるだろう。

 もちろん、高齢者のなかにはそもそもスマホを持っていない人がいるといった、デジタルデバイドが現実にあることを考えると、クレジットカードのようなハードウエアによる決済も共存していくべきと考えられる。

 ユーザー体験を重視するアップルが発表した「アップルカード」という専用クレジットカードにおいても、チタン製実物カードを準備している点は見逃せない。

赤字覚悟で現金バラまきキャンペーンを続ける「○○ペイ」戦争の先にあるもの

 第二に注目したいのは、キャッシュレス決済サービスの覇権争いの最終目的である。

 前々回で見たように現在の「○○ペイ」は残高などへの高率な還元キャンペーンによって利用を促しているが、赤字覚悟の現金バラまきキャンペーンであるともいえ、いつまで続けられるかは疑問である。

 当のプレーヤーはこの競争の先に何を見ているのであろうか。ビジネスモデルはどのように描いているのであろうか。

 たとえば、PayPayを見てみよう。

 ヤフーの決算資料によれば、PayPayの注力領域は、オンライン連携やオフライン加盟店を増やして、利用者数増、決済回数増を行い、データを蓄積し、残高を拡大することである。そのデータ蓄積などを通じて、ヤフーがO2O(オンライン・トゥー・オフライン)や広告、金融などで収益化をする[24]。PayPay自体の収益はあまり狙っていないようにも見える。

 確かに、PayPayを導入する店舗が負担する費用はかなり低い。現時点では、初期導入費用、決済手数料、入金手数料がすべて無料である。決済手数料が無料になるのは、ユーザーがコードを読み取る決済方法のみ対象であるものの、2021年9月30日まで無料である。入金手数料もグループ企業であるジャパンネット銀行の場合には永年無料となる。将来は変更がある可能性も残されているが、加盟店が参加するハードルを究極まで引き下げているといえる[25]。

 次に、LINE Payを導入する店舗の費用を見てみよう。

 LINE Payでは、「LINE Pay 据置端末」、「プリントQR」というQRコードを印刷した板、「LINE Pay 店舗用アプリ」などの初期費用、決済手数料を2021年7月31日まで無料とすることで、加盟店を増やそうとしている。それ以外にも1台でLINE Payに加えて、中国で使われる「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」や「Alipay」にも対応するStarPay端末の初期費用が3万5000円(税抜き)と安い。

 LINE Payでも普及を優先し、当面の収益性については目をつぶるのが現実と考えているであろう。

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