泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

PayPayが火を付けたキャッシュレス決済戦争が向かう未来(下) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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 前回では、最近国内で展開された各社のキャッシュレス決済サービスを4グループに分類して解説した。今回は、米アップルが提供する「Apple Pay(アップルペイ)」について触れたあと、「キャッシュレス決済戦争が向かう未来」について考えたい。

クレジットカード決済インフラとの連携でスピード感

 前回の記事でキャッシュレス決済サービスに分類しなかった大型プレーヤーがいる。それは、米アップルだ。ご存知のように同社はスマートフォンやタブレットといったハードウエアを提供すると同時に、Apple Pay(アップルペイ)というキャッシュレス決済サービスを展開している。

 Apple PayではiPhoneなどに登録したクレジットカードやプリペイドカード、電子マネーを活用し、支払いをスマホ上で完結させることができる[22]。

 ただし、アップルが新しい決済インフラを確立したわけではない。VISA(ビザ)やマスターカードといったクレジットカードの決済インフラと連携することで実現した。ユーザーの決済額はiPhoneなどの「ウォレット(Wallet=財布の意味)」という場所に登録したクレジットカードの利用限度額、プリペイドカードや電子マネーにチャージした残高をそれぞれ超えることはできない。

 前回で説明したように、国内のキャッシュレス決済においては、クレジットカードが決済金額の約9割を占める。「スマホで斬新な決済体験を提供する」のが目的ならば、すでに普及しているクレジットカードなどの決済インフラを利用するほうが手軽だ。

 話はそれるが、iPhoneは、スマートフォン市場を確立したという点以上に(アップルが自ら投資したわけではない)3G以降の携帯電話通信インフラを上手に活用したという点で評価できると考えている。Apple Payもクレジットカードといった既存の決済インフラを上手に活用した例として評価できる。

 また、国内ではApple Payによって交通系電子マネーであるSuica(スイカ)なども利用できる。クレジットカードと電子マネーのSuicaを押さえることで、日本の主要なキャッシュレス決済インフラの大半をカバーしているといえる。

 こうしたクレジットカードの決済インフラをうまく活用しているキャッシュレス決済サービスはApple Payだけではない。

 LINE Payではプリペイドカードの「LINE Payカード」を発行して使うことができるが、それはJCBのクレジットカード決済インフラを活用したものである。LINE Payカードでは非接触型ICチップを活用したキャッシュレス決済サービスであるJCBの「QUICPay(クイックペイ)」とも連携しており、サインなしでカード決済ができるが、これもカード会社の決済インフラを利用しているといえる。

 付け加えると前回、au PAYは「au WALLET」という電子マネーアプリ内の一つの機能であり、「au WALLETプリペイドカード」という専用カードを登録して利用すると紹介したが、その専用カードはマスターカードのインフラで決済する。つまり、新興のキャッシュレス決済サービスもクレジットカード会社の実績ある決済インフラがないとスピード感をもって実現しないという一面がある。

 アップルも2019年3月25日にゴールドマン・サックス・グループとマスターカードの決済ネットワークを利用したiPhone向けクレジットカード「アップルカード」を発行すると発表している[23]。ここでも「クレジットカードの決済インフラ」が使われている。

 アマゾン・ドット・コムは今でこそ、クレジットカードだけではなく、銀行口座からのチャージなども利用できるようになっているが、1990年代後半を振り返ってみればクレジットカード情報の入力が必要であった。20年以上もたった今もクレジットカードが基本的な決済インフラであることはアマゾンにおいても変わっていない。

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